社員300人でコール録音 「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション制作事例」(前編)【CEDEC 2017】
CEDEC 2017ではPlayStation VRのコンテンツのセッションも開催されている。今回はバンダイナムコエンターテインメント提供の「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」について取り上げた、「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション制作事例 ~最高のVRライブ体験に必要となる要素とは~」をレポート。
なお、3日目となる金曜日には「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション制作事例 ~理想的な開発環境とPhotoshopを駆使した効率的なUIデザインの手法~」も控えているので、そちらは後編としてお届けしたい。
さて、今回のセッション内容は、企画仕様から導き出されたプログラム・アート仕様・サウンドでのポイントを紹介するというものだ。
登壇者は3名。まずはCygames・金井大氏。本作では3Dグラフィックのアーキテクト・実装などを担当
プロジェクトのとっかかりはいわゆる「部活系」でプログラマーがOculus RiftでライブシーンをVR体験させてみたらどうなるのか、というところからスタート。しかし、事業化というところまでは踏み込めず、試行錯誤を繰り返して事業化できるところへ着地させる必要があった。
開発初期のライブシーン。アイドルはかわいいが、背景や観客、そしてなにより自分の存在感が足りな過ぎたという問題があった。
このリアルに負けないVRライブを実現させるために企画側の試行錯誤を繰り返したという。
登壇者2人目は同じくCygamesの谷本裕馬氏。3Dグラフィックの監修を行っている。
アイドルの仕様はこんな感じ。ポリゴン数はスマホ版の倍以上とのこと。メニュー画面のアップのキャラはテッセレーションを用いることで10万ポリゴンほどに。この辺りは金曜日のセッション「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション制作事例 ~理想的な開発環境とPhotoshopを駆使した効率的なUIデザインの手法~」で詳しく報告することになりそうだが、とりあえずは太ももの丸みは必見である。
ライブ観客のモーションはCygames社員によるもの
モブ(ライブの聴衆)は割とのっぺりしているものの、人数を増やすためにこういう形になったとのこと。そんな中でもキャラクターに個性を付け、一定のパターンで動かないモブを作るための苦労が伺える。衣装や動きはだぶらないようにプログラム側で処理を行うのだが、それが処理速度の問題を生むのは後ほど。なお、コンサートライトは左手・右手独立した本数で持つことができる。
モブのキャプチャーはCygames社員が担当。この暴露話になると会場に笑いがあふれた。
ライブ会場は動員数、つまりモブのことを考えるとあまり多くはできない。バランスの問題やファーストライブの再現をするために今回は舞浜アンフィシアターを選択。公式ライセンスも獲得している。
これらを組み合わせて実際に現地にいるようなライブ感を再現している。
10000人の遠モブにも対応! 大量表示へのアプローチ
プログラムの話題になり金井氏が登壇。技術的な検証は2015年から、プロジェクトとしてGOが出たのが2016年1月。一度Unreal Engine 4で検証をしているが、それはCPUコストがネックになったため、Unityのバージョンアップの結果問題は解決している。
2400人のアニメーション処理はRing BufferでGPUも使った処理を行っている
最終的には10000人の遠モブを入れても大丈夫に。15000人規模のデモも製作した。これは4thライブなどでの動員数とか
3人目はCygamesサウンドチームマネージャーの丸山雅之氏。本作ではサウンドの設計、アセット作成、組み込みを担当。
VRライブで必要なのはリアルな観客な声と振動を感じるほどの大音響!とはいえ、2000人集めてホール収録は現実的ではない。クローズドプロジェクトだったのでなおさら。
Cygamesのスタッフ有志で300人でコール録音
なんとCygamesのスタッフ有志で300人集まる機会があった!!のでホール録音を敢行
ステージ真横の2chがドライ(原曲・ステレオ)、端の4chが残響とコール音を出力。しかし、この設定では視点が変わってもモブ音声が変わらないという欠点があり、「近モブ音声」の収録を実施。
別の問題として新曲が出るたびに300人で録音するのはどうか、という話が出たので、ニコ生でも使用する社内のサウンドスタジオが完成したので人数を減らして収録することに。
1曲あたり7テイクほどで、近モブはコールがうまい社内の選抜メンバーを起用(笑)。ブラインド比較の結果、50人バージョンを採用し、以後はこの体制でコールが有志の手によって録られている。
実装には関係ないが興味を持った周辺機器として、「振動機能ジャケット」というものがある(PS4公式ライセンス商品!)ので、これを着用してデモをしたとのこと。このための「首振りによる音像の移動」オプションが用意されている。ちなみにこちらの価格は約5万円。
スタッフのアイマス愛が没入感の高いVRアイドルライブに昇華した「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」。現在は「アイドルマスター シンデレラガールズ」の全183名を自由に配置できる「EDIT LIVE」が配信されているので、この記事で興味を持った方はぜひ体験してほしい。
(TEXT by Shogo Iwai)
*CEDEC 2017記事まとめはこちら
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協力:舞浜アンフィシアター