OculusはRiftを売っても儲からない ではビジネスモデルは何?
ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが4日に開催した「Unityソリューションカンファレンス2015」では、Oculusの池田輝和氏も基調講演に登壇していた。「OculusによるVRの今とこれから」というテーマで、同社のミッションやビジネスモデルについて語られていたのでまとめていこう。
Oculusのパートナーシップリード、池田輝和氏。技術周り以外のところを担当しているとのこと。
Gear VRは年内発売に向けて動いている
まず語っていたのは、Oculusの「あらゆる体験を、どこでも、誰とでも。」というミッションについて。同社は「今後5年、10年の長期のスパンでVRを広め、数十億人がバーチャル空間にアクセスして、あらゆる体験をどこでも誰とでも体験できる」世界をつくることを目指しているとのこと。
それを実現するためのデバイスが、Oculus Riftだ。2012年8月に創業し、2013年に初代開発キット(DK1)、2014年に第2世代開発キット(DK2)と出してきて、現在、2016年第一四半期、1〜3月の間に製品版を出荷できるように動いている。ちなみに製品名としては「Rift」と呼ぶのが正しいとのこと。
その3年の間でハードウェアは液晶ディスプレーなどが飛躍的な進化を遂げてきてきたが、そのすべては快適にな体験を実現するためだ。「あらゆる体験が快適であるのが大前提。快適じゃなければ、リアルからわざわざバーチャル空間に入りたいと思いませんよね。その点はわれわれは本当に大事にしたい。快適の観点で、ようやく製品として一般の方々に手に取ってもらえるレベルに達したので来年リリースできる」と語る池田氏。
Galaxyシリーズをはめて使うモバイル向けの「Gear VR」については、「11月20日で米国では先行して発売していて、日本でも年内発売に向けて動いている」とスケジュールに言及。さらに「端末のパワーで足りない部分をヘッドセット側で補完している。ヘッドセット側のジャイロセンサーを利用することで、60fpsという非常に滑らかな映像体験が提供できる」と、Gear VRの特徴についても語っていた。
モーションコントローラー「Oculus Touch」については、「来年の中頃から夏ぐらいをターゲットに開発を進めている」とのこと。
こうしたハードウェアはミッションを実現するためのデバイスでしかない。では同社のビジネスモデルがどこにあるかといえば、プラットフォームだという。
池田氏によれば、「ハードはなるべく原価に近い、お求め安い価格で提供して普及させていった上で、VRのコンテンツに特化した配信プラットフォームを運営していきたい」というのが狙いだ。
VRのコンテンツは、Oculusも研究開発していくが、基本的にサードパーティーのデベロッパーに任せることになる。そのコンテンツをOculusのプラットフォームを通じて有料配信し、そこで上がった収益の一部にOculusが課金する。
「デベロッパーがつくったクオリティーの高いコンテンツがあって、評価してくれるお客さんがいて、そのサイクルを回していくことによって、われわれOculusも潤いますし、デベロッパーさんにも還元できる。Win-Winの関係をつくっていくのがビジネスモデル」と解説していた。
配信するコンテンツについては、まずVRと親和性の高いゲームをあげて、「来年のローンチタイトルでも数十以上のタイトルが出てくる予定で進んでいる」と語る。その一方で「Riftはゲームデバイスでしょ」と聞かれると「そうじゃないんです」と答えているそうだ。
例えば、映画館の中に入ってスクリーン上のムービーを楽しめる「Oculus Video」。将来的にはライブやスポーツ中継も配信されそうで、ゲームの興味のない一般人にとってキラーコンテンツになっていくだろう。
ソリューションサービスでいえば、ひとつのヒントになるのが、Oculus Touchを使ってCGを直感的にモデリングできるツール「Medium」(ミディアム)だという。例えば、製造業などの分野においては、中国の工場でバーチャル空間にモデリングしたものを、同じ空間にネット越しにログインして、委託先が確認できるようになる。
さらにバーチャル空間でコミュニケーションできるようになると状況が大きく変わってくるとして、2人でボイスチャットしながらさまざまなおもちゃをOculus Touchで取って遊べる「ToyBox」を紹介していた。
PCのように1人1台の時代がくる
Oculusは、将来的には1人1台以上のVRHMDを持つ世界を目指しているとのこと。池田氏はPCの歴史を例に、「最初はゲームやエンターテインメントで使われていたのが、業務に入ってくるようになったことで爆発的に広まった」とコメント。
「80年代にPCを個人で持つことは考えられなかったが、90年代になったら1人1台デスクにあった。それがさらに進むと、PCではなくタブレットに変化していく。VRのデバイスも当然進化を遂げて、1人1台持っていただく時代になる。自分の生産・消費活動をバーチャル空間で行うようになる。そのコンテンツを提供していくプラットフォームにOculusはなりたい」とまとめていた。
最後に、快適なコンテンツづくりについて繰り返し語っていた。「バーチャル空間にいること自体が快適じゃなければ、例えば、酔ってしまう、気持ち悪くなる、長いこと装着していられないとなってしまうと、そこには人が集まらなくなってしまう。『すべては快適な体験のために』ということで、気をつけていきたい」と言及。
よくあげられるVR酔いについても、ハードとコンテンツに原因があるとして、「Oculusはハードを徹底的に進化させる。PCについてもなるべく環境を整えていただきたい。同時にコンテンツのつくりによって不快感を生じさせることもある。世界中のパートナーと話しをして知見をためて、みなさんに共有していきたい」と方針を示し、ネットで公開している「ベストプラックティスガイド」(PDF)を読んでほしいとお願いしていた。
(文/広田稔)
●関連リンク
・Oculus
・Unityソリューションカンファレンス2015