「NINJA」に「AR LIVE」 エイベックスの見せるインバウンド向け”次世代ショーコンテンツ”のカタチ
日本では近年、訪日観光客の数が年々増加しており、観光庁のデータによれば、その数は5年前に比べ約4倍に増加しているという。その背景には、2019年のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック、2025年の大阪万博など、国際的な大型イベントの開催を控えていることも大きい。
そうした中で、エイベックスでは、今後より発展していくインバウンド(外国人の訪日旅行)市場に向けた、“次世代エンタテインメント”の創出を目的に、「NINJA PROJECT」と「AR LIVE SOLUTION」を2018年にローンチした。前者はパフォーマンス集団として、後者はxR領域のプラットフォームとして、それぞれ様々な取り組みを行っているとのこと。
同社では某日、それらを用いたショーコンテンツの特別先行体験を含むコンベンションを実施した。今回体験できたのは、「NINJA PROJECT」のダンスパフォーマンスと、バーチャルアーティストたちによる「AR LIVE」。この記事では、その中でどういった催しが行われたのかを紹介していきたい。
疾走感あふれるアクロバティックな「NINJA」たちのダンスショー
海外で「忍者」の人気が高いというのは、我々日本人としてもなんとなく感じているところ。エイベックスでは、「忍者×エンタテインメント」をキーワードに、“忍者文化”を現代に伝える「日本忍者協議会」とともに、その文化や歴史をグローバルに振興させることを目的とした「NINJA PROJECT」という事業を行っている。
今回はその一つとして、ダンスやアクロバット、音と光の演出で“忍者”を表現する「NINJA」ショーを披露した。
ショーの流れとしては、まず真っ暗な会場の中で、透明な板によって囲われたボックス型の観覧席に通される。ショーが始まると、ボックスの外を忍者たちが所狭しと動き回り、床の下や天井の上などでパアクロバティックな動きを見せる。
▲観客は、透明な板でできたボックス上の観覧席に入り、中からボックスの外にいる忍者たちのパフォーマンスを見る。
▲忍者たちは足場の下で戦いを繰り広げたり、
▲天井の上でパフォーマンスをしたりと、通常のショーコンテンツでは見られないような視点で楽しめるようになっている。
▲骨組みの鉄パイプを使ったパフォーマンスなどもあり、縦横無尽に駆け抜ける忍者らしい疾走感のあるパフォーマンス。
さらにショーが進むと、今度はボックス型の観覧席を出て、スクリーンのあるステージに移動する。ここでは、多人数でのダンスや、マジック、スクリーンを使った演出など、さらに多彩なパフォーマンスが展開される。
▲場所を移動し、今度は広いステージ上になった空間で改めてパフォーマンスを行う。
▲ステージでは、多人数のダイナミックなダンスパフォーマンスも。
▲さらにクライマックスでは、観客側がステージに上り、忍者たちは先ほどまで観客たちがいた場所に集まることで、観客とパフォーマーの位置が逆転。加えて先ほど観客たちが入っていたボックス型の客席を足場として使うことで、立体的なフォーメーションでダンスを披露した。
ボーカロイドからVTuber、AIアーティストまで集結した「AR LIVE」
「NINJA」のパフォーマンスが終わると、今度は「ARライブ」の時間となる。ここでは、ステージ上の透過型スクリーンを使って様々なバーチャルアーティストたちが登場し、歌や踊りを披露する。
透過型のスクリーンは、通常のスクリーンに比べ、投射されたキャラクターの後ろに実物の背景が見えるので、奥行き感が生まれ、キャラクターの存在感を際立たせる。
また、後ろに現実の展示品を置き、その前面に透過型スクリーンで映像を投射することで、リアルと投射映像を組み合わせた独特なAR表現を行うこともできるというのも特徴である。
▲ARライブが始まると、最初は「初音ミク」が登場。実際目の当たりにすると、ディプレイなどで見るよりもかなり立体感・存在感を感じられる。
▲左右のディスプレイの映像やライトによる光の演出など、ステージ演出はリアルのものなので、まさに「バーチャルのキャラクターがリアルの世界に降り立ってパフォーマンスしている」という感じ。
▲初音ミクの次は、バーチャルアイドルの「響木アオ」ちゃんが登場。
▲オリジナル曲とダンスを披露。
▲アオちゃんの次は、日本マイクロソフトの女子高生AI(人口知能)の「りんな」。
▲他のバーチャルアーティストとは少し趣が異なり、MVのようなAR技術を用いた美しい映像表現で観客を魅了した。
▲その次は、エイベックスのプロデュースするオリジナルダンス&ボーカルユニット「まりなす(仮)」が登場。
▲奏天まひろちゃん、燈舞りんちゃん、音葉なほちゃん、鈴鳴すばるちゃんの4人からなる「まりなす(仮)」は、写真もブレるくらいキレキレのダンスを決める。
そして最後に登場したのが、ARダンスボーカルグループ「ARP」。今回のショーでは、ここまでに登場したバーチャルアーティストたちのパフォーマンスは事前に収録された映像だったが、彼らのみリアルタイムのパフォーマンスを披露した。
▲「ARP」は、「CEDEC 2018」においてゲームデザイン部門優秀賞を獲得した、次世代のARライブシステム「ALiS ZERO」を用いた4人組ARダンスグループ。今回はグループ内の2人組ユニット「REBEL CROSS」のダイヤさんとレイジさんが出演。
▲2人は生出演だったため、観客とトークでコミュニケーションを取る場面も。あまり長い時間ではなかったものの、ARによる、ライブらしいインタラクティブなやり取りの様子も体験することができた。
日本の伝統・文化を最先端テクノロジーと融合させた“次世代エンタテインメント”
実施されたショーコンテンツは以上。「NINJA」が20分、「AR LIVE」が10分ほどの、時間としては約30分ほどのショーだったが、体感ではあっという間に終わってしまったという感じである。
今回はインバウンド向けの“次世代エンタテインメント”の紹介がテーマとのこと。日本の忍者という文化をショーの形に落とし込んだ「NINJA」と、マンガやアニメの文化から連なるバーチャルアーティストの「AR LIVE」という、いずれも元々海外人気のある日本文化を、最先端のデジタル技術なども用い、新たなエンタメの形に昇華させたものという印象だ。
また、今回コンテンツの展示は無かったが、エイベックスでは「音声・音楽」と「位置情報」を組み合わせた音声ARソリューション「SARF」という事業もまた、インバウンド向けのコンテンツとして開発を進めているとのこと。
SARFは、スマートフォンやPC、AIスピーカーなどのデバイスと、定額制音楽ストリーミング配信サービスの組み合わせにより、サウンドや振動による拡張現実を行う事業。
位置情報を用いた観光案内や、多言語ルート案内などの実用性重視のものから、「アニメの聖地を訪れたらシーンのセリフが再生される」というようなエンタメ性の高いものなど、音声によって現実を演出するものとのことである。
これからますます増加していくだろう訪日外国人客の人たちに向け、今後はますますグローバルに受け入れられるコンテンツの需要は高まってくることが予想される。今回エイベックスによるコンベンションでは、その形の一部を体験することができた。
こうしたコンテンツを通じて、海外の人に日本の魅力をより強く感じてほしいと感じるのはもちろんだが、「忍者」や「マンガ・アニメ」といった日本のコンテンツ文化が好きなのは、なにも外国人だけではないはず。我々日本人としても、今後さらに進化を遂げていくかもしれない日本の文化・伝統には要注目だ。
(文 高橋佑司/編集 花茂未来)
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