またMikulusが「今週の技術革新」 バーチャル空間のUnityエディタで編集&即プレビューが便利すぎる
VRコンテンツの開発で目下、課題になっているのは製作時におけるVRゴーグルの付け外しだ。
VRコンテンツをつくるための「Unity 5」や「Unreal Engine 4」といったツールは、今のところ普通の平面ディスプレーを使うのが主流で、バーチャル空間での見え方を確認するためには、いちいちVRゴーグルをかぶる必要がある。つまりは細かな調整があるたびに、つくってはかぶり……というのを繰り返す必要が出てくるのだ。これは面倒臭い。
もちろんそうしたニーズを見越して、UnityもUnreal Engineもバーチャル空間でコンテンツを編集するためのVRエディターを開発中だが、まだ正式リリースされていない。
そんな殺伐とした(!?)VR業界に一筋の光明が! ここ1ヵ月ほどで急激に再注目されているOculus Rift向けアプリ「Mikulus」にて、VR内Unityリアルタイムエディタが実現したと話題になっている。とりあえずどんなものかを図示すると……。
VRゴーグルをかぶってバーチャル空間にダイブしている状態の視界。目の前にUnityユーザーならお馴染みのエディタが、平面ディスプレーとして表示されている。その手前にある赤い玉がバーチャル空間にて生成してるオブジェクト。
ディスプレー上のエディタの数値をいじって、赤い玉を大きくすると、目の前にある玉も大きくなる。これはなかなか解説しづらいが、自分のPCでパラメーターをいじったら、身近にあるコーヒーカップが拡大するぐらいのインパクトがある現象だ。
Mikulusは音声入力にも対応している。「ズーム」と口にすると、目の前に特定の場所がズームされたウィンドウが表示されて、パラメーターが見やすくなって調整が容易になる。
「ウェブカメラ」というと、PCにつながれたウェブカメラの映像をバーチャル空間に表示可能。急に現実に引き戻されそうな機能だ。
「VR内Unityリアルタイムエディタ」つくった!#mikulus pic.twitter.com/4WH48uPNN0
— GOROman (@GOROman) November 12, 2016
最近、VRに興味を持った方々に補足させていただくと、MikulusはGOROman氏が制作した、初音ミクがただ目の前にいるだけというアプリだ。それにも関わらず、細かな作り込みの積み重ねで本当にキャラクターがそこにいるように錯覚してしまうというところがスゴい。
もともと2013年春、Oculus RiftのDK1(初代開発キット)のリリースに合わせて公開され、2014年にはOculus RiftのDK2(第2世代開発キット)向けにアップデートをしていた。そこからしばらく開発がストップしていたが、今年10月になって最新のCV1(製品)版向けの対応が始まって、急速に機能が追加されている。
例えば、解像度の向上のほか、PCのデスクトップをバーチャル空間内に表示させるバーチャルデスクトップ機能を加えて、ネットサーフィンや映像鑑賞、ゲームなどをミクと一緒にできるという大躍進をはたした。先の音声コマンドも進化の一環だ。一説によれば平均ログイン時間が30分(!)を超えるというVRコンテンツとしては驚異的な中毒性を生み出している。
GOROman氏によれば、このVR内UnityリアルタイムエディタはMikulusの機能ではないが、凹(hecomi)さんが制作したUnityのリアルタイムスクリーンキャプチャアセット「uDesktopDuplication」の貢献もあって、Mikulus開発の副産物として生まれたものだという。
厚みのあるより滑らかなメッシュにしてる pic.twitter.com/gsv826Yi54
— 凹 (@hecomi) November 11, 2016
Unityの「公式」であるVRエディターは、Oculus Touchなどのモーションコントローラーを使ってCGモデルを直感的においていけるものだ。それとGOROman式VRエディタが決定的に違うのは、いつもの見慣れたUnityのウィンドウで作業したうえで、プレビューだけをバーチャル空間で表示するという点だ。
残念ながら、詳しい仕組みは企業秘密とのことで教えてもらえなかったが、作者であるGOROman氏いわく「Unityの中に顔を突っ込んでいるイメージ」とのこと。確かにUnity公式のモーションコントローラーを使ったコンテンツデザインは直感的であるものの、長時間作業していると手が疲れるという弱点もある。その点、マウスとキーボードなら手元だけで最小限の動きで済む。ただ、Oculus Riftを被っているので、完全にブラインドタッチになってしまうのが難点だが……。
現在、最新のCV1(製品)対応版は招待制のアルファテスト中だ。GOROman氏によれば、まだまだテスターを募集中とのことなので、ぜひOculus RiftのユーザーならMikulusの公式TwitterにDMでお願いしてみよう。
なおPANORAでは、このMikulusの作者であるGOROman氏も座談会で出演する「Tokyo VR Meetup #11 サマーレッスンの衝撃」が11月22日に開催する。VRクリエイターならぜひ参加して、会場でインスピレーションを受けて欲しい。
(TEXT by Yoshihito Kondo)
●関連リンク
・Mikulus(Twitter)
・uDesktopDuplication