JAL、羽田空港の国際線ラウンジにてVRの実証実験 空港におけるVR活用に向けて一歩前進!?
日本航空(JAL)は12〜14日、羽田空港にある国際線サクララウンジ「スカイビュー」にて、VRを体験できる実証実験を行う。日本の名所やイベントを収めた360度動画をVRゴーグルで体験してもらい、利用者からデータを収集することで、今後のラウンジにおけるVRサービス導入の可能性を探る。
サクララウンジスカイビュー。
動画プレイヤーについてはVRスタートアップ「VRize」が、運営スタッフや機材についてはKDDIがそれぞれ提供。VRizeはKDDIのスタートアップ支援プログラム「KDDI ∞ Labo」に選ばれており、そこにJALもサポート企業として参加していて今回の企画につながった。コンテンツはコロプラの100%子会社である360Channelより下記4つを調達し、VRizeのプレイヤーで再生している形だ。
・紅葉の京都
・福井県立恐竜博物館
・青森ねぶた祭
・長崎ランタンフェスティバル
左がVRizeのCOO 事業推進責任者、中村拓哉氏、右が日本航空の事業創造戦略部 事業戦略グループ、清水厳喜氏。今回はejeのVR向けチェア「TELEPOD」に座っての体験で、本体に仕込まれたボディーソニックによる低音の振動も体感できる。
JALの清水氏によれば、そもそもの経緯としては、新規事業を打ち立てたいというJALの意図が背景にあるとのこと。そうした中、スタートアップと協業してオープンイノベーションを起こすためにKDDI ∞ LABOに参画し、VRizeと出会って今回のラウンジにおける実証実験に至ったという。現状では継続的なVR利用が決まっているわけではないが、スモールスタートで事例をつくって次につなげていきたいという意図だ。
一方でVRizeも、さまざまな企業とともにVRの実証実験を重ねているという。同社としては、VR空間に広告を出すアドネットワーク、VRアプリを簡単に作れるCMSという主に2つの事業を展開しており、今回のJALとの協業は後者を使ったものになる。VRizeの中村氏は、「JAL様はお客様とのタッチポイントを持っていて、ラウンジもオペレーションコスト的にもイメージしやすい。コンテンツも雰囲気に合うんじゃないかといううことでスタートした」とコメントしていた。
体験に使うGear VRには、「JAL VR」と名付けられたアプリも。
JALといえば、昨年4月の「ニコニコ超会議」におけるMRゴーグル「HoloLens」デモが思い起こされる。VRでも2016年にはエコノミー、プレミアムエコノミー、ビジネスの座席を360度カメラで撮影した動画をYouTubeに投稿していた。
清水氏によれば、このときも米国でVRゴーグルをカウンターに置いて、エコノミーとプレミアムエコノミーを見比べてもらうという実証実験を行なった。結果は好評で、微増とはいえ1日あたりのアップグレード数の最高記録を塗り替えてVRが販促に役立ったとか。現状、「どれくらいのコストをかけて導入していくべきなのか。経営陣も巻き込んでやらせてほしいとお願いをしている」最中で、そうした中での今回の実証実験となっているわけだ。ちなみにJALでは2016年11月〜2017年3月、KDDI ∞ LABO出身のMAMORIOとコラボして紛失防止IoT「MAMORIO」を活用して、機体整備機材を管理する実証実験も行なっている。
同じ国内の航空会社では、360channelにてANAの機体工場見学が提供されており、360channelの中でも上位の人気を誇っているという。ラウンジの利用者はロイヤリティーの高い顧客なわけで、今後はJALにも舞台裏を特別に体験できるコンテンツをぜひ提供して欲しいところだ。
また、個人的には、初めて海外に行く人に向けて、ぜひ入国管理審査をバーチャル体験できるコンテンツを空港においてほしい。あまり英語に親しんでいない人にとって、審査官がどんな風に聞いてくるのか事前にシミュレーションできるのは貴重な体験になるはず。ともあれ、今回のような観光地の紹介も含めて空港でのVR活用は今後も進んでいきそうなので、ぜひ継続してレポートしていきたい。
(TEXT by Minoru Hirota)
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