IDC、2017年第2四半期「AR/VRゴーグルの国内/世界出荷台数」発表 既存製品値下げ効果も反映
IDC Japanは、2017年第2四半期(4~6月)における「AR/VRゴーグルの国内/世界出荷台数」を発表した。全世界でのAR/VRゴーグルの出荷台数は213万台となり、第1四半期から微減。国内の出荷台数6.3万台のうち、PlayStation VRが5.2万台を占め、こちらは微増となった。
IDCが発行する「Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker」のデータによると2017年第2四半期の世界AR/VRゴーグル出荷台数は213万台となり、ARが前年同期比23.9%減の3.8万台、VRが同27.0%増の209万台となった。全体としては第1四半期から微減の出荷実績だが、既存モデルの値下げや今後登場が見込まれる新製品によって、クリスマスシーズンでの市場拡大が期待される。
IDC Mobile Device Trackersのシニアリサーチアナリストを務めるジテシュ・ウブラニ氏は、この傾向について以下のようにコメントしている。
●IDC Mobile Device Trackers シニアリサーチアナリスト ジテシュ・ウブラニ氏 コメント
「VR市場の成長は、最近の導入されたテクノロジーと比較して投資額の面でも低迷していると言わざるを得ないが、エンドユーザー教育分野での必要性は非常に高い。最近行われた既存モデル値下げは採用障壁の一つを緩和するのに一応の役には立ったが、消費者がAR/VR製品について学び、購入前に試用する機会を提供することが、依然として大部分の企業が直面している重要な課題となっている」
VR製品は、AR/VR市場全体の98%以上を占めている。VR分野では、スクリーンレスタイプ(Gear VRやDaydream Viewなど)が今四半期出荷されたAR/VRゴーグルが全体の54.1%を占めたが、第1四半期からは19.6%、前年同期比では21.2%の減少となり、出荷に一服感が見られる。逆に、ケーブル型のVRゴーグルが43%を占め、第1四半期から19.3%の伸びを示した。背景にはPlayStation VRの好調と、Oculus Riftの値下げなどが挙げられる。一方、ARゴーグルは非常に少ない出荷台数で推移しており、前年同期比でも減少。これは昨年消費者向けに大規模な出荷を行った製品が前年同様の出荷規模を維持できなかったことが原因として挙げられる。今のところ、ARゴーグルでは、小さくても収益性の高い成功例がビジネスユースに集中しており、この傾向が続くものとみられる。
AR/VR及び各種デバイスのプログラムバイスプレジデントであるトム・マイネリ氏は、この状況について以下のようにコメントしている。
●AR/VR及び各種デバイス プログラムバイスプレジデント トム・マイネリ氏 コメント
「消費者向けのARヘッドセットは、消費者がARをスマートフォンの画面上で体験しているため、本格的な立ち上がりには至っていない。目下AppleとGoogleは共にそれぞれのプラットフォーム、iOSはARKit、AndroidではARCore上で、ARアプリの開発サポートに注力している。今年暮れから来年初頭にかけて、新しいARアプリが怒濤の如く現れることを期待している。これらのアプリの登場は最終的に消費者向けのARメガネの登場につながるはずだが、手ごろな価格帯かつ十分な出荷ボリュームで起こることは当分の間は期待できない」
国内AR/VRゴーグル出荷台数は合計で6.3万台となり、うちPlayStation VRが5.2万台となった。また、エンタープライズ用途でのGear VRの利用が目立つSamsung(Galaxy)は約5千台となり、いずれも堅調な出荷が続いている。
IDC Japan PC・携帯端末&クライアントソリューションのシニアマーケットアナリストである菅原啓氏は以下のようにコメントしている。
●IDC Japan PC・携帯端末&クライアントソリューション シニアマーケットアナリスト 菅原啓氏 コメント
「スマートフォンに装着するだけで簡易的なVRが体験できるスクリーンレスタイプやPlayStation VR、およびHTC VIVEなど多くのヘッドセットが安定的な出荷を続けており、今後登場する新製品群も含めると、日本においてもAR/VRは一応の市場展望が開けてきたと言える。ただし、消費者レベルでのAR/VR体験者の数を増やすことには依然として課題が多く、ゲーム以外でのキラーコンテンツが多様なプラットフォームで展開されることが渇望される」
今回の発表はIDCが発行する「Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker」にその詳細を報告している。また、国内のVRヘッドマウント機器の動向については「2017年 国内VR機器市場動向:機会損失に苦しむハイエンドモデル市場と国内市場立ち上がりの遅れ」において詳細を報告しているので、興味がある人はこれらもぜひチェックしてみてほしい。
※IDCではシェアを「カンパニー」名で表記しているため、Oculusは親会社であるFacebookと表記されている。
※掲載グラフのソースは「IDC Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker, September 2017」。
●関連リンク
・IDC Worldwide Quarterly Augmented and Virtual Reality Headset Tracker(英語)
・2017年 国内VR機器市場動向:機会損失に苦しむハイエンドモデル市場と国内市場立ち上がりの遅れ(日本語)