【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム「VR ZONE SHINJUKU その2」
6年前にくも膜下出血で倒れた人気コラムニストの神足裕司さん。闘病中の氏が車椅子の上から隔週でお送りしているVRコラム第9弾です!
「ウチの夫は仕事ができない」というドラマを見た。
錦戸亮さん扮する司が車椅子の80代の女性を3Dのプロジェクションマッピングで喜ばせると言う話だった。女性の幼い頃育った村落はもうダムの底だ。そして家族もいない。それを部屋ごとその村だったり、家族の団欒の部屋だったりを再現して覗き込む。実物の名産のスイカを食べればそこは昔のままの懐かしい場所となった。
それをみて思い出した。同じような話をVRをはじめて紹介してくれたPANORAの担当が話していた。
「既に亡くなってしまった人にもVRのゴーグルの中では会えたり、もういないペットにも会える。横にいて甘えてくれる。そんなことができるんです」と。
ボクはその話を聞いたときは「ちょっとなあ」と思ったのだけれど最近は体験してみて言っていることが良くわかる。ドラマの中でもバーチャルではあるが老女が車椅子ではいけない森の中や滝を見上げるような場所に行って心が満ちていく。ボクはそんな気持ちがとても良くわかるような気がする。
さて、今回は前回の続き。VR ZONE SHINJUKU で体験した「エヴァンゲリオンVR THE 魂の座」と「ホラー実体験室 脱出病棟Ω」のおはなし。
脱出病棟は声が出ないはずのボクが悲鳴を上げたぐらい怖い。普段声を出さないボクが「わっっっ!!!」って声をだしたもんだから隣に座って一緒に脱出を試みていたPANORA担当もキャッと声を上げ「わっ!」「きゃっ!」と大合唱だ。本当に怖い。怖いなんてもんじゃない。今迄にこんなにこわいお化け屋敷に入ったことは無い。
一人が出口にたどり着いてももう一人がやってこなければ扉は開かない。「神足さんどこですか?」「はやく!はやく!」先に着いた編集スタッフは(本当に)泣きそうな声で助けを呼んでいる。実体験のお化け屋敷では限界もあるだろうがVRの映像の中ではいくらでも怖い世界が描くことができる。
実際の世界では無理な場所だ。
エヴァンゲリオンのVRでは、憧れのエヴァンゲリオンの操縦席に座る。1度の説明では操縦はうまくいかなかった。それでもあの緊張感はアニメで見ていたものとおなじだ。やはり。
●著者紹介
撮影:石川正勝
神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。
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