IDC、2016年のVR/ARゴーグル国内/世界出荷台数を発表 世界全体1010万台、国内11.7万台
IDC Japanは、2016年通年のVR/ARゴーグルの国内/世界出荷台数、および世界市場予測を発表した。2016年のVR/ARゴーグルの出荷台数は世界全体で1010万台、国内は11.7万台、うちPlayStation VRが8.1万台。2021年の出荷台数は世界全体で9940万台に達すると予測している。
世界市場
VR/ARゴーグル市場で新たなデバイスが登場し、コンシューマーとエンタープライズの両方に多様なコンテンツが提供され、より安価なデバイスの登場によってVR/ARゴーグル市場が世界中で急速に成長する契機となっている。
IDCの「Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker」では、2021年に出荷されるVR/ARゴーグルの合計は、2016年の1010万台のほぼ10倍となる9940万台に達すると予測している。2016年~2021年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は58%となる。
米国IDC AR/VRチーム リサーチマネージャーのレイモン・リャマス氏は以下のようにコメントしている。
●IDC AR/VRチーム リサーチマネージャー レイモン・リャマス氏 コメント
「製品がついにユーザーの手と『頭』に渡ったという点において、2016年はVR/ARゴーグル市場にとって重要な一歩を記した年になった。
テクノロジーの熱狂的愛好家に明確な需要があるのは以前から明らかだったが、VR/ARゴーグルが実際に登場することによって、多くの業界のエンタープライズユーザーや、ゲームやコンテンツを消費者(コンシューマー)の使用事例が明らかになった。
こういったことから、デバイスメーカーやプラットフォームアグリゲーター、コンテンツプロバイダー、デベロッパーにとって、今後数か月間から数年間に渡って取り組むべき市場という多面的なステージが形成され、立ち上がることになるだろう」
VR/ARは、画面上に静止画像を表示するのみでなく、建物の設計図や人間の器官などのデータを表示し、作業者がそれを見ながら操作できるため、エンタープライズユーザーにとっては生産性を高めることが期待される。また、VR/ARを用いての作業では、実際の作業に移る前に変更や手順をイメージしやすいため、企業にとっては時間とコストという二つの貴重なリソースを節約できる。製造や設計、医療、運輸及び小売業など特定の市場においては、利益を最大化することにもつながることも期待されている。
消費者にとっては、VR/ARは没入的なユーザー体験を提供するコンテンツが期待されており、すでにコンテンツプロバイダーは「あたかもそこにいるかのような」ユーザー体験をもたらす各種ソリューションを開発している。消費者は快適なソファにいながらにしてコンサートやスポーツイベントに参加しているかのような体験が得られるほか、VR/ARゲームでは、プレイヤーが宇宙空間や戦場にいるかのような感覚をおぼえ、現在のPCやテレビの画面で経験できる内容を超えたものとなっている。
ARに絞って見ると、出荷台数の観点では市場においては少数派だが、ARゴーグルの世界総売上高の成長は、2016年推定値の2.09億ドルから、2021年には487億ドルになると予測。5年間の予測期間を通じて極めて大きな収益対象となると期待される。また、VRゴーグルの世界総売上高の成長は、2016年の21億ドルから、2021年には186億ドルになると見込まれる。
VR/ARの市場成長について、米国IDC Mobile Device Tracker シニアリサーチアナリストのジテシュ・ウブラニ氏は以下のようにコメントしている。
●IDC Mobile Device Tracker シニアリサーチアナリスト ジテシュ・ウブラニ氏 コメント
「あらゆる技術的発展を前提とすると、幅広い価格帯とグレードの製品が数多く登場すると考えられる。VRゴーグルは、すでに100ドル未満から1000ドル以上の製品まで登場している。しかし、低コストのデバイスによるユーザー体験は、初心者のVRユーザーを失望させる可能性があるため、技術普及を促すのではなく、むしろ阻害要因となる可能性がある。
他方、要求されるハードウェアの水準が高度であることから、ほとんどのARゴーグルは1000ドル以上のコストがかかると予想される。このため、初期段階ではAR技術は消費者に届くことはまずなく、ARのエコシステムが社会に広く受け容れられるのは数年先になると考えるべきである」
国内市場
2016年第4四半期(10月~12月)のVR/ARゴーグルの国内出荷台数は、合わせて約9万台(エンタープライズ用途を含む)となった。VRゴーグルの出荷台数では、PlayStation VRが91.3%(約8.1万台)を占めている。デジタルショールームやイベントなどエンタープライズ用途での利用が目立つGear VRは5.5%(約5千台)となり、エンタープライズ用途が約4割を占めている。2016年通年では、VRゴーグルが約11万台、ARゴーグルが約7000台で、合計11.7万台の出荷となった。
IDC Japan PC・携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリストの菅原啓氏は以下のようにコメントしている。
●IDC Japan PC・携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 菅原啓氏 コメント
「Proを含めたPlayStation 4の国内累計出荷台数は2016年末で400万台を超えていることから、PlayStation VRの2016年第4四半期の出荷台数は消費者市場のニーズを満たしているとは言えず、開発者への供給も不足していると推定される。
VRに対する市場の関心は現在特に高く、普及の追い風となっている。しかし、出荷台数や価格の問題から、PlayStation VRやHTC VIVEのような専用機ではなく、Gear VRなどのビューワーを用いたスマートフォンによるVR事例が拡大しつつある。このような状況が継続することで『最初のVR体験』デバイスの主流がスマートフォンとなった場合、VRもスマートフォンが市場のイニシアチブを握る可能性は否定できない。もちろん、スマートフォンによるVRは性能面で専用機に劣るが、スケールメリットの観点からもコンテンツパブリッシャー各社はどのデバイスがVR/AR市場で決定的なイニシアチブを握るのか、動向を注意深く見守る必要がある」
今回の発表はIDCが発行する「Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker」に詳細が報告されている。また、VRゴーグルの動向については「2017年 国内VR機器市場動向:機会損失に苦しむハイエンドモデル市場と国内市場立ち上がりの遅れ」にて日本語で詳細が報告されている。
●関連リンク
・Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker
・2017年 国内VR機器市場動向:機会損失に苦しむハイエンドモデル市場と国内市場立ち上がりの遅れ