【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム 「レディ・プレイヤー1へ GO! 」編
4月20日公開初日のレイトショーで「レディ・プレイヤー1」を見に行った。車椅子なので前日に予約しておいた。してよかった。1席も余すことなく満席だった。
少し前にPANORAの担当が「神足さん、今度のスピルバーグ監督の映画、VRものらしいです。どうですか? ご興味ありますか?」と聞いてきた。あるもないも、いくに決まってるじゃないか。スピルバーグ監督とVRという組み合わせの映画、仕事じゃなくたって行く。
スピルバーグ監督といえば「ジョーズ」では音楽でボクたちの恐怖をあおり巨大サメがすぐ近くにいること感じさせた。どうすれば人間が恐怖を感じるか心理をよくついた映画だった。「E.T」では宇宙人となかよくなるという今までになかったシュチュエーションで模型と実写の合成という新しい手法でまさしくその世界にボクたちを連れて行ってくれた。「ジェラシックパーク」では初めて映画界でCGがつかわれもした。
スピルバーグ監督は新しいものをどんどん取り入れていく。今回もVRゲームという現代の新ジャンルの未来を描いている。2045年、ゴーグルひとつでなんにでもなれる世界でバーチャルゲームが生活に浸透している時代。「オアシス」というゲームをつくった創始者の遺産を誰が手にするかゲームに入り込んでゲーム上に隠した鍵を探し当てる。バーチャルな世界なので色々なものに遭遇する。ボクが発見できたものだけでも、キングコング、ガンダム、デロリアン、ゴジラ、キティーちゃん、などなどたくさんの80年代のカルチャーが詰め込まれている。そしてそこに2045年に共存できてる。高いところから飛び降りてみたり、カーレースを繰り広げたり、バーチャルなのもを買ってみたり……。「IMAX」で観たボクは迫力満点。3DでVRの世界を観るという迫力はすごかった。ぜひ映画館で見るべきだ。余談ではあるがボクは車椅子なので、その劇場では一番前の席で観ることになった。最前列はさすがみずらいためか他のお客さんはいれていない。
映画がはじまってしばらくしたら車椅子からズレ落ちるぐらいのけぞらないといけないほどの迫力だった。
VRゲームで危惧されてそうな課金で身を滅ぼしたり、お母さんが子どもにご飯とせがまれているのにゲームがやめられなかったり、企業がらみの策略が合ったりところどころに出てくる現実の世界の人間臭さとバーチャルの世界で戦うゲームの中。どちらがどちらかも境界線もわからなくなる。ゲーム上で出会うアバター同士、「実際はこんなんじゃないの」といいつつ恋に落ちていくのもゲームの中のリアルだなあと思ってしまった。
最後の言葉は「やっぱりリアルな世界にはかなわないね」とぼくは妙に暖かな気持ちにもなった。スピルバーグ監督はかなりの「おたく」なんだろうなあとさらに思える作品だったが、それでボクはますますスビルバーグが好きになった。
●著者紹介
撮影:石川正勝
神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。
●関連リンク
・映画「レディ・プレイヤー1」
・朝日新聞デジタル 連載 コータリンは要介護5
・神足裕司Twitter