VRで大好きなマンガの「向こう」に行ける──スクエニ「Project Hikari」で「結婚指輪物語」を体験
Oculus VRは10月5〜7日、開発者向けの年次イベント「Oculus Connect 3」を開催。会場ではプレス向けのデモルームが用意されており、一般とは異なるコンテンツが体感できた。そこに日本発のタイトルとして出展していたのが、スクウェア・エニックスの研究開発部門であるテクノロジー推進部が開発した「Project Hikari」だった。
9月に幕張メッセで実施したゲーム産業関連イベント「東京ゲームショウ2016」にて、HTC Vive版ではあるものの、同タイトルを体験し、開発者である曹氏にインタビューできたので、そのレポートをお届けしよう。
マンガの新しい表現方法
今回は2人組の「めいびい」による「結婚指輪物語」から、第1話の一部をVR空間内で楽しめた。第1話では、主人公のサトウと、幼馴染のヒメの幼少期の不思議な出会い、高校生活、そしてヒメの異世界への帰還と、そのヒメを追うサトウが巻き込まれる事件が描かれている。実はヒメは、異世界において正真正銘の姫だったのだ。
結婚指輪物語は、月刊ビッグガンガン公式サイトで第1話の立ち読みや、電子書籍版配信ストアの確認が可能だ。VR版ではないが、話の内容が気になった人は覗いてみてはいかがだろうか。
「VR空間内で漫画を読む」というと、平面スクリーンに表示されたものを読むことを想像してしまいがちだが、Project Hikariでは目の前に浮かび上がったコマの中にも空間が広がっていて、プレイヤーが頭を動かしてのぞくと、3Dの家具やキャラクターを角度を変えて確認できた。色はカラーではなく、スクリーントーンが際立つモノクロだ。さらに、シーンによっては、360度いっぱいに映像が広がり、プレイヤー自身が2次元の原作に入り込んだ気分を味えるところもあった。
TGSではHTC Viveを着用し、座っての体験となった。モーションコントローラーは1本だけ用い、トリガーを引きながら振ったりすることで、VR空間内でページをめくったり、VR空間に浮かぶ漫画のコマの位置を見やすいように調節することができた。
コンテンツ自体が、あまり後方まで見渡すような作りにはなっていないので、座りながら無理に後ろを振り向くこともなく、とてもリラックスして楽しめた。従来のように物理的な本を持つ必要はなく、片手でコントローラーを軽く操作するだけなので、手や肩が疲れにくい。長時間体験した場合、人によってはVRゴーグルが重いと感じるかもしれないが、その辺は、今後ハードも軽量化されていくはずなので、あまり心配することもないだろう。
「大好きな『あの物語』の向こう側に行けたら、どんな体験になるだろう」という疑問から生まれたというProject Hikari。開発者の曹氏にTGSでの反響をたずねたところ、「今まで見たことがない表現だという声をたくさんいただいた」と、かなり新鮮な体験と感じた方が多いことが分かった。
今後の展開については、「これからも漫画独自の表現を、どんどんVR側に持ち込みたい。次回、お見せする時にはさらに進化していると思う。今回はハイスペックPCを使っているが、モバイル端末を含めて他のプラットフォームでも楽しめるように開発している。会場ではホログラフィックや、スクリーンショットなどの展示も行ったが、このコンテンツは実際に体験してもらわないとどれだけすごいのか伝わらないものなので、具体的な商品化の予定は決まっていないが、他のIP(タイトル、シリーズ)などもVR化して、早く皆様の元に届けたい」と、VRでの漫画体験を推進する意気込みを述べた。
曹氏の「実際に体験してもらわないとどれだけすごいのか伝わらない」という発言には、筆者も非常に強く同感である。今回のコンテンツはUnreal Engine 4.12で作られていた。会場のPCにはGPUとしてGeForce GTX 1080が用いられており、その他の部分も相当なスペックのものを使っていることが予想される。モバイル端末での展開も視野に入れているということで、軽量化され、電子書籍のように手軽に手に入れられる日を待ち遠しく思う。
©MAYBE/SQUARE ENIX
(取材・文/久道響太)
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