グリーによるVRコンテンツを効率よく制作するためのワークフロー【CEDEC2017】
8月30日から3日間にわたり開催したCEDEC2017。今回はグリーの3Dアーティストによるセッション「VR リアルタイムCGアニメーションの演出・作り方 -VR特有の壁を超えるために-」を紹介しよう。
本セッションでは主に手戻りの少ない効率的なワークフローの手順やVRにおける演出の発想方法などについて紹介している。
今回はグリーで働く3Dアーティストの亀山あき氏(写真左)と福田孝氏(写真右)によるセッション。
まず紹介するのは手戻りしないためのワークフローから。今までの2Dディスプレイでプレイするゲームであれば、デモシーンは始めに上の画像のような「絵コンテ」というもの描き、それを元に映像を制作していた。
しかし同じ工程でVRコンテンツのデモシーンを制作した後にVRヘッドセットで確認したところ、絵コンテではわからない問題点が多かったことや絵コンテに時間をかけてしまうと後のVRでの確認が遅れてしまうという問題があった。
その時のワークフローはこのようになっておりVRでの確認時に不具合が見つかった場合、最悪絵コンテから書き直しということもあったといい、VRの確認を最後に回してしまうことで様々な問題が出てしまったという
そこでどのようにワークフローを改善したのかと言うと、コンテの段階を演出内容とレイアウトの認識あわせのみに留めてその後の工程に時間をまわし、写真左上のような簡易的なAnimatics(※)から順々に演出やポージング、アセットなどを追加していく形をとった。
結果的にワークフローはこのような形となり、このようにすることでレイアウトに間違いが無いか簡単な検証が可能となった。
※Animaticsとは各シーンを検証するため簡単にCGグラフィックスで映像化したもの。
VRでの演出の発想方法としてはまずVRならではの体験を重視することが大事とのこと。例えば体験者がじっくり見てみたくなるようなものを配置したり体験者に対して物を飛ばしてみるなど、思わず身動きしてしまうようなもの。
また可能であればコントローラーを振動させたり風を送ってみたりなど、リアルへのフィードバックも良い。
体験者は多くの場合シーン冒頭で自分がどのような場所にいるのか確認するために辺りを見渡すので、見渡す時間を設けたり見せたいものがあれば視線誘導を考えた演出を考える必要がある。
しかしいかに見せたいものがあったとしてもメインカメラは体験者自身であり、パンやパンク等のカメラ移動は体験者の頭を振り回すことと同じことになってしまうため、カメラワークには注意が必要だ。
次にVRコンテンツを作る上での注意点。
レイアウトにおいては見せたい要素をどれだけ体験者の視線に収めるかというのも大事になる。例えばストーリーが勝手に進んでいくようなコンテンツであれば、ストーリーにおいて大事な要素を様々な方角にちりばめてしまうと、体験者がその要素を見落としてしまう原因になってしまうというようなことだ。
しかしあまりストーリー展開がないものや、体験者が自由に動くものであれば空間の無駄を感じさせないようにそれらの要素は散りばめると良いだろう。
もし体験者を強制的に移動させたい場合にはフェードイン、フェードアウトを使うことで、体験者が移動したことを認識しやすくなる。しかし、その際に体験者が向いている方角を変えてしまうと方向感覚がおかしくなってしまうため注意が必要だ。
またVRではハードウェアへの処理負荷対策も大事であり、もし対象ハードウェアがモバイル端末である場合は発熱によるクーリングやバッテリーのことも考慮しなければならない。
そこでコンテンツの制作を始める前に、技術担当と話し使えるライトの数や種類、視界に入るキャラクターの上限、レンダリング方式などの相談をしておくことが大切だ。
まとめとしては、VRの特性を制作メンバー間で共有できているようにすることや、VR確認の段階を複数設けて手戻りしないようなワークフローを意識すること、またVRに合わせた演出や負荷処理などを考慮して制作していくことが重要だと語っていた。
(TEXT by まぶかはっと)
*CEDEC 2017記事まとめはこちら
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