VRは次のプラットフォーム——Oculus Connect 2の基調講演でザッカーバーグが伝えたこと
現地時間の9月24日、米国ロサンゼルスにてOculus技術者向けイベント「Oculus Connect 2」の基調講演が実施された。Gear VRの製品版、Oculus ARCADEやNetflixなどGear VR向けコンテンツの拡充、Oculus Riftが動作するPCの認証プログラムの開始、Oculus Touchで3Dモデリングを可能にする「Oculus Medium」アプリの登場など、非常に密度の高い内容だった。
昨年の「Oculus Connect」における基調講演では、ほぼすべての内容をOculus VRのCEO、ブレンダン・イリーベ(Brendan Iribe)氏が発表していたが、今年はイリーベ氏が全体的な話をしたあとに、テーマ別に別の人が出て講演する形式に変わっていた。
ここではFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)氏と、Oculus VR共同創業者のパルマー・ラッキー(Palmer Luckey)氏のパートを見ていこう。
「the next platform」
基調講演が始まって、イリーベ氏が今年のOculus Connect 2では1500人を超える人たちが参加し、30を超えるセッション、20以上の新しいデモを体験できることなどを告げると、わずか2分でザッカーバーグ氏を呼び込んでいた。ご存知の方も多いとは思うが、Oculus VRは2014年にFacebookに20億ドルで買収されて傘下となっている。
ザッカーバーグ氏の名前であがった大歓声を聞いて笑顔のイリーベ氏。
ザッカーバーグ氏は数年前、イリーベ氏とラッキー氏にRiftのプロトタイプを体験させてもらい、これまでのVRとはまったく別で、次世代の技術はVRにつながっていくと感じたそうだ。
続けてFacebookのミッションとVRの関係に言及し、Facebookのミッションは世界中をつなぐことであり、人が自分の体験をシェアする方法が変わってきていることを説明した。5〜10年前、人々が体験をシェアする方法の多くはテキストであった。10年前の2005年頃と言えば、日本ではmixiが流行っていた時代。当時、もちろん写真もアップロードできたが文字が主流だったことを考えると理解しやすいはず。
その後写真を交えて、最近は旅行やゲームプレイなどの映像共有が増えており、今はここで止まっている状態と言及。ザッカーバーグ氏は、360度のCG映像をスクリーンで再生し、次に来るのはこのような完全な没入感を持ったVRであると強調した。
ザッカーバーグ氏によると、FacebookはVRが次のプラットフォームになると考えているそうだ。数年前までVRは「Sci-Fi」(SF)でありただの夢だったが、今年後半から製品版のVRHMDが出荷されるところまで来ていることを考えれば、確かに次のプラットフォームになると考えることもできる。
VRのプラットフォームが大きくなれば、その中により多くの人が集まり、より多くの体験が共有されることになる。ザッカーバーグ氏のスピーチからは、Facebookは、VRの技術を使って人々の体験を360度の映像で共有できるようなサービスを目指しているという明確なビジョンを感じられた。
アツい抱擁を交わす二人。
マイクラのVR対応に大歓声!
ラッキー氏の出番は中盤だった。同氏のスピーチと言えば常に早口であることで有名だが、今回はいつもよりもゆっくりと話していた印象だ。
そしてお馴染みのサンダルスタイルである。
講演では、長年「こうだったらいいな」と思われつつフィクションとしてしか考えられてなかったVRがわずか数年で実現に近づいていることに言及。そんな要望のひとつとして「マインクラフトのVR対応」がついに実現したことが突如発表されると、会場から大きな喜びの声があがった。
マインクラフトといえば、Oculus VRが2014年3月にFacebookに買収された際、モージャン(Mojang)の創業者、マルクス・ペルソン(Markus Persson、通称「Notch」)氏が「Facebookと一緒に仕事をしたくないから」という理由でVR版の開発が一時中止にされていたこともあった。その後、マイクロソフトがモージャンを買収し、ARグラス「HoloLens」でデモに使われたりと、VR/AR版への期待が高まり、晴れてOculus Riftでもリリースされることとなった。
残念ながらプレイムービーや体験コーナーはなかったが、来年のどこかではプレイ可能になるとのことなので、楽しみに待ちたい。
最後に突如、ステージ下手でガサゴソ……。
結構長い間、何かを漁っていたので、客席から「何やってるんだろう?」という感じの笑い声が漏れます。
取り出したのはマインクラフトグッズ!
観客に投げ、盛り上がったところでラッキー氏の講演は終了した。
基調講演からは、ザッカーバーグFacebookが本気でVRを次のプラットフォームにしようとする強い熱意を感じ取れたうえ、ラッキー氏からもいつも通りのVRに対する思いが伝わってきた。
日本ではVRに対する認知度がまだまだ高いといえないが、アメリカでは大きな流れが作られつつある。基調講演では、Netfixやhuluなどの動画配信サービスとの提携も発表され、コンテンツ体験コーナーには訓練シミュレータなどの非ゲームコンテンツも目立っていた。今後、ゲームの枠を超えて、VRが生活や仕事の場にも入ってくる可能性を感じさせる内容だった。
一方で日本にも「PlayStation VR」を手がけるソニー・コンピュータエンタテインメントの「The Playroom VR」や「RIGS」、バンダイナムコエンターテインメントの「サマーレッスン」など、単に360度見られるだけではない、VRならではの面白さをとがらせたコンテンツも出てきている。インディー方面を見ても、NPO法人「OcuFes」などのVRコミュニティーがいくつかあるので、彼らを中心に独自コンテンツが発信されていくはず。
2016年の「パーソナルVR元年」を迎えた際、日本では家電メーカーやコンテンツプロバイダーなどがどれだけの企業が参入してきて業界規模がどれくらい膨らむのか。PANORAでも引き続き、日本のVR業界を盛り立てていけるように尽力していきます!
(TEXT by Minoru Hirota)
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