Oculus Touch専用「Mission:ISS」レビュー VRで無重力空間の神秘を体感しよう

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9日、米Oculus VRはOculus Touch専用タイトル「Mission:ISS」をOculus Storeで無料リリースした。ジャンルは「シミュレーター」と「教育」と「探検」で、モーションコントローラーの「Oculus Touch」を両手に持って、国際宇宙ステーション(ISS)にて宇宙飛行士がこなす業務をVR空間上で学習できる。

宇宙といえば、「男の子」なら誰しも一度は憧れを抱いた存在ではないだろうか? 本アプリを使えば、無重力のふわっと浮く感覚を味わったり、ロボットアームを自分の手で操ってISSに補給機をドッキングさせたりといった夢を叶えられる。逆に誤ってISSから手を離してしまって、宇宙空間に放り出されたときの絶望感たるや相当のものだ。

特筆すべきはISSや無重力空間の再現度なのだが、アカデミー賞受賞経験があるロサンゼルスのチーム「MAGNOPUS」が開発、NASAや欧州宇宙機関(ESA)、カナダ宇宙庁(CSA)が監修という布陣を聞くと納得だ。その魅力をぜひ多くの人に知ってほしいので、順を追ってレビューしていこう。

 

VRで無重力空間に可能性を感じる

本アプリは、操作方法を学ぶ「Training」、宇宙飛行士の業務を体験する「Mission」、ISSを自由に探索できる「Explore」という3つのモードを用意している。実際、宇宙飛行士の業務は、無重力や真空を利用した実験・研究、ISSの操作・保全、ロボットアーム操作、船外活動という4つなのだが、このうち本作ではロボットアーム操作船外活動の2つに挑戦できる。

まずは無重力空間を無事に楽しむために、Trainingから選択しよう。体験が始まると、プレイヤーはISSの中心部にある部屋に漂っている。

 
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宇宙というだけあって、本作の移動方法は独特だ。Oculus Touchの右コントローラーが右手、左コントローラーが左手に割り当てられているのは多くのVRソフトと同じだが、左コントローラーのスティックの上で視線の方向へ推進、下でブレーキ、左右で水平方向の移動、右コントローラーのスティックで視界を上下左右に回転させるといった割り当てになっている。

そしてこの移動は、VR酔いを引き起こしやすい。左スティックの移動はISSの無重力空間を再現するためか、加速度運動的なふわっとした挙動になっており、筆者はこの動作を繰り返すたびに頭が痛くなってしまった。また、右スティックによる視界の回転は、球体の中心から見るような感じでスティックを倒した方向に約30度ずつ回転する。ISSには体を上下に回転させないと使えない設備が存在するが、この操作でスティックを上下に動かして体を反転ていくうちにかなり気持ち悪くなった。

 
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ただ、酔いの解決策は存在していて、ISSの手すりにつかまってクライミングのように移動すればいい。実際、本物のISS内には多数の手すりが設備されており、宇宙飛行士もいちいち設備をつかんだり蹴とばしたりするわけにもいかないので手すりを利用している。本アプリはシミュレーターなので、何もない平面の床や壁、PCなどの設備までほぼ何でも掴んで移動できるので安心だ。また、視線を上下に回転するときは片目ないし両目をつぶることで酔いやすさを軽減することができた。

その他の操作としては、人指し指のトリガーに触れない状態で中指のトリガーを握ってISS内の一部の設備に向けることで、ポインティングして宇宙飛行士による映像付きの解説を閲覧できる。左コントローラーの「X」ボタンでは、ISSのマップや設定を表示するタブレットを表示させ、行きたい場所を選んでワープすることも可能だ。さまざまな場所に設備の解説が用意されているので、ワープしつつ色々なものをポインティングして調べてみよう。

 
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ところで、筆者はVRを通して初めて360度に機能がある部屋というのを体験できたのだが、もし人類が気軽に無重力空間に行けるようになったら、今まで重力の影響下の平面を前提としてきた建築物やインターフェースに革命がおこるのではないだろうかと感じた。現時点のVRでは360度のインターフェースを実現するのは厳しいだろうが、宇宙には上も下もないから逆さまという概念が存在しないのだ。

 

ロボットアームをコントロールしてドッキング!

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Missionモードでは、最初にロボットアームを操縦可能だ。2015年、日本人宇宙飛行士の油井亀美也氏がISSのロボットアームを操縦して、宇宙ステーション補給機(カーゴカプセル)の「こうのとり」5号機のドッキングに成功したが、それとほぼ同じ体験ができるわけだ。

幸いにも本アプリはシミュレーターなので、秒速7.6kmで進んでいる本物とは違ってISSもカーゴカプセルも動かないし、ご丁寧に接合箇所が緑色に発光している。例えロボットアームをカーゴカプセルのみならずISS本体にぶつけてしまっても、何回でもやり直すことができるのがうれしい(ただし失敗する度にガイド音声からとがめられる)。

 
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とはいえ、ロボットアームの操縦も一筋縄ではいかない。Oculus Touchの右手でスティック、左手で四角いハンドルを操作しつつ、3つのモニターからの視点と窓から見える様子を気にしながら、ロボットアームをカーゴカプセルにドッキングさせなければならない。操作に慣れるには時間がかかるが、感覚をつかめてくると段々面白くなってくる。ちなみにロボットアームの操縦時は、ほぼ前面のみに集中すればいいため酔いはまったく感じられなかった。

 

宇宙船という空間からの解放、そして恐怖

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ISSに勤務している宇宙飛行士は、メンテナンス作業のために船外活動を行うことがあるが、なんと本作では安全綱なしでISSの周囲をほぼ自由に移動できる。これもVRならではの優位さの一つだろう。しかも、VRではISSから一定距離以上離れると自動的に元の位置にワープする仕様だ。

Missionモードで船外活動を行うと、初めにクライミング操作のみでISSの周囲を探索するように指示される。この時に間違ってISSから手を放してしまい宇宙に放り出されてしまった時の恐ろしさや虚ろさは、VRでも十分に実感できた。

 
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ISSは船内からだと狭く感じるが、外から見るととてつもなく大きい。そんな人類の英知の結晶ともいえるISSを、実寸大で鑑賞できるだけでも貴重だろう。アンテナや太陽光パネルを間近でじっくり見られるので、思いもよらない発見があるかもしれない。

探索で指示された場所へ向かうと、空気圧を利用したジェット噴射による移動も可能となる。移動方法は船内と同じだが、こちらは空気の圧を利用したジェットだから動きにリアリティがあることや、船内とは違って広い空間で対象を見下ろす形となるために酔いにくいと感じた。もちろん、船外活動でも体を回転させて地球から宇宙を見下ろす(!)こともできる。

 
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Mission:ISSは、一部酔いが激しい箇所もあるが、無重力空間とISSにはシミュレーター・学習教材としてだけでなく、ほかでは味わえない魅力的な360度の体験が待っている点が素晴らしい。もしもあなたがある程度宇宙に関心のある人であり、Oculus Touchをすでに持っていて、VR酔いに対してある程度の耐性があるのであれば、Oculus Storeから無料でインストールしてぜひ体験してみてほしい。

 
 
(TEXT by ぱソんこ

 
 
●関連リンク
JAXA|宇宙飛行士
Rift in Space: ‘Mission:ISS’ Launches Today
Mission:ISS|Oculus

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