「マイクロソフトは変わった」 Build参加者が語る、HoloLensへの期待
マイクロソフトが米国時間の4月29日から5月1日に開催した、開発者向けイベントの「Build 2015」。次期バージョンの「Windows 10」やWindows/OS X/Linuxで動く「Visual Studio Code」などさまざまなトピックがありましたが、PANORA的に最も注目なのは、拡張現実用ヘッドマウントディスプレー(ARHMD)の「HoloLens」でしょう。
今年1月に発表したHoloLensの詳細が明らかになった。
HoloLensが装着した人が見ている現実空間を認識し、特定の位置に3DCGを合成したうえ、指での操作も受け付けてくれる——。マーカーを使わずに、リアルタイムで床や天井、机の上に次々とCGを置いていける様は、まさに魔法という一言です。公式サイトの中程にある「Webcast On Demand」の動画から引用すると……(2時間29分あたりからです)。
例えば、部屋の壁に沿ってウィンドウを表示。動画を再生し、自分が部屋の中を移動してもウィンドウが追従して見続けられるというデモや……。
人体模型を目の前に表示して筋肉、骨、内臓、心臓と段階を追って構造を見せたり……。
車輪で動けるロボットの上にCGのアバターを表示し、部屋のポイントに沿って移動させるといった可能性を披露しました。
HoloLensの開発には、UnityやNASA、オートデスク、LEGENDARY、ウォルトディズニーといったそうそうたる大会社が協力しています。
では気になるのは、現状の試作機がどれくらいの仕上がりかということ。ということでBuildのツアーに参加し、現地で幸運にも実機を体験できたというユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの伊藤周さん(@warapuri)をインタビューしてみました。
—— で、HoloLensの実物ってどうだったんでしょうか。
伊藤 ごめんなさい。最初に断っておきますが、HoloLensの体験自体については口外しないように誓約書を書いているので言えないのですよ……。
—— な、なんと! TechCrunchさんとか、割とメディアは記事にしてますが、一般の参加者は扱いが違うのですね。
伊藤 体験したホテルもかなり厳戒体制で、ロッカーに荷物を預けた上での入室でした。
—— となるとオープンではなく、体験人数はかなり絞られていた感じですかね?
伊藤 そうですね。しかも何かトラブルありまして、最初は日本からのツアー参加者は、なぜか体験できなかったんですよ。でも、日本マイクロソフトの方々のおかげで、体験案内のメールが届くように手配してもらえました。
—— よかった!
伊藤 ただし、2日目(4月30日)の午後2時45分ごろに届いたメッセージで「3時15分にホテルに来てくれ」と言われた感じですが。それで見落としちゃった人も多かったみたいです。私は慌てて講演を抜け出して、指定されたところに着くと、一室に数名単位で案内されて「ここで待って」と言われました。そこで案内役の人が「この中で実験に協力してくれる人はいないか」と。「最後にHoloLens体験できるよ」と言った瞬間、真っ先に手を挙げたので、運良く選ばれることになりました。
—— ホテルについても全員が体験できるわけじゃなかったという。
伊藤 そうですね。15名中、2名だけでかなり絞っていました。しかもいきなり体験ではなく、まずは「別室でプレゼンテーションするから」と全員が案内されて、HololensでSkypeを使うとこうなるというデモを受けました。一人が目の前にいて、別室にいるもう一人と意思疎通するという感じです。
そうしたプレゼンを見た後に全員が帰されて、「よくわかんないけど体験できなかったねー」と荷物を預けたロッカーの部屋で話していたら、「さっき手を挙げてくれた君、こっちへ」と呼ばれて、別室でテスト機を体験することができたという。残念ながら中の様子は書けないんですけどね。
—— むむむ。では基調講演ってどんな雰囲気でした? 日本でも深夜(というか早朝)にも関わらず、IT関係の人はストリーミングを見てTwitterで盛り上がっていましたが。
いよいよHoloLensのはなし
#Build2015 pic.twitter.com/Ih6qY2YiZo
— 伊藤周 (@warapuri) April 29, 2015
追従性半端なかった。
これ単一デバイスで動くとかすごいよな
#HoloLens #Build2015 pic.twitter.com/w2eATOhUtb
— 伊藤周 (@warapuri) April 29, 2015
これ奥行き見てる気がする。カメラ4つぐらいついてそう
#HoloLens #Build2015 pic.twitter.com/U4p89zFR1O
— 伊藤周 (@warapuri) April 29, 2015
伊藤 現地はそりゃあもうすごい熱気でしたね。やはり最大の見せ場はHoloLensという感じで、「いいから体験させろ!!」という方が大半。
—— ですよね(笑)
伊藤 HoloLens以外も新要素がぎっしりで、それと相まって「マイクロソフトは変わった」という雰囲気に包まれていました。参加者の期待度はすごく高くて、3日目にHoloLensのセッションがあったんですが、その待機列がすごく長かった。
唯一のHoloLensセッションのこの並び。凄まじいな pic.twitter.com/qcVP9MrPup
— 伊藤周 (@warapuri) May 1, 2015
—— Hololensは、どんな可能性を秘めていると思いますか?
伊藤 マイクロソフトの本気さは伝わってきたので、技術デモのひとつではなく、製品としての未来はきちんとあると思います。ただ、もう少し時間をかけたほうが、いいものができるのでは。
—— VRHMDにおけるOculus Riftに匹敵するぐらいのインパクトはありますか?
伊藤 Oculus Riftに近い雰囲気はありますよね。今回マイクロソフトは、Windows Store、Windows 10、Visual Studio Coreなど攻めている発表が立て続けにあって、さらにHoloLensで追い打ちという感じで、近年のこの手のイベントではなかなか見ない盛り上がりでした。雰囲気はよかったし、イベントも面白かった。
—— ちょっとアップルっぽい尖ったイメージは受けますよね。
伊藤 ただ、HoloLensアプリに関する具体的な開発手法などは先のセッションでも語られなかったので、ウェブのストリーミングを見るのと知識はそう変わらないです。Channel 9でやってた「Developing for HoloLens」あたりを見ておくといいでしょう。
—— 最後にユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの人としてのコメントも頂いていいですか?
伊藤 HoloLens はとても未来を感じさせる製品で、そのゲームを手軽に作るにはUnityが最適です。今回のBuildの講演の中で、Unityを使ってプロトタイプゲームを簡単に作ることができると言っていました。弊社としても全面的に協力体制でHoloLensに注力していきたいです。私、個人としても早くUnityでHoloLensゲームを開発したいです。
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