「VRLA Expo 2017」レポート 数ある展示からVRアニメやVRコラボの可能性を感じた5つを厳選
アメリカ時間で4月14、15日の2日間、アメリカはカリフォルニア州ロサンゼルスで開催された「VRLA Expo 2017」というイベントに参加しました。「The world’s largest VR & AR expo!」とうたっており、技術やプラットフォームのアピールよりも、ゲームなどのコンテンツの展示のほうが多くて、さながらVRだけのゲームショウといったイメージです。
初日は「Pro Day」で、ビジネス目的の来訪者がターゲット。2日目は家族連れが多く訪れる一般公開日といった扱いです。チケットも2日通し券が299ドル、2日目だけは40ドル(学生は30ドル)と分かれています。来訪者は圧倒的に土曜日のほうが多く、会場の外に長い待機列ができたほど! LAの人たちの、VRへの熱い注目と期待を感じてきました。
展示会場の様子(主催側のInstagramより)
VRLAは、展示会場と講演会場、学会みたいなポスター発表会場、そして別にチケットが必要なワークショップ会場の4つの会場からなります。私は講演を理解できるような英語力はないので、展示会場を回りました。この記事では、印象に残ったブースをレポートします(まさかレポートを書かせていただけるとは思っていなかったので、まともな写真がなく、出展者やメディアのSNSから引用したりしていますがご容赦ください……)。
Mindshow:VR内でキャラクターになりきって演じ、できたアニメをシェアする
今回のVRLAで大々的に発表されたMindshow。舞台を選び、自分がなりきるキャラクターを選んで、シチュエーションに合わせてお芝居することでアニメが作れます。デモではPC向けゴーグルの「HTC VIVE」が使われており、頭やハンドコントローラーを動かすことで自らが演じるキャラクターも動きます。プレイヤーの音声はVIVE内蔵のものを使っていた様子。ボイスエフェクトで自分の声が宇宙人っぽくなったりと、細かいところの作り込みがしっかりしています。
体験者たちの様子(MindshowのFacebookより)
デモの周囲は人だかり。終わると見物客から大喝采が上がるのはいかにもノリの良いアメリカ。2017年の第三四半期にSteamに登場予定とのこと。
「映像作品を作ってみたい」「架空のキャラクターになりきってみたい」というのは、結構な人が1度はやってみたいと思っていることなのではないでしょうか。少なくとも私はそうです。それを、簡単かつゴージャスに作れる様子を見て、ちょっと感動してしまったくらいです。そして、多くの人が喝采を送っていたことからも、心のどこかに訴えるものがあるからなのでしょう。
CAVRNUS:VR内でプレゼンやディスカッション。操作が直感的
複数人でVR空間に入り、ホワイトボードに書き込んだり、3Dモデルを配置して動かしたり色を変えたり、普通の画像やスライドを出してみんなで見たりができるコラボレーションのプラットフォーム「CAVRNUS」。こちらはHTCのブースの中のいちコンテンツとして、1日目のみの出展でした。
Expo floor is now open @vrlosangeles. Check us out @htcvive booth. #vrla2017 #VR #Cavrnus #virtualreality #htcvive #vive pic.twitter.com/pUlLjdlJ5m
— CAVRNUS (@cavrnus) 2017年4月14日
ブースの様子(CAVRNUSのTwitterより)
「生徒が世界のどこにいても一緒に授業を受けられる」というようなことを説明してくれたので、教育用途を狙っているのかもしれません。20人までは同時接続を試した、理論上は何人でも入れるはずだとのこと(私の英語の理解が正しければですが)。
ホワイトボードに書き込む様子(撮影:筆者)
時々ものすごくフレームレートが落ちてしまったりと、まだまだ開発中という印象でしたが、すいすいと直感的な操作で3DモデルやPDF、絵文字などをVR内に出して他のプレイヤーといじったりできるのはすごく楽しかったです。ソーシャルVRが注目される理由を実感できました。
Facesence:顔の筋肉から表情、視線、口の動きを取得しようとする研究
Samsungの社内ベンチャー「C-Lab」による、目の周辺の筋肉の動きを測定することで表情、視線、口の動きを取得しようとする研究です。Gear VRを改造したHMDで試すことができました。顔に当たる部分に、11個のセンサーがついています。
こんな感じでセンサーが付いています(パンフレットより)
まずは声を出さずに口の動きだけで「select」と言ってみると、本当に反応しました。続いてはサメのキャラクターと我慢比べということで、10秒間、瞬きせず目もそらさなければ勝ちというミニゲーム。最後はプレイヤーの表情を読み取るということで、にこっと笑って「イー」、驚いた感じで「Oh!」と言ってみると、サメが自分と同じ表情をしてくれるというもの。
アバターや生体モニタリングの用途を想定している模様(パンフレットより)
精度としてはまだまだで、例えばサメとの我慢比べの最中、スタッフの方の説明に対して「OK」と返したら、その口の動きを誤認して目線が動いたことになってしまったり。些細な動きも拾ってしまうという感じです。製品化には遠いと思いつつも、とてもワクワクさせてくれるものを感じました。
なぜかというと、先に挙げたMindshowやCAVRNUSを見たあとだからです。VR空間で誰かとコミュニケーションしたり、キャラクターになりきったりするときに、表情が取れたらもっと楽しくなりそうじゃないですか!
C-Labは実験性の強いプロジェクトのようなので製品化に至るかどうかも全く未知数ということですが、興味があったらいつでも連絡してくれと熱心に言われました。ネット上に情報が見当たらないので、いまのところ会場でもらったパンフレットだけが公式情報になりそうです。
G’Audio:360動画やVRのための空間音声オーディオソフト
かなり大きなブースで目立っていたG’Audio LAB。このソフトで音を作り込まれた映像を視聴して、いままでの360動画とは全然印象が違う! と感じました。音と映像の方向があっているだけで、ここまで臨場感が出るのか! と。
Come visit G'Audio booth at #VRLA and try the interactive 3D audio demos. #360music #VRdemo #immersive #VR pic.twitter.com/U9BY6EBnL0
— G'Audio Lab (@gaudiolab) 2017年4月14日
ブースの様子(G’Audio LABのTwitterより)
私は音響のことはまったくわからないのですが、そんな素人でも凄さがわかったので、VRには音が大事だと実感できた次第です。ただでさえ詳しくないことを英語で説明されたので、深いところはまったく理解できなかったのが悔しいです。
このブースの他にも、空間音声の製作や編集を請け負いますとアピールするスタジオがいくつか出展していました。360動画やVRの分野でも、ポストプロダクション市場が立ち上がっていることを印象づけられました。
Infinadeck:前後左右斜め自在に歩けるトレッドミル
CES2016で発表されていたInfinadeckですが、出展者いわく今回展示しているのは最新バージョンとのことです。
自在にヌルヌルと動く!(撮影:筆者)
デモの内容は、CGで表現された草原を好き勝手動き回れるというものでした。筐体が大きくて目立っていたこと、VRLAの公式Webにもしっかり紹介されていたこともあって、大行列でした。
@Infinadeck thanks all those who came to experience the new @Infinadeck @vrlosangeles! What an amazing turnout! pic.twitter.com/bHgoUN6vX1
— Infinadeck (@Infinadeck) 2017年4月16日
大行列の様子がわかる写真(InfinadeckのTwitterより)
ただ、私が試したときは、体の重心の動きと足の動きが合わず、がっくんがっくんと進む感じで、わずか30秒くらいで酔ってしまいました。スムーズに動いている人もいたので、たまたま私の時は不具合があったのか、単に私の運動神経が悪すぎたのか。他の体験者の感想を聞いてみたいです。
一般日はブースの人気に差が
大行列ができるブースと、そうでないブースがハッキリ分かれていた印象です。
「Robo Recall」のようなAAA級のタイトルを遊べるブースや、大型筐体を使ったブース、マイクロソフトのMRゴーグル「Hololens」によるイースターエッグ探しなど、見てすぐ「これはすごそう」と思わせるものは大人気で大行列。とくに2日目は一般層が主だったため、ストレートに派手な画面と大きな装飾や装置で目立つブースに人が集まっていました。少なくとも2時間以上は待ちそうな行列でも、みんな笑顔で並んでいました。
イースターエッグ探しはこの行列!(撮影:筆者)
一方で、とにかく何でもいいからHMDをかぶってみたいという層はだいぶ少なかった印象です。例えば、360動画の配信サービスがいくつも出展していたのですが、どこも空いていました。予算はないけどアイデアで勝負といったタイプのインディーゲームもそこそこの数が出展していたのですが、やはり空いていた印象です。
VRのHMDをかぶること自体が珍しいという時期は、もう過ぎ去ったのかもしれません。単にVRを試してみたいというところから一歩進んで、VRならではのゴージャスな面白さを味わってみたいというニーズへと変化したのかも。いよいよ「VR元年」が終わり一般化していく、そんな感想を持ってロサンゼルスを発ちました。
おまけ
会場の複数の場所で見かけた、360動画を投影できる球形スクリーン。メーカー名などは確認しなかったのですが、タッチで動かせるものと表示だけのものがありました。目を引くので、これからの展示会の定番になるかも!?
これは360動画の素材配信サービスBLEND mediaのブースにあった球形スクリーン(撮影:筆者)
(TEXT by 松VR)
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