ちょっと間違った未来をつくる ドワンゴとインフィニットループ、VR事業会社「バーチャルキャスト」設立
ドワンゴとインフィニットループは27日、合弁会社「株式会社バーチャルキャスト」を設立したことを発表した。
両社が共同開発したバーチャルYouTuber配信ツール「バーチャルキャスト」を核とし、ドワンゴが推進する3Dアバター規格「VRM」や、VRM対応アバターを投稿してバーチャルキャストに呼び出して使えるドワンゴの3Dモデルの投稿プラットフォーム「ニコニ立体」なども合わせ、VTuberに必要な要素をワンストップで提供するプラットフォームを目指す。
代表取締役社長にはインフィニットループ社長の松井健太郎氏、取締役COOはドワンゴの石井洋平氏、取締役CVO(チーフバーチャルオフィサー)は「みゅみゅ教授」こと山口直樹氏、取締役CTOとしてはドワンゴの「MIRO」氏こと岩城進之介氏がそれぞれ就任する。山口氏、および岩城氏を含むドワンゴの技術チームは兼業ではなくバーチャルキャスト社に移籍して、専業でVR事業に取り組む。
バーチャルでのフォトセッション。資本金は2億円(資本準備金1億円を含む)。また同日開催した記者発表会によれば、ドワンゴは二桁億円で投資していくとのこと。
「脳汁の最大化」がミッション
同日に開催された記者発表会では、会社の理念や目標が語られたんでまとめていこう。
会社のビジョンは「ちょっと間違った未来をつくる」。「現実世界の延長として現れるであろうVRの世界とは別に、せっかくの新世界なので既存の常識を持ち込まず、遊びやユーモアに溢れるものにしたい。現実では叶えられない憧れを実現できる場所にしたい。(中略)特異点を生み出し、未来に進む方向を捻じ曲げて、われわれ好みの世界にしていきたい」と松井社長。
「われわれは誰よりも先にこの大陸に入植して新しい文化をつくっていく。それにより人類を5度ぐらいズレた方向に大きく進化させる」(松井社長)
バーチャルキャストのミッションは「脳汁の最大化」。脳汁とは、興奮したときや幸せなときに感じる脳内麻薬のこと。
「貧しい人が世界旅行できるようになったり、容姿に自信のない人がモテモテになったりできるわけで、VRは現実世界における経済や環境の格差を埋めることにもつながる。これは人類にとって大きな進歩」(松井社長)
「一方でつきつめていくと、人類が現実世界では行動することがなくなり、VRのヘッドセットをつけたままベッドに横たわっているSFに出てくるディストピアの入り口とも言えるわけですが、その向かう世界がディストピア的であっても、我々は進化を続ける。科学の進歩は止めることができない。これはVRや仮想現実の発達によって人類に課せられた課題だと思っているので、真摯に向き合いながらそれでも脳汁の最大化をミッションにすえていく」(松井社長)
自社の強みについては、業界No1の総合力を強調。「VR総合プラットフォームを設立して、あらゆるユーザーがVR上で活躍できる場を作っていく」(松井社長)
アジア、投げ銭文化が定着している特に中国への進出を目指す。「日本はVR先進国。何かの先進国と言えることは少なくなってきたが、ことVRに関しては先進国と言っていいのではないか。その技術を持ってグローバル展開していきたい」(松井社長)
提携や投資先も探している。
採用も進めている。CTOの岩城氏は「われわれはテックカンパニーなのでエンジニアを積極的に採用したい。お堅いVRの世界じゃなくて、ちょっと間違った未来を作りたい人はぜひご連絡ください」と、CVOのみゅみゅさんは「一緒に人類から脳汁を搾り取ろう」と語っていた。
具体的には、Unityを使ったクライアント開発ができるVRエンジニア、オンラインゲームなどのリアルタイムサーバー開発、PHP/MySQLを使ったサーバーサイド開発ができるサーバーサイドエンジニアを募集中。
みゅみゅ氏といえば、バーチャルキャストの生みの親。ドワンゴの岩城氏は、自身のチームとともに小林幸子さんのVRライブや超歌舞伎、VR入学式などをはじめ、同社のVR/AR技術を先導してきた人物だ。その2人を専業で擁するバーチャルキャスト社は、かなり本気でVRとVTuberの発展を目指していると言えるはず。
一方で、事業として専念するのはプラットフォーマーで、VTuberのタレント育成は提携先にまかせるとのこと。技術者としてVTuberに関わりたい、VTbuerの露出を増やしてIPの知名度を上げていきたいといった方々は、ぜひコンタクトを取ってみてはいかがだろう。
(TEXT by Minoru Hirota)
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