【動画レポ追加】人工知能によるVR制作マッチング「VRCH」とは!?「NAB Show」のVR関連をまとめてレポート

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4月22日から27日まで、米ラスベガスで世界最大級の放送機器展 「NAB Show(ナブショー)2017」が開催された。いわゆる、プロの映像関係者向けのカンファレンスとして知られ、ラスベガスではCESに次ぐ開催規模で、10万人以上の来場者数を誇る。

コンテンツ大国アメリカ。カメラやオーディオなど撮影に関係する高額専用機材をはじめ、超大容量のデータを扱うため、ハードウェア企業にとってもソフトウェア企業にとっても非常に重要な商談の場である。

今年は、メディア、エンターテイメント、テクノロジーを短縮した 「The M.E.T Effect」をコンセプトに掲げ、撮影や放送に広く関係する大小様々な企業が集まり、映像を取り巻く市場の力強さを示した。NAB Showは、今年10月にメディアにフォーカスしたニューヨーク版、12月には上海版も開催される。

 

進む高画質化と360度VRという新しい選択肢

「MET 360° STUDIO」と名付けられた、メイン会場のエントランス付近に設置された公式ステージが今回のカンファレンスのトレンドを象徴したように、会場の至る所に360度VRに関連する様々なプロダクトが展示された。いわゆる没入型の体験提供が可能な360度VRが、特にエンターテイメントやスポーツなどの分野で新しい選択肢として存在感を増しつつある。

キヤノンは、ドーム型360度シアターをブース内に設置。仰向けで座れるシートから、まるで世界の美しい街の風景に自分がいるかのような体験をできるというもので、同社のカメラで撮影されたコンテンツで観客を湧かせていた。インテルでは、コンテンツに合わせた振動や動きができるVR専用の椅子で、映画の出演クルーと一緒に無重力を体験できる制作ドキュメンタリーコンテンツなどを紹介。

 

キヤノンの360度ドーム型シアター。長蛇の列で賑わっていた。

 
また、高画質化や360度化が進み、扱うデータのボリュームは増える一途をたどっているため、クラウドストレージや配信サービスのブースも活況。とくに、今後電波以外の重要な放送手段として期待されるIP放送技術に関するセッションは、多くの人を集めていた。

 
 

技術の発達で前進するアメリカの360度VR市場

ノースホールは、ブロードキャスティング3.0と名付けられ、スタートアップを集めたStart Up LOFTや大企業とスタートアップと繋ぐサービスを集めたSPROCKITなど、近未来の映像や放送に関する様々な先端技術がフィーチャーされ、連日賑いを見せていた。

また、「AR VR Pavilion 」という専門区画も設けられ、360度VR専用カメラやリグなどの周辺機器が一同に集結。ノキアによるカメラとオーディオが一体となったライブストリーム可能な360度カメラOZOのブースは、この区画で最も大きなスペースを使ってカメラだけでなく今年大幅アップデートしたというソフトウェアのデモに力を入れていた。

スマートフォンに挿すだけで撮影が可能なインスタントな360度カメラなどを展開するInsta 360は、8Kのビデオと4Kのライブストリームが可能なカメラを大きく展示。少人数で撮影やライブストリームが可能なミドルレンジのプロダクトが目立った。

 

ノキアの360度カメラ、OZOのブース。

 
日本からは、360°ライブストリーム専用版THETAを展示するリコー、自社による360度VRコンテンツや防水マイクを展示するフジテレビ、360度VRコンテンツ制作CMSサービスGuru VR、360度VRを解析する人工知能 VRCHELなどを展開するスタートアップ ジョリーグッドが出展した。

 

世界に挑むVRスタートアップ

ジョリーグッドは、これまで国内のテレビ局と数多くの360度VRコンテンツを制作してきており、日本の文化や産業をVR体験できるデモを展示。アメリカ人をはじめ世界各国からの来場者が、日本文化を没入体験し、驚嘆の声を上げていた。

 

日本の文化をVR体験できるデモを展示するジョリーグッドのブース。

 
また、同パビリオンに設置されたステージには、ジョリーグッドの上路社長が登壇し、同社で展開するプロダクトについて解説した後、人工知能によるVR制作マッチングプラットホーム、VRCH(ヴァーチ )を発表した。

 

人工知能によるVR制作マッチングプラットホーム、VRCHを発表する上路社長。

 
上路社長によると、360度VRコンテンツの制作を希望するクライアントが急増する中、コンテンツのイメージや適切な発注先が分からないクライアント側の問題と、高額で利用頻度の少ない専門機材を保有する360度VRコンテンツの撮影ノウハウを持ったプロダクションをマッチングさせるサービスを開発するに至ったそうだ。

VRCH(ヴァーチ )では、アップロードされたプロダクションのコンテンツやビジネスケースを分析し、プロダクションごとに属性や適性を学習するため、クライアントは自分が作りたいVRのキーワードを入れるだけで、イメージに近い作品を体験し、プロダクションに要件を打診して、すぐに発注することができる。

またプロダクションやクリエイターは、同社の人工知能の技術により、最小限の手間でワールドワイドにVR制作の依頼を受けることができるようになる。

 

なお、VRCHの日本における発表は、6月7日の幕張メッセ「InteropTokyo」ならびに「Connected Media Toyo 2017」にて行われ、その後、仙台、大阪、福岡の放送機器イベントで順次発表するとのこと。(ジョリーグッド講演出展情報

 
日本で海外の大型資金調達のニュースが届く中、実際どのようなスピード感で一般に浸透していくか想像するのは容易ではなかったが、プロフェッショナル市場でますます高まる360度VRの存在感を目の当たりにして、今後の配信と閲覧の形がこれまでの常識の範囲を超えて広がっていくのを予感した。

 

 
 
(TEXT by 江原理恵)

 
 
●関連リンク
キヤノン
NOKIA OZO(英語)
ジョリーグッド

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