わずか5分で3D CADをVR向けに変換 建築業界向けクラウドサービス「Autodesk LIVE」登場
オートデスクは21日、3DCADソフト「Autodesk Revit」で作成したBIMデータから、簡単な操作で3Dインタラクティブコンテンツを作成できるクラウドサービス「Autodesk LIVE」を9月下旬より発売すると発表した。価格は月定額で5000円で、クラウドの使用制限は無制限。同社のオンラインストアにて販売する。
別途9月下旬にリリースする「Autodesk LIVE Viewer」を利用することで、Oculus RiftやHTC ViveといったVRゴーグル、iPadなどのiOS機器でデータを表示できる。ビューワーの価格は無料。
建築業界において、VRゴーグルは建物の完成イメージを直感的に確認できる機器として活用が期待されている。VRゴーグルをかぶって、実際にCGの建物の中に入ってもらうことで、2D/3D CGを平面のディスプレーではなかなか伝えにくいスケール感や雰囲気、設計意図といった要素を把握できるのがメリットだ。
そうした効果が大きい一方で、この種のVRコンテンツを作成する場合は、UnityやUnreal Engineといったゲームエンジンを使う必要があり、建築プロジェクトの関係者ではまかなえずに、外注の業者を使って作成するケースが多かった。
今回、Autodesk LIVEが登場することで、Autodesk Revitで作成した3D CADデータをクラウドに送信し、5分ほどでAutodesk LIVE Viewerで見られる形式で書き出せるようになる。CADデータの作成者自身が作成することで、今までより短期間かつ低コストでVRコンテンツ化が実現できるようになったというのが新しい。
Autodesk Revitで作成した3D CADデータ。
クラウドのLiveサービスに送信。
だいたい書き出しにかかるのは2分ほど。通信時間も含めて5分ぐらいで作業が終了するとのこと。
書き出してAutodesk LIVE Viewerで表示したもの。
右端に縦に並ぶアイコンはビューリストで、特定の位置・角度を保存しておいて、ワンクリックでそのシーンを見せられる。このビューリストを順次再生するプレゼンテーション機能も用意。
太陽のシミュレーションや……。
室内のあかりのオン・オフも可能。また、子供や車椅子などの身長を変えて、見え方をシミュレーションすることもできる。
ソファーなどをクリックして「Info」を開くことで、Revit側で登録した建材のデータをチェックすることも可能だ。
建築士向けに、スチレンボード風に見た目を変更する機能も用意している。
ビューワー向けへのデータの軽量化、テクスチャーなど外部ファイルの最適化、入力に対するアクションの適用など、面倒なことをLIVE側が引き受けてくれる。
簡易編集が可能なLIVE Editorも用意。HTC ViveやOculus RiftをPCに接続していれば、Live Editorの中でアイコンをクリックするだけで瞬時に中に入れるとのこと。
ファイル形式としては.「lvmd」。このファイルを同社の3Dゲームエンジン「Stingray」に渡して、より細かい編集も可能だ。
3ds MAXやStingrayといった同社ツールを絡めたワークフロー。
例えば、設計・施工においては、計画/用地選定/収支計画およびボリュームスタディ/基本計画/基本設計のところで、RevitとLIVEを活用して、確認申請/実施設計/施工図作成/建築工事/建物管理ではLIVE Viewerのみで運用するイメージ。
製品説明を担当した同社の技術営業本部、宋明信氏によれば、建築業界において2D CAD、3D CADの次の世代として、VRが期待されているとのこと。
「建築のインタラクティブコンテンツは、UnityやUE、Stingrayでも制作できたが、工数や時間がかかったり社内でのリソース確保が難しいため結局、外部に出していた。それでは量産できないが、LIVEを使えばものの5、6分で終わってしまう。今まで自分でできなかったことが、設計者自身で作業できるようになったのが新しい」と解説していた。
実際にHTC Viveで体験している画面。操作には両手のモーションコントローラーを利用する。
ミニマップを表示することも可能。
移動は人差し指のトリガーを引いてレーザーで方向を指定し、指を離すとその場にワープする。この障害物を避けて目的地にワープするのは意外と面倒で、ナビゲーションという同社のゲーム向けの経路探査機能を応用しているとのこと。
iPadでの閲覧も可能だ。
宋氏によれば、VRゴーグルを活用することで、例えば、高層マンションのベランダに行ってもらうことで、パースではわからない高さや怖さを直感的に感じてもらえるという。また、プラントや店舗での避難経路の設計において、この避難看板は車椅子で見えるかどうか……という確認においてもVRが役立つという。ぜひ建築業界の関係者は注目してみよう。
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