投資会社Digi-CapitalがAR/VR市場予測 将来はモバイルARが市場を占めるもVRの成長は鈍化
4日、VR/ARやビデオゲーム、モバイルを中心に投資を行う投資銀行である英Digi-Capitalはブログで2016年から2021年のAR/VR市場の予測記事を公開した。プレスリリースでは「ARKit/ARCoreの後のAR/VR市場では、モバイルAR市場の成長は伸びるもVR市場の成長は鈍化する」としている。
Digi-Capitalは記事の冒頭に予想を5つ挙げている。
1.将来はモバイルARがAR/VR市場のほとんどを占める
2.スマートグラス市場の成長は2021年以降の10年間に進む
3.VR市場にモバイルAR市場がライバルとして立ちはだかり、モバイルAR市場によってVR市場のポテンシャルは減少する
4.PCや家庭用ゲーム機、スタンドアロンなどのハイエンドVR市場は第二世代のスタンドアロンVRHMDが2019年~2020年にリリースされるまで伸び悩むかもしれない
5.スマートフォンのメーカーや開発者はモバイルARに移行しつつあるため、モバイルVRが縮小している
これら5つの予想を組み合わせると、AR市場は大きくなるがVR市場の成長は鈍化するという結論になる。これはDigi-Capitalの今までの分析を覆すものであり、同社も驚いているとしている。
AR/VR市場のハードウェア別利益
2021年には、ハイエンドVRとモバイルVR、スマートグラスのインストールベースは各プラットフォームごとに数千万、合計で1億で、モバイルARのインストールベースは30億を超える。これは、モバイルARのインストールベースはすべてのAR/VRデバイスに比べると25倍以上となる。
また、モバイルARは2021年時点でAR/VR市場の2/3を占める。モバイルAR市場はソフトウェアにより、現在のモバイル市場のような比較的低いARPU(ユーザー一人当たりの収入)を持つ広大なユーザーベースを持つようになる。ハイエンドVRやモバイルVR、スマートグラスはハードウェアの販売によりARPUは高くなるが、モバイルARと比べてインストールベースがはるかに小さいのでソフトウェアなどの非ハードウェア分野が伸び悩む。
AR/VR市場のジャンル別収益
2021年のAR/VR市場ではeコマースが最大の収入源となる可能性がある。リフォーム仲介のHouzzはすでにモバイルARを使用して11倍の売上を出しており、モバイルARのeコマースはAmazonやeBay、アリババなどの支配的なポジションを固めている。その他のジャンルでは、コンシューマ向けスマートグラスと第二世代のスタンドアロン型ハイエンドVRHMDによるハードウェアの売上、広告費、ゲームの次に非ゲームアプリと並ぶ。エンタープライズ・B2Bの収益は、ARが中心となり、ビデオおよびテーマパークなどロケーションベースの収入ははるかに低いレベルとなる。
また、AppleやGoogleによって標準的なスマートフォンやタブレットにARKitやARCoreなどのモバイルAR機能が搭載されるようになるため、携帯電話販売会社はモバイルAR関連の価格設定を実施する能力を失う。同様に、モバイルARハードウェアの収益はGoogleのTango規格の終了やiPhone Xに後方の深度センサーが搭載されていないことによってモバイルARハードウェアの収益は除外されている。
AR/VR市場の地域別利益
現在のモバイル市場と同じように、AR/VR市場の収益は中国、日本、韓国を中心としたアジアが大部分を占めるようになる。これは、北米と欧州を合わせた市場規模とほぼ等しい。また、初期のスマートグラス市場はモバイルARの発展として非透過型スマートグラスから成長し、スマートグラス市場もモバイルARと同様にアジアが中心になるとみている。
スマートグラスに関する予想
コンシューマ用スマートグラスを普及させるための5つの課題である「市場の主役となるデバイス」「終日稼働するバッテリー」「携帯電話回線との接続」「アプリのエコシステム」「通信会社の補助金」により、エンタープライズ用スマートグラスの販売台数は2019年を通して数十万台にとどまる可能性がある。
また、Appleが2020年にiPhoneの周辺機器として不透過型スマートグラスを発売する可能性があり、それがコンシューマ用スマートガラス市場の触媒となりうる。また、サムスンと他の主要な電話メーカーがそれに続いてスマートグラスに参入する。
Digi-Capitalによるより詳細な情報を求めたい場合は、公式ブログの記事やDigi-Capitalによる156ページに及ぶ第四四半期のAR/VRレポート(英語)を購入することができる。
(TEXT by ぱソんこ)
●関連リンク
・Two-speed AR/VR market after ARKit/ARCore (AR upgrade, VR downgrade)(ブログ記事)
・Digi-Capitalのレポート