SAOが次の10年後の世界観を決める 「劇場版 ソードアート・オンライン」特別イベントレポ

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2月18日より全国上映が始まる「劇場版 ソードアート・オンライン – オーディナル・スケール –」。原作者である川原礫氏の完全書き下ろしで、原作の小説やテレビアニメでは「ナーヴギア」や「アミュスフィア」といったVRゴーグルが物語のキーとなっていたが、劇場版ではARゲーム機「オーグマー」が登場する新しい設定になっている。

 

 
15日には、横浜のDMM VR THEATERにてスペシャルイベントが実施された(ニュース記事)。SAOのテレビシリーズと本映画の監督である伊藤智彦氏、筑波大学図書館情報メディア系助教でメディアアーティストの落合陽一氏、女優で各種IT系メディアで活躍されるガジェットも大好きな「ギーク女子」こと池澤あやかさんによるトークショウ。

 
さらに主題歌を歌うLiSAさんと、本作に登場するARアイドル「ユナ」のライブという盛りだくさんな内容だった。SAOといえば、Oculus VRの創業者、パルマー・ラッキー氏も大好きで、VR/AR業界とは切っても切り離せない作品だろう。現地を取材したのでレポートしていこう。

 
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会場ではオーグマーも展示。ソニークリエイティブセンターが総力を挙げてデザインしたとのこと(写真提供/Somelu)

 
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なお、女子高生AIの「りんな」もライブに招待されたとのことで、開演前に「LINEで呼びかけて」というアナウンスが流れていた。

 
 

あの英雄が再び世界を救う……!?

 
まず最初のパートでは、基本情報を抑えるという形で、SAOのテレビシリーズを踏まえたイントロダクションと、劇場版映像のチラ見せが行われた。

 
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みなさんおなじみ(!?)のナーヴギア。

 
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ネットにつないでこれをかぶって「リンクスタート!」。余談ですが、カタカナ英語でも指示できるナーヴギアの音声認識エンジンはAmazon Alexaよりも優秀ですね。

 
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……すると、VRの世界にフルダイブ!

 
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MMO PRGファンが夢見る、自分の体で世界を体験できるというVR-MMO RPGの世界にようこそ!

 
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と思いきや、1万人ほどいたプレイヤーがゲームの世界に閉じ込められて、最上階となる第100層のボスを倒さないと抜け出せず、さらにゲームでやられると現実でも本当に死んでしまうと言うデスゲームに。のちにSAO事件と呼ばれる。

 
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この歴史的な大惨事は、本作の主人公「キリト」によって解放されて幕を閉じた。

 
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その後、キリトは数々のゲームで起こる事件を解決。

 
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そんなSAO事件から4年後となる2026年。ナーヴギアのようなフルダイブ機能を排除した代わりにAR(拡張現実)機能を最大限に広げたという最先端マシン「オーグマー」が発売される。

 
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ユーザーへの普及を牽引したのは、「オーディナル・スケール」というAR-MMORPG。

 
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新たな世界となるARの世界で、英雄を待ち受ける運命とは──。

 
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というわけで今週18日より全国ロードショーがスタート、劇場でお会いしましょうという流れです。

 
 

触覚デバイスやドローンなどのハードも劇中に!

 
中盤のパートは、落合氏をモデレーターにしたトークショウ。落合氏が関わる研究を引き合いに、PANORAの読者も興味を持ちそうな先端技術の話が多く飛び出した。

 
ステージでは、DMM VR THEATERの投影装置を利用し、落合氏が手で指示することでステージの中空に文字や画像を浮かせて対話を進めるというSAOの世界観を体現した未来的なプレゼンテーションを実施。VRゴーグルとは異なり、裸眼で多くの人が一緒に見られるのがいいですね。

 
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最初に登場した落合氏は、「誰よりも僕が楽しみにしきたんじゃないかというぐらいにSAOが好き。SAOの世界観を保ちながら未来の話ができるのは楽しみ」とコメント。

 
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そのあとに、伊藤監督と池澤さんもステージに呼び込まれた。テレビシリーズと劇場版を生み出してきた伊藤氏を目の前にして、落合氏が「同じ空気を吸ってるのが尊い」とコメント。

 
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SAOの好きなシーンとして「工学系男子としては、茅場さんのちょっと感傷的な感じとか、マッドサイエンティストな感じがズンズンささってくる」と、茅場晶彦が語るシーンをあげる落合氏。

 
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最初の「うちの大学とかでもSAOが好きでVRの研究がやりたくて入って来る人もいる。SAOの世界が実現されたらやってみたいことは?」という質問には、伊藤監督は「空を飛びたい」、池澤さんは「脳がデバイスにつながることで記憶をセーブできたり、自分を無限にコピペしたい」とコメント。

 
「原作の中に『ユイ』という妖精が出てくるシーンがある」と、実際にステージに出現させる落合氏。「劇場版は2026年をテーマにしているが、僕たちは2040年をひとつのポイントに、ここにどうやって触覚を足していくのかとか、空中に触った感じをどう出すのかを研究している」

 
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「これは一昨年やった空中に映し出した三次元像で触覚を出す研究(Fairy Lights in Femtoseconds)。プログラムされているので、静電気触っているみたいにじりっと空中の触覚を出せる。ちょうど指先にティンカーベル飛ぶぐらいのサイズ。もっと大きくしていったら2030年ぐらいには触覚とビジュアルが重なるような技術が出てくるんじゃないかと思っている」(落合氏)

 

 
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ちなみに落合氏がステージで操作していたメニュー画面は、劇場版をモチーフにしたもの。「ログアウトボタンをつくり忘れてしまった」と会場の笑いを取る落合氏。

 
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さらに触覚の話で、小型の超音波発生装置を集めた超音波スピーカーの研究「Holographic Whisper」も紹介。「超音波を使って空中で触覚を感じたり、特定の点だけ音を出せる。今ある頭に(ゴーグルを)搭載して、目と耳に光や音を与える装置じゃなくて、触覚を出したり、空間自体に光を出したりする研究をしている」

 

 
池澤さんの「最近、触覚の研究も進んでいますよね。VRの目と耳は異世界に飛び込めるぐらいに進歩してるんですが、触覚はどうなんでしょうか?」という質問に対しては、「触覚はまだ基礎研究で、まだざらざらとかつるつるとか、言葉で言うと一特徴だけやるというところしか出ていない。でも、『Nintendo Switch』で入ってきたこともあって、話題にはなっていくと思う」と落合氏が返していた。

 
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「せっかくDMM VR THEATERでやっているので、SAOの世界観を再現してみよう。例えば、カレンダーを触ると今日の予定が出てくるとか……」

 
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「僕、研究室ですぐに植物を枯らしてしまうので、湿度を表示させたりとか」と、映画に出てくるオーグマーによる見え方をステージで再現。

 
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劇中アイテムの秘話も語られた。「僕あの映画を見ているとついつい日常のインターフェースがどうなっていいくかが気になります。今回はARがテーマですが、伊藤監督が演出で一番きをつかったところは?」と落合さんが質問。

 
伊藤監督は「視覚・聴覚情報はわかりやすいと思ったので、触覚をどう伝えるのかを戦闘ものなので考えました。武器を持ったり剣をもったり、マイクを持ったりするときに、何か持っていた方がいいんじゃないかということで、Wiiリモコン的なものを持っています」と答えていた。

 
この触覚デバイスは、「何にでもなるという体で、ボスから攻撃を受けたりしたら、バイブレーションで震えてゲーム感覚を味わうという設定があるんですが、多分劇場版に一言もその説明はないので、多分そうなんだなと思っていただければ」とのこと。

 
池澤さんが「痛みはどういう設定になってるんですか?」と突っ込むと、「基本的に震えてるのが伝わるだけですね。斬られたというのは、みんな脳内で補完してほしい」と伊藤監督。

 
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マップの表示方法にも言及。落合氏が「僕が映画の中でドキドキしたのは地図の表示がうまいと思った。今スマホでやってることって面積が狭いので、地図音痴からするとどっちにいってるかわからない。すごいダナミックに空間を使った演出だと。テレビシリーズのときはなかったですよね?」と質問。

 
「RPGは自分で探索しないといけないので、地図が初めから出るとどこにいけばいいのかわかってしまう。だから1期のアインクラッドではなかった」と伊藤監督は返していた。「確かに『Hey Siriラスボスの場所を教えて』っていってわかってしまうと困りますね」とジョークで返す落合氏。

 
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劇中でなぜ数多くのドローンが登場するの?という質問については、「ちょうどシナリオを書いているときにドローンを巡ったトラブルが相次いでいたので、きっとこのままでは東京の上空を飛ぶことはないんだろうなと思って、せめてフィクションの世界では飛ばした」と伊藤監督。

 
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さらに落合氏はドローンとガスを使った空中ディスプレイ「Gushed Light Field」を紹介する。「これは『ユナ』が出てくるところにめっちゃ似ていた。(劇中に登場する)ハードやソフトが意外と『痒い所に手が届く』、つまり僕がリサーチでやろうと思っていたこととすごく親和性が高くて、技術的なところがリアリティーがあるのがすごく面白い」と落合氏。

 

 
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「テレビ版の話でソードスキルがめっちゃ好きで、すごくRPG感がある。どんな感じで動くんですか?」という問いについては、伊藤監督は「原作ですと、特定の所作をすると体が勝手に動くとかいてあったんです。一番初めにテレビシリーズの1期でキャラクターが構えると、勝手に動くと言うシーンを描いている」と伊藤監督。

 
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さらに「実はうちのラボでもそんなことをやってまして」と、池澤さんの腕にパッドをつけて操ると言うデモを見せていた。「ヤバイヤバイ、すごくびりびりする。引き金引いているみたいに勝手に手が曲がる。それこそVRやARと組み合わさると、痛みのフィードバックやバーチャルの中で剣を振ってる感とか銃を撃っている感につながるんでしょうね」と池澤さん。

 
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「市販のHMDなんですけど」と、PANORA読者にはおなじみのMRゴーグル「HoloLens」の話も触れられた。「現実世界も裏で透けて見えて、それにオーバーレイするかたちで情報が出てくる。まさにオーグマーのようなことができるんですが、惜しむらくは見た目がナーヴギアなところなんですよね。オーグマーまで行ったら毎日かけるけどあと何年かかるか」と落合氏。

 

 
トークの最後は、物語が現実の未来を描いてくれているという話に移っていく。

 
話の流れで「2026年まであと9年あるので、iPhoneも一番最初のより7はかなりスタイリッシュ。さわれない『ユイ』ぐらいはできるんじゃないか」と落合氏が触れて、「面白いなと思うのが、OculusやVRゴーグルを作っている方がSAOを見て育っているんです」とさらに言及。

 
池澤さんが「時代の先を描いてくれて、そこを目標に技術者たちが頑張ると言う側面がありますよね」と返した言葉に、「伊藤監督が演出に使ったものから社会に出て来るという観点が面白い」と語っていた。

 
「どうやって新しい技術を空想しているんですか?」という質問については、伊藤監督が「テレビシリーズは原作小説に書かれているものを『こうかな』と思いながら、デザイナーさんや詳しい方々に未来予想をしてもらって、10年後ぐらいにできそうなデザインを出してもらっている。そしてなるべくアニメで描きやすい、複雑じゃないデザインに落とし込んでます」と答えていた。

 
さらに「それでいて触覚デバイスがちゃんとしているから、『SAOの世界まであと何年』というより、SAOが次の10年後の世界観を決めて打ち出している感じもある」という落合さんの話に、池澤さんが「確かに棒型のデバイスに吹っ飛ばないようにストラップがついてるのが感動した」と答えて会場を沸かせていた。

 
最後の「オーグマーはどれくらい普及している設定なんですか?」という質問については、「iPhoneの初期ロットぐらいですね。スマホが出たときに、先端を行く人たちが持ち出して、それiPhoneって聞かれるぐらいな感じ」

 
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……と伊藤監督が答えたところで、ARライブの時間に。

 
AIアイドル「ユナ」とLiSAさんのライブパートは画像でお届けしよう。

 
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今週土曜日の18日より上映開始となる「劇場版 ソードアート・オンライン – オーディナル・スケール -」。VR/ARの関係者なら、物語が描くひとつの未来予測としてぜひチェックしておくべきだ。

 
(C) 2016 川原 礫/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/SAO MOVIE Project

 
 
(TEXT by Minoru HirotaSomelu

 
 
●関連リンク
劇場版 ソードアート・オンライン – オーディナル・スケール –
DMM VR THEATER

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