ダウンロード販売の極意とは— 「ぎゃるがん」「ガンヴォルト」のインティ・クリエイツ講演
5月10日~12日に「Tokyoサンドボックス」の開発者向けイベントとして開催された「Push」では主にコンシューマー機向けゲーム開発・販売を行う千葉のゲーム会社 インティ・クリエイツの會津卓也社長による講演「ゲーム開発とデジタル販売の実態:経験を元に」が行われた。
インティ・クリエイツの會津社長。1996年に会社を設立し、去年で20周年を迎える。近年は主にキャラクターもののアクションゲームの受託開発を中心としている。
會津氏がオリジナルゲームの開発を手掛けるようになったのは5年ほど前。設立当時こそオリジナルゲームの開発を手掛けていたものの、近年は開発受託がメインとなり、納期に追われる日々を迎えており、モチベーションが上がらなかったという。
そこで自主的にゲームを作ってモチベーションを上げよう、ということになった。開発ターゲットは同社が受託業務を多く手掛けるニンテンドー3DSで行うことにした。
2012年当時は受託開発と並行して、同社が企画から手掛けた「ぎゃる☆がん」の開発を行っていた(ただし当時はパブリッシャーが付いており、IPもパブリッシャーとの共同保有だった)。権利を自社で保有しているオリジナルIPは2014年発売の「蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト」が最初に。
しかし、開発が20%ほど進んだところで「これは売れるのか?」という疑問が浮かんだ。というのも、2012年当時は日本においてコンシューマー機向けゲームのダウンロード販売はあまり根付いていなかったためだ。
転機になったのは翌年、シアトルで開催された「PAX Prime 2013」への出展だった。このイベントはアメリカの「Penny Arcade」というWEBコミックの作者が主催しているもので、アメリカ最大のパブリックなゲームイベントとなっている。その会場で「Indie MEGABOOTH」というインディゲームパブリッシャーのショーケースを見て衝撃を受け開発の続行に踏み切った。
Indie MEGABOOTHはPAXのほか、E3やBitSummitにも出展している。
2014年8月にニンテンドー3DS向けに「蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト」のダウンロード販売を開始。ワールドワイドで18万本のセールスを記録した。
デジタル販売においてはファンコミュニティの形成も大事、ということでSNSや動画配信も行った。動画配信は特に日本でのコミュニティ形成がメインとなっている。
「蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト」のヒットで、ゲームイベントで開催されるパネルへの登壇依頼も増えた。出展料や宿泊費は主催者側で負担してくれるケースが多く、飛行機代だけで済むという。
グッズ製作もファンの満足度アップにつながり、海外では自社でグッズを作ることが結構多い。同社では公式オンラインショップを開設し、オリジナルグッズ販売を行っている。
「ガンヴォルト」の人気が高かったため、シリーズ第2弾として「蒼き雷霆(アームドブルー)ガンヴォルト 爪(そう)」を2016年にリリース。ところが売り上げが3万8000本とダウンロード販売としては前作の1/5まで落ち込む。
とはいえ、ダウンロード販売そのものに陰りが出たわけでもなく、同時期に発売されたフルプライスゲーム「ぎゃる☆がん だぶるぴーす」はダウンロード版だけで約4万本の売り上げとなっている。ということを考えた結果、当該プラットフォームのアクティブ率低下が原因、という結論になった。
日米で発売されているパッケージ版の数値は含まれていないものの、海外において携帯ゲーム機のアクティブ率が下がっているのがセールス低下につながったと考えられる。
「ぎゃる☆がん だぶるぴーす」は2015年8月に日本でPS4/PS Vitaで発売、2016年夏にPC版を加えて欧米で発売された。パッケージ版の売り上げはワールドワイドでなんと16万本だという。
思うように売れなかった理由として、プラットフォームの販売動向を考慮していなかったことを挙げた。プラットフォーム選定は思い込みなど自分の考えだけで設定してはいけないということだ。
ダウンロードゲームではとにかく目立つことが重要。プラットフォームホルダーの施策にガシガシ乗るのも重要。
VR化も話題を呼ぶ施策の一つ!? 確かに「ぎゃる☆がんVR」は発表後、各メディアで即話題になりましたね。
さて、ここで話は同社最新作の「ブラスターマスター ゼロ」に移る。これはサンソフト(サン電子のゲーム部門)の「超惑星戦記 メタファイト」のリメイク作品という位置付けだが、これはサンソフト側からのIP復活の要望に応じたもの。プラットフォームも初期はニンテンドー3DSでの発売のみを予定していた。
しかし、2016年の10月にNintendo Switchが正式発表されたことをきっかけに同機種のローンチタイトルとして並行開発を決めた。なお本作はPCでも動作するエンジン上で開発されていたため、それをベースにSwitch版を開発。仮マスターアップは年内に行われた。
ローンチタイトルということもあってダウンロード数はワールドワイドで8万本、登壇時のランキングは日本11位、アメリカ14位とのこと。
インティ・クリエイツは5月20日〜21日に、京都で開催される「A 5th of BitSummit」に出展し、Nintendo Switchのタイトル2本を発表する予定だ。新タイトルと(個人的には)「ぎゃる☆がんVR」の続報にも期待したい!
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