Oculus開発者のためにつくった G-Tune「LITTLEGEAR i310」のこだわり
9月28日、マウスコンピューターのゲーミングブランド「G-Tune」からVR開発者向けの小型デスクトップPC「LITTLEGEAR i310」が発売された。2年以上にわたって日本のOculus業界をPCマシンで支えてきたG-Tuneが、どんなこだわりでLITTLEGEARを開発したのか。マウスコンピューターの杉澤竜也氏、小林俊一氏に話を聞いた(以下、敬称略)。
マウスコンピューター、コンシューマー営業統括部 コンシューマーマーケティング室 主任、小林俊一氏。PCハードに関する造詣が深く、LITTLEGEARの開発を担当した。
——LITTLEGEARはまずハンドルが特徴的ですが、当初から今のデザインだったのでしょうか?
小林 そうですね。VRの展示会での利用を想定して、「持ち運べて、GeForce GTX980以上が搭載できるグラフィックカードの制限がないコンパクトPC」というコンセプトをデザインに起こしたときからハンドルがありきでした。このハンドルの位置もこだわっていて、LITTLEGEARでは重い電源が前側にあるため、持ったときにバランスよく運べるように前側についているのです。
杉澤 耐久性も厳しくチェックしてます。LITTLEGEARは通常8kg前後の重さになりますが、その6倍となる50kgのものをいれた状態でも問題なく持てることを確認しました。弊社は品質管理のチームが厳しく、さらに小林のこだわりもあって「行けるところまで行った」感じです。
グリップ部分の表面処理も3回変えていて、最終的に表面に凹凸があるシボ加工タイプになった。
小林筐体ですが、パートナーが持ってるベースモデルの骨子こそ活用してますが、ハンドルの付与や、拡張性などで、まったく別物なレベルになってます。デザインも完全オリジナルで、フロントLEDは、ロボットを意識した感じですね。
杉澤 実は前のOcuFes監修モデルでも採用した「NEXTGEAR」シリーズは、僕の趣味で「ファイブスター物語しかないだろ!」とデザインを起こしてもらったんです。今回は違うテイストを考えてましたが、やっぱり「厨二感」がでてないとダメ。
——(笑)
杉澤 VRは近未来感のあるデザインが似合う。じゃあ……ということで某宇宙世紀のアニメにあやかったデザインになっております。
——なるほど(笑)
起動時には赤、ストレージにアクセスしている際は紫に変化する。ちなみに本体は指紋が目立ちにくいマット仕上げだ。
杉澤 フロントパネルに向かって右側にある電源スイッチは、暗い展示会の会場でも目立つようにシルバーになっています。さらに誤動作を防ぐため、きちんと押し込まないと電源が入らないようにボタンの余分な出っ張りを削りました。
——めちゃくちゃOculus開発者向けのニーズですね。
小林 見えにくいところでは、筐体底面にある吸気口がエアフローをよくするために比較的高いスタンドにしています。また、底面のメッシュカバーも簡単に引き出して外せる。
——ああー、確かに吸気口のあたりってホコリが溜まりやすいですよね。
杉澤 PCの筐体をいちいち開けるのが面倒臭かったので、すぐに引き出せるようにしてます。
底部は「高床式」でエアフローを確保した上で……
メッシュカバーを取り外して、メンテナンスできるようになっている。
——ぜひ内部を見せてください。
小林 はい。
サイドパネルを開けたところ。左上にマザーボード、右上に電源、下にグラフィックカードが配置されている。大型のグラフィックカードでも搭載できるように調節したのがこだわりだ。
小林 内部だとストレージの拡張性にもこだわっていて、3.5インチが1基、2.5インチが3基、さらにマザーボード背面のm.2スロットにも1基のSSDと、5つの拡張が可能です。
——5基!
メッシュパネルの内部にあるサイドパネルに、3.5インチを1基、2.5インチを2基搭載可能。
さらにマザーボードの裏側にM.2スロット、反対側のメッシュパネルを外したサイドパネルに2.5インチを1基装着できる。
杉澤 電源は小型デスクトップにありがちなスモールフォームファクター(SFX)タイプではなく、標準的なATXタイプを採用しました。今のグラフィックカードが扱えても、将来的にSFXでカバーできない製品が出てきたらどうするのか。
小林 実は今年6月にAMDのハイエンドグラフィックカード「Radeon R9 Fury X」が出たときに、Furyの水冷ユニットが電源コードと干渉して入らなかったこともありました。
——えっ、どうしたんですか!?
杉澤 「グラフィックカードの制限がない」という目的を達成するためにつくり直そうって。
小林 つくり直しました。
——おおお!
杉澤 PCのグラフィック性能にこだわるOculus開発者が困らないようにという。
小林 BTOでFuryを選んだ場合、干渉を避けるためにCPUクーラーも背の低いタイプに変わります。
杉澤 CPUクーラーは、BTOの組み合わせによって3種類から最適なものが選ばれます。自作PCでパーツのベスト組み合わせを見つけるのは、手間もお金もかかってしまうこと。長年の経験が蓄積されたPCメーカーだからこそ、「このCPUとグラフィックカードなら、このパーツが性能や予算的にもぴったりだよね」と提案できます。そうした長くいいものを使ってほしいとこだわった結果、新モデルの開発は半年間が目安なのに、通常の2倍である1年まるまるかかってしまいました。
——ちなみにお値段っておいくらぐらいでしょうか?
杉澤 GeForece GTX 960採用モデルは税別で9万9800円から、Oculus Riftの推奨であるGeForece GTX 970採用モデルは11万9800円からとなっています。ちなみにマザーボードにチップセットの「インテル H81 ExpressH81」を採用したシリーズも用意しており、そちらは5万9800円からとなってます。
——10万円を割るってのはスゴいですね。
杉澤 コンパクトデスクトップPCだからといって、極端に値段が上がることは避けたかった。ほかのデスクトップPCでも使われている信頼性の高いパーツでコストを抑えつつ、Oculus開発者向けのこだわりを盛り込んだ筐体やレイアウトを実現した形です。長年のノウハウが蓄積したPCメーカーだからつくれたLITTLEGEARを、VRの開発に役立ててください。
(提供/G-Tune)
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