ロンドンっ子のVR初体験はジャンプキャラ!? 英国Hyper Japan「日本キャラVR祭」レポート
イギリス・ロンドンにて開催された、日本の文化や食をテーマにした「Hyper Japan 2017」というイベント内に「日本キャラVR祭」という一角が登場。7月1〜4日に実施したアメリカのAnime Expoに続く出展で、日本のコミック出版大手の集英社・講談社のVR作品が提供されて、行列ができるほど人気を博しておりました。期間は7月14〜17日の3日間。現地のVR事情やキーパーソンへのインタビューも交えてレポートしていきます。
HYPER JAPAN Festival 2017 トレイラー。
体験のための整理券を求めて長蛇の列!
Hyper Japanは最高気温が20度台前半という大変過ごしやすい気候の中、ロンドン塔から歩いても15分程度のところにあるTOBACCO DOCKという伝統ある施設にて開催しました。
Anime Expoの「日本キャラVR祭」と同じく、とりまとめは大日本印刷と集英社。10作品以上が出展したAnime Expoのときよりは規模が縮小したものの、
・ジャンプキューブ(集英社)
・ワンピースキューブ(集英社)
・『DEATH NOTE』VR脱出ゲーム(集英社)
・ジャンプ美術館(集英社)
・Hop Step Sing!(講談社)
といった5作品が体験可能でした(各コンテンツの詳細はこちら)。さらには書籍の「ジャンプVR」やHop Step Sing!のポストカード、和風モダンなデザインのレターセットなどの物販、そして複製原画展もある充実したブースとなっていました。
取材してみて驚いたのは、VRへの注目の高さ。初日からイベント開始3時間で整理券は配布完了。2日目に至っては、後半の部の開場時間となるやいなや、VRの整理券を求める長蛇の列ができていました。これはスタッフの方々も大変な驚きと喜びだったとのこと!
整理券を求める長蛇の列。
初日も、開始から3時間で整理券は配布終了に!
お客さんにアテンドするスタッフが「VRを今まで体験したことありますか?」と聞くと、ほとんどの人が「初めてです」と答えたとのこと。ヘッドマウントディスプレイを外した瞬間、とても楽しそうな笑顔で「Amazing!」(素晴らしい!)と言ってくれるのがなによりも嬉しかったそうです。
ちなみに、「日本キャラVR祭」のブースそのものはフォトスポットや物販があるので、整理券がなくても入ることは可能。整理券が手に入らなかったという方が、30分以上も真剣に、他のお客さんがプレイしている様子を見学しているなんてシーンもありました。VRへの並々ならぬ注目度を感じた次第です。
世の中にはまだまだインパクト重視で体験者が酔ってしまうようなVR作品が多い中、漫画・キャラクターの表現に注力し、さらに酔いにくいようにも配慮されたこれらの作品群がロンドンっ子の「VR初体験」になったのはとても素晴らしいことだと思います。
海外に日本発のキャラクターがさらに羽ばたいていく、その加速材料としてもVRには期待が集まりそうです。初出展ながらこれだけの注目を集めたブースを観て、筆者は「キャラVR」が世界に広がっていくことが楽しみになりました。
Hop Step Sing!の登場人物・仁衣菜の衣装を着たコスプレイヤーさんも! 写真をお願いする方も絶えませんでした。Emma Langley Soryuさんという、ロンドンでは有名なコスプレイヤーさんです。
せっかくの機会ということで、Hyper Japanの「日本キャラVR祭」で現場をまとめておられた大日本印刷の伊藤智之さん(出版メディア事業部事業企画開発本部出版事業開発部新事業開発室)にお話を伺ってみました。
──海外のイベントに「日本キャラVR祭」という複数のコンテンツ制作企業が集まる場を、大日本印刷という企業が主導されたのは、どんな狙いがあったのでしょうか?
伊藤さん 英国という、フランス・イタリアに比べてマンガコンテンツが少ない国にコンテンツを紹介して、日本のマンガコンテンツの認知をはかること。コンテンツをVRという技術にのせて、その話題性とともに拡大をはかること。その先を見据えた企業に、技術を用いてコンテンツをのせて、英国市場に企業ブランドの認知拡大を行う可能性をはかるテストを行うこと。この3つが狙いです。
──実際にHyper Japan 2017に出展してみていかがでしたか?
伊藤さん 新しいコンテンツにも素直に順応していく、ピュアな感覚を感じました。人気度合いを鑑みると、日本より多少時差も感じました。ブース内ではVR、印刷物、等身大パネル、音楽、(VR紹介)動画など様々なメディアでコンテンツを表現しましたが、等しくどのメディアにも日本人以上の喜びの反応を表していたと感じています。総じて、ピュアでポジティブな感情でコンテンツを受け入れる彼らに、私たちも好感触を抱きました。
日本酒の試飲も人気!
VRからは少し横道に逸れますが、Hyper Japan 2017の様子も簡単にまとめておきます。このイベントはアニメのイベントではなく、日本食やファッション、伝統文化の紹介がメインです。日本から出ているエンタメ系企業は任天堂と「日本キャラVR祭」くらいでした。とはいえアニメグッズを扱うショップもたくさん出店しているため、それらを求めるお客さんや、アニメ系のコスプレを楽しむお客さんも目立ちます。
イベントで印象的だったのは「酒を飲んでいる人が多い!」ということでした。日本酒の紹介・販売ブースがあちこちにあり、各社とも非常に精力的だったのが印象的です。別料金の£15(約2200円)の別料金が必要な日本酒品評会コーナーまであり、そこが大変な賑わいでした。
また、パステルカラーのKawaiiファッションも大人気。ファッションの語り方がよくわからないですが、上の写真のような洋服を売るお店が複数あって、こうした服を着た参加者も多数いました。
デモの度に注目を集めていたのは岐阜にある機械メーカーITKによるHandroid。手の形をした機械を遠隔で動かすことができます。宇宙開発などを想定して研究開発を進めているものだそうですが、全て自社開発のため、エンターテインメントなど多様な用途に展開可能とか。すでに企業CMなどにHandroid「出演」の問い合わせがあるそうです。個人的にはVR機器と組み合わせても面白そうだなと感じました。
VR機器は入手しやすいロンドン
ロンドンの高級デパート「Harrods」の電気製品売り場では、3大VR機器が販売中!
イベントの合間に街へ出てみると、HarrodsやゲームショップなどにOculus Rift、HTC VIVE、Playstation VRが売られており、決してVR機器が手に入りにくいという状況ではなさそうでした。
ロサンゼルスで来場者に話を聞いた際には「BEST BUY(大手家電量販店)の店頭でVR体験したことあるよ!」「VR機器を買って自宅で遊んでるよ!」という方がちらほらといらっしゃいました。ただの印象としては、アニメエキスポ参加者とHyper Japan参加者ではVRの普及度に差があるようにも感じました。
Hyper Japanのように「面白いものが好き!」という属性の方が多いと思われるイベントで、来場者のほとんどが「VRは初めて」ということは、体験会のようなものがまだあまり多くないのかもしれません。ただ商品を買いやすくするだけでなく、タッチポイントを増やすかどうかもVRの普及の鍵なのかもしれない、なんてことも思ったりしました。
中古ショップではOSVRも売っていました!
(TEXT by 松VR)
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