リアルを追求しすぎてもエロくない 3DアダルトVRの匠に聞く「VRカノジョ」のキャラ表現【R-18注意】
イリュージョンが2月28日に発売したVRアダルトソフト「VRカノジョ」は、VR業界を飛び出してネットでも大きな反響を呼んだタイトルだった。発売初日にはアクセスが集中しすぎてサーバーが落ちたり、プレイ動画が投稿されてTwitterでリツイート数(引用)を伸ばすなど話題に事欠かない。
実際、開発元であるイリュージョンはこの反響をどう捉えていて、どんなところに力を入れて開発したのか。発売から1ヵ月経った今、登場人物である「夕陽さくら」のお父さんともいえる開発者の大鶴尚之氏にインタビューした。
大鶴氏
黒字にできたので、次のタイトルが出せる
──まず発売後の反響をお聞きしてもいいですか
大鶴 反響は結構大きかったですね。
──というか、まず前評判から大きくて、Twitterでも目立っていましたよね。
大鶴 そうなんです。そこはとてもありがたくて、その流れで発売まで来られたのがよかったです。実は「VRカノジョ」は弊社で初の「VR専用」アダルトゲームで、過去のものはメインでパソコンゲームとして遊べたうえで、VRでも使えたという形でした。それを無償提供ではなく、初めて販売したという「試金石」だったのですが、予想以上に反響があって次につなげられたのが収穫でした。
──ネットでの反響で印象的なものはなんでしたか?
大鶴 例えば、胸でのボクシングとか、扇風機を投げるとかは意外でした。ものをつかんで投げられる機能はとりあえず入れておいただけで、それが何に使われるかは想定していなかったのですが、みんな面白がってさくらちゃんに投げつけてしまったり。「これじゃあVRカノジョじゃなくて、DVカレシじゃないか」というコメントもありました。
体験版ではプレイヤーがなりきっていた扇風機だが、本編では持って投げられる。
──ちょ(笑)。まぁでもさくらちゃんは無敵なので、一切効かないですよね。嬉しかった反響は?
大鶴 さらに新しいVRアダルトコンテンツを作ってほしいという、イリュージョンに対する期待ですね。
──ここに至る道も長かったですよね。思い起こせば、Oculus RiftのDK1時代からセクシー女優の3DスキャンをVRで見るという体験も提供してきましたし。
大鶴 何年か続けてきましたが、最終的にはどれだけの売り上げになるのかというところなんですよね。そこは今回のVRカノジョは目的を達成できたのでよかったです。逆に全然うれてなかったら、ここで終わりでした。
──大鶴さんは、以前、例の大人のホールと連動するVRコンセプトをYouTubeに投稿して海外で話題になり、講演に呼ばれていたりしました。今回のVRカノジョも海外では注目を集めましたか?
大鶴 実際のところ、まだそこまで話題になっていないです。一応、英語の基本的なローカライズはやってますが、海外に販売拠点を置いているわけではないので、よければ買ってくださいという状態です。どこかのタイミングで、海外のVRイベントで展示したいなぁとは思っています。
オーバー気味の演出だから面白くてエロい
──VRアダルトゲームというと、キャラ表現が重要になってくると思います。こだわったところはどこでしょうか?
大鶴 女の子の質感はまずはこだわりましたね。そこはずっと前からイリュージョンとして注力してきたところです。ただ、問題はフレームレートとの戦いで……。
──あっ、きれいに見えるようにしていけばいくほど、PCへの負荷がかかって表示がガクガクになってしまうという。
大鶴 そうなんです。そこはスペックよりも高クオリティーを優先というスタンスで、そこからどれだけ負荷を減らしていけるかという感じです。
──肌の質感というと、テクスチャー(物体の表面にはりつける質感用の画像)とかにこだわりがあるみたいな?
大鶴 そうですね。テクスチャーとシェーダー(陰影処理)ですね。そこは長年、3DCGで培ってきた技術が生かされています。
──一方でPCの画面とは違って、VRだと目の前まで肌を近づけてより細かいところまで見えてしまいますよね。
大鶴 その辺は善し悪し別として、今のVRゴーグルはまだ解像度が低くて、素材の解像度を上げてもそんなにわからないので、逆にごまかしが効くところなんです。だから、フレームレートを上げるために、多少解像度を落としても分かりにくい。
──モーションもこだわりがあったりするのでしょうか。
大鶴 そうですね。基本的にはリアルに再現というより、ちょっとオーバー気味に演出しています。
──確かに、リアルであんなに胸がバインバイン揺れないですよね(笑)
大鶴 そうそう。リアル追求するのももちろんなんですけど、あまりリアルすぎると面白くないし、エロくない。それはエロゲーとしてどうなのかと。それなら反対方向に振って、エロすぎるおっぱい、揺れすぎるおっぱいのほうが面白いし、エロさも出せる。
──アダルトビデオでも現実とは違う脚色が入ってエロさを醸し出してるのと一緒で、VRでも「演出」があるんですね。
大鶴 そうなんです。究極的なリアルさを追求するなら、触ったときの質量や温かさがあると、もっとVRでの実在感を高められるのですが、今回はあくまで見た目しか出せない。それでリアルに動いても、そこまで感動は引き起こせない。だから見た目だけでもちょっと派手にしないと。
──確かに。女の子の動きはモーションキャプチャーですか?
大鶴 はい、基本的にモーションキャプチャーですね。セクシー女優ではなく、普通の女性アクターを使っています。それもオーバーリアクションで動いてもらっていて、そのせいで少し大げさな動きになっています。
──そういう「バーチャルの中のリアルさ」という話はすごく興味深いです。
大鶴 難しいところですよね。本当にリアル突き詰めると、まず勝手に男性が自分の部屋にいるということがありえないじゃないですか(笑)。VRでリアルを追求しても、どこかは諦める必要がある。それなら非現実的なものを入れて置いた方が、プレイヤーに受け入れられやすいんじゃないかって。
──なるほど。ちなみに大鶴さんオススメの遊び方ってありますか?
大鶴 そうですね。最新バージョンではものを投げない設定が加わりまして、空中に置けるようになりました。例えば、胸の近くにバイブレーターを固定すれば、ずっとプルプル揺れています。あとはスマートフォンでカメラを撮る機能も加えています。本当は手軽に女の子と写真を楽しむように使って欲しいのですが、みなさんどちらかというと下から撮る感じになってしまうのかと……。実際にやってみると、すごく罪悪感を感じます。
──それは現実でやったらポリスメンを呼ばれる感じな。
大鶴 そうですね。その辺はVRで、全然気にしないさくらちゃんだからこそできることだと思います。
──包容力(?)のある女の子ですね。
大鶴 もう完璧な女の子です。
スマホでの撮影機能。
アダルトVRの究極はバーチャルセックス
──今後もアップデートで内容が充実していくと思われますが、どういった予定がありますか?
大鶴 今のところはウェブでアンケートをとって、その中で多い意見を採用していこうと考えています。例えば、部屋を変えて別のシーンでエッチができたりとか。最終的には今のVRカノジョで実現するか分かりませんが、外のどこかで2人でデートできるようにしていきたい。
──リアル店舗と連動して、VRがあるネットカフェに持って行って……みたいな感じですかね。面白い!
大鶴 ただ、実店舗とコラボできればいいんですが、中々アダルト作品は表立っては難しいです。
──一方で、VRカノジョの体験版は、ツクモさんなどの店頭で無料体験できるようになってて広まっている感覚はあります。
大鶴 体験版はそうですね。だから、VRカノジョは極力、ダ—クな部分だけはつくらないようにしています。
──明るいエロっていう感じ。
大鶴 多分いきなりハードコアなエロをやってしまうと、規制されてしまう可能性がある。例えば満員電車など、シチュエーションのアイデアはいろいろ出ます。それにVRで表現したからといって、現実の犯罪につながるとは思っていませんが、その根拠を示すのも難しい。
──そうしたせめぎあいの中、今回のような内容に落ち着いたんですね。次にチャレンジするとしたら、課題はなんでしょうか?
大鶴 今回、リアルさを追求するために採用したモーションキャプチャーに思った以上のコストがかかってしまったので、ゲームの幅があまり広げられなかったんですよね。だから次はゲームのボリュームを増やす方に舵を切りたいです。
──究極的にはVRアダルトってどういう風になっていくのでしょうか?
大鶴 やっぱりバーチャルセックスで、まだまだ全然達成できてないですよね。デバイス自体もVRがもしかしたらMRに変わるのか、その先があるのか。
──それでいうと人間のコミュニケーションが密になるほど、視覚や聴覚だけでなく、触覚や嗅覚、キスとかの味覚なども入ってきますよね。
大鶴 そうですね。一番ハードルが高いのは触覚だとは思います。先日、匂いを出せるVR向け機器の「VAQSO」を試しましたが、ぜひコラボしたいですね。お風呂上がりの香りとかが表現できれば、バーチャルセックスにぐっと近づけると思います。
──最後に直近で出る展示会はありますか?
大鶴 5月8、9日の「Unite 2017 Tokyo」には何かしらデータを追加して、全年齢版のVRカノジョを持っていく予定です。ぜひ現地で体験してください。そして、VRアダルトの未来のために、VRカノジョのご購入もよろしくお願いします。
(TEXT by Minoru Hirota)