本田技研が明かす、自動車の製造工程を学べる大画面VR【JVRS Nagoya】
5月30日、愛知県・名古屋国際会議場において、グリーとVRコンソーシアムが主催、日経BPが共催する「Japan VR Summit Nagoya 2017」のプレミアムセッションが開催された。ここでは本田技術研究所 鈴鹿分室の「四輪車開発・生産準備におけるヴァーチャルリアリティ活用状況」をレポートする。
本田技術研究所 四輪R&Dセンター 鈴鹿分室 開発推進BL主任研究員 西川活氏。
本田技術研究所は、本田技研の研究開発部門。本田技研の鈴鹿製作所内に設置された鈴鹿分室ではN-Boxやフィットの研究開発を行っており、分室設立によって開発から生産まで一貫して1つの事業所内で行えるようになった。
鈴鹿製作所にあるVRのシステムは大画面型。位置センサー付き3Dメガネの着用で立体視を行う。3D表示は表示再現性の高さからDeltagenを使用。
鈴鹿製作所のVR利用における開発生産連携の背景として、鈴鹿製作所では生産車種が少なくVR設備の利用率に山谷ができるため、高価なVR設備の利用率を上げる必要があった。しかし、IT担当者は西川氏を含めて2名、かつ兼任。そのため、その2名でVR利用の拡大を図らないといけなかった。そこで西川氏は他部門との協創を提案し、その提案に車体組み立て部門が手を挙げて、2014年にトライアルが開始された。
車体組み立て部門は従来テスト車での訓練が行われていたが、それをVR化。当時開発・生産車種削減の施策が展開されていたことで、VRの検討に集中できたという。
VR訓練のトライアルは2週間かけて行われた。センサーを付けた3Dメガネをかけた人の近くに、そうでない3Dメガネをかけた人がいないとずれが発生するシステムなので、「エグザイル方式」なる見方が推奨された。
実際のVR訓練。影の出力が欲しいということで、テストコースの背景を使用している。
VR訓練参加者にアンケートを実施し、問題点を洗い出す。
背景を製作所の内部に入れ替える。開発予算は少なかったため、製作したラインは選別して3か所に限定。ラインの先まで背景が作られてなく、「壁につきあたるの?(笑)」と言われて和んだことも。
鈴鹿製作所では2つの製造ラインがあり、もう1ラインの製作過程もつくらないといけないため再製作へ。そのときに完成車検査部門がVRの利用に手を挙げた。データのコンパクト化のために工場背景の縮小化を行っている。また、完成車検査は車体の下部ピットでの作業もあるため、下部ピットのデータや検査の時間に合わせたアニメーションも作成している。
製造部門では品質維持が最優先とされ一体感が必要とされているのが大前提とされる。車体組み立て部門では多人数が同時に見ることができ、共有ができることから大画面のVRスクリーンを使用し、完成車検査部門では囲まれた地下ピットでの作業を考えた没入型のVRが使用された。導入の問題も一部の「未完成な部分」が関係者の心を和ませたという。VR導入の評価として、大きな問題がなくVR技術を導入できた、ということとなり、今後の新車種製造においても継続利用が行われることになった、と締めくくった。
(TEXT by Shogo Iwai)
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