Noitom Hi5の世界初披露も! Japan XR Hackathon 2017、激戦の東京会場を写真レポート
6月24、25日に国内外5会場でVR/AR/MR(まとめて「XR」と呼ぶ)系のハッカソン「Japan XR Hackathon 2017」が開催された。東京で48人、岡山で10人、広島で23人、福岡で12人、カナダのバンクーバーで6人という合計99人の参加者が、26チームを結成。
大きく分けて人道支援、B2B、ゲームという3つのジャンルからテーマを選び、2日間でチーム結成、テーマの選定、アプリの要件定義と実装、そしてデモの披露というプロセスを駆け抜けた。最終的に下記の11チームが選ばれて、7月2日の最終選考にて4万ドル(約440万円)が授与される最優秀賞が選ばれる。
●東京会場(8作品)
・Realitybender
「Sexual Violence Meter (Violence Awareness)」
*This helps to visualize the level of violence
・HAPPY CHIDREN
「HAPPY CHILDREN」
*紛争地域の子供のアフターケア
・First Aid対策委員会
「First Aid Illminator」
*紛争下での医療行為の迅速化貢献
・地雷被害教育チーム
「地雷XR教育」
*HoloLensを使った地雷・不発弾回避教育ツール
・TEKUKEN
「PHASE」
*HoloLensを使った新しいプレゼンテーション、マニュアルの作成ツール
・つくるラボ with B
「COZMO MINE DETECTOR」
*VRを利用した地震除去の遠隔トレーニングツール
・ザバイオーネ
「DE miner Training」
*地雷撤去のトレーニングを行う
・afjk
「HoloLogger」
*HoloLensを使ったユーザー行動分析ツール
●岡山会場
Team FCD
「MineDetection」
*地雷のARマッピングツール
●広島会場
関チーム
*作品名なし
*リハビリをサポートする人向け、正しくアドバイスできるよう練習コンテンツ
●福岡会場
*該当者なし
●バンクーバー会場
Team Vancouver
「#Through Their Eyes」
*Protecting Civilians through Knowledge and Education by VR
PANORAも、SVVR(SILIVON VALLEY VIRTUAL REALITY)、NOITOMとともに主催の1団体として参加。東京会場を取材したので、その様子を写真を中心にレポートしていこう。
*7月2日のXRハッカソン展示会@東京千代田区・Startup Hub Tokyo、一般来場の申し込みはこちらから!
赤十字国際委員会が共催、人類の課題に挑む
日本に暮らしていると平和ボケしがちだが、最近のニュースで言えばイギリスのテロ事件やフィリピン・ミンダナオ島の武装勢力の占拠など、世界ではまだまだ辛い環境に晒されている国や地域も多く残されている。そんな人道支援について目下、注目されているXR技術が貢献できることは何かないだろうか──。
今年のJapan XR Hackathonの大きな特徴は、赤十字国際委員会の共催を元に、人類が未来で解決しておくべき6つの課題をテーマとして掲げたことだ。
・地雷・不発弾対策
・紛争下での医療サービス
・民間人と弱者の救済
・障がい者の尊厳を尊重した社会づくり
・紛争下の性暴力と向き合う
・被災者及び避難民の支援
これらに「B2B」と「ゲーム」を加えた8つからテーマを選択し、それを解決するソリューションを2日間で生み出す。24、25日の開催に先駆けて23日には赤十字国際委員会によるプレゼンテーションも実施されて、参加者にとって現状を把握し、テーマを深く掘り下げることを大きく後押しした。
さらに日本のVR開発者にとって福音だったのが、Noitomのグローブ「Hi5」が開発機材として提供されたという点だ。VRのモーションコントローラーは「つかむ」「はなす」「投げる」といった人間の手をある程度再現してくれるが、五指までは表現できない。
そこでグローブ型のHi5だ。Noitomといえば、文字どおり桁が違うほど安価なモーションキャプチャーシステム「Perception Neuron」を提供している企業。そのNeuronと同じセンサー(IMU)を各指に搭載して五指の動きを再現し、さらにHTC VIVEの周辺機器である「VIVEトラッカー」を手首部分のアタッチメントに装着することで、バーチャル空間での位置トラッキングも可能にしてくれるという製品になっている。
そんな貴重なHi5がこのJapan XR Hackathonにて世界初(!)のお披露目となった。まだ出荷されていないHi5製品版の初期ロットの一部をこのハッカソンに持ってきたとかで、これはかなり力が入っているでしょう!
実際の東京会場の現場は、2日間かけて粛々と開発が行われていた感じだった。
土曜早朝の9時から開会式がスタートしてルールが解説されて、その後、チーム編成が行われる。東京では48人が1〜7人で14チームに分かれたのち、PCやHTC VIVE、VIVEトラッカー、Hi5といった機材が貸し出された。また、持ち込んだHoloLensで開発するメンバーもいた。
テーマの選定後、どういったテーマで人々が実際に困っているのか、どうソフトをつくれば人道支援の現場で実用的なものに仕上がるのかといったリサーチを経て、あとは25日の第一次審査に向けてひたすらコンテンツの制作だ。そんなまだスタートしたばかりで元気なみなさんの様子を激写!
さらに会場にはスポンサーブースも設けられておりました。
マイクロソフトブースには、発売されたばかりの「Surface Studio」が! ダイヤル付きで!
MSIのVR対応デスクトップPC。
こちらはASUS。
国内代理店であるアユートが展示していたPerception Neuron。
そうした開発の現場でハードルとなったのが、まずVIVEのベースステーションで発生した干渉問題だった。VIVEでは2台のベースステーションを利用してゴーグルをかぶっているユーザーの位置を検出しているが、複数の対となるベースステーションを同じ部屋に置いていると実は混線する可能性が出てくる(関連記事)。同じ部屋に複数のベースステーションが存在していると、何かのタイミングで別の信号を拾ってプレイヤーの位置が正しく検出できなくなってしまうのだ。
この問題を解消するためには背の高いパーティションや天井から垂らした黒い布などを用意して隔離するのが定石。PANORAも主催の一人でしたが、そこは準備が足らずとても申し訳ないことをしました……。
さらにHi5の運用についても、未知数のところが多かった。なにせ世界初のお披露目ということで、ネットにも情報が乏しい状態だ。会場の磁気環境に影響を受けてHi5の手がずれたり、先のベースステーション問題にVIVEトラッカーがつられて手の位置がズレたりと、思うようにVR空間で動かせないこともあって、開発元であるNoitomのメンバーが現地で強力サポートしていた。
広々としていた会場にパーティションが出現してます。
そこにハッカソンならではの、「テーマ選定がなかなか終わらない」「壮大なテーマにしすぎて実装が間に合わない」「眠い……」という問題が重なってくる。様々な困難を乗り越えて2日間駆け抜けてきた参加者にはリスペクトしか感じない。
最終的に生まれたコンテンツでは、「地雷・不発弾対策」をテーマに選んだチームが目立っていた。筆者も審査員として参加したが、限られていた中で最大限に努力しているのが伝わってきた。誠に申し訳ないが、審査員としての最終審査が控えているので、詳細は申し上げられないものの、そこはぜひ7月2日に開催される最終審査会の一般デモに参加して体験してほしい。
本日6月30日には、ハッカソンに関連した赤十字国際委員会も参加する人道支援活動のためのXRシンポジウムが、東京お台場・テレコムセンター14F東棟・MONOにて、13時30分から開催される(開場13時)。こちらも参加して、ぜひ人道支援とテクノロジーのあり方について考えてみてはいかがだろうか。ひとまず参加者のみなさま、お疲れ様でした!
(TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
・Japan XR Hackathon 2017
・人道支援活動のためのXRシンポジウム