360cam出荷は「2016年1月」から! その魅力をGiroptic・オリエCEOに直撃インタビュー
Oculus RiftやGear VRの使い方として、PANORAでも以前からプッシュしているのが実写映像の視聴だ。VRゴーグルをかぶって写真や映像をぐるりと見回すことで、過去の瞬間にタイムスリップしたような錯覚を覚えるのが非常に面白い。
そんな360度写真/映像を提供してくれるカメラにおいて、ここ数ヵ月でリコーの「THETA S」やコダックの「SP360 4K」といった画質や使い勝手が向上した新機種が登場して、にわかにジャンルが盛り上がっている(関連記事)。
さらに界隈をヒートアップさせてくれそうなのが、仏Giroptic(ジャイロプティック)の「360cam」だ。本体に内蔵された3つのレンズで360×300度の範囲をカバーし、本体のボタンを押すだけで2K(2048×1024ドット)/30fps/MPEG-4(h.264)の動画、または4K(4096×2048ドット)/JPEGの写真が撮影できる。
本体サイズは幅7×奥行き7×高さ7.1cm、重量は180g。プレオーダー価格は499ドル。底部のヒートシンクは取り外しが可能。別売の電球ソケットにつなげる「Lightbulb Adaptor」、Ethernet経由でビデオストリーミングできる「Ethernet (POE) Video Streaming Base」といったオプションに付け替えることで、利用シーンに合わせて使える。
ポイントとしては、まずハードウェアで映像を統合(スティッチング)してくれるのが便利だ。360度映像を撮るシステムでは、2つ以上のレンズで撮った複数の映像をつなげる作業が必要になるが、その際、マシンパワーが必要になるため、たいていはパソコンを使うことになる。一方、360camなら、内蔵チップで処理して最初から360×300度の映像を吐き出してくれる。水深10mで30分耐えられる防水性能や、360度映像のストリーミング配信といった機能も魅力的だ。
クラウドファンディングサービスの「KickStarter」にて2014年5月に出資を募り始め、7月に3916人の支援者から目標の9倍以上となる141万9069ドル(約1.7億円)を集めてプロジェクトを成立させた。そして今年3月に一部のユーザーに開発版の出荷が始まったが、その後の音沙汰がなく「俺の360camはいつ来るのだろう……」と痺れを切らしていた方も多いはず。
そんな折、来日していたGiropticのCEO、RICHARD OLLIER(リチャード・オリエ)氏にインタビューする機会を得たので、2回にわけて掲載していこう。初回は360camの魅力について語ってもらった(敬称略)。
PCなしでストリーミング配信までできちゃう!
——単刀直入に聞きます! 出荷時期はいつでしょうか!?
オリエ 現時点では、2016年1月に予約分から出荷する予定です。KickStarterぶんとプレオーダーを合わせると、6000以上もの注文が世界中から来ました。KickStarterの際、北米向けにPRしただけなのですが、自然に欧州に波及して、さらにアジアやブラジルなどに広まった形です。ユーザーは、VR開発者やドローンユーザー、GoProユーザーなどですね。
出荷を待つ360camたち。
注文状況のヒートマップ。アジアでは「日本と香港、シンガポール、あとはタイが少し」だという。
——かなり期待されている感じですね。KickStarterはベンチャーも多いですが、Giropticはどういった企業ですか?
オリエ 起業したのは2008年で、最初は最初は不動産屋向けに、ボタンひとつで360度写真を撮れるカメラ用ミラーボールアダプターをつくっていました。2011年には、3つの魚眼レンズとKolorのソフトを組み込んで、ボタンひとつで360度写真を撮れる「Girocam」(ジャイロカム)も発売しました。
——Girocam!
オリエ 360camは、弊社のプロダクトで4世代目となります。本社はフランス北部のリールで、アメリカのサンフランシスコにもオフィスがあります。今は31人が働いていますが、ほとんどがオタクですね(笑)。
——(笑)
社内の様子。全然オタク部屋っぽくないのはなぜなのか。
ハードのラボまでおしゃれだ。
Giropticの概要。社員数などは、資料作成時より変わっているとのこと。
オリエ 電子工学の専門家で、みんな存在しないものをつくりたいという思いを持っています。自社で担っているのは、光学、ファームウェア、回路などの設計、工業デザイン。リアルタイムスティッチングなど、いくつかの特許も持っています。
——360camは、やはりリアルタイムスティッチングがいいですよね。
オリエ リアルタイムスティッチングは、非常に重要です。今、一番人気のカメラといえば、スマートフォンですよね。その理由はやっぱりリアルタイムで撮って、ネットにシェアできるから。そのニーズは360度の写真と映像でも同じ。
こんな感じでスマートフォンから撮影し、すぐにダウンロードしてFacebookやInstagramなどいろいろなプラットフォームでシェアできます。端末のジャイロセンサーを使ってスマートフォンをいろいろな方向に向けることで360度写真を見たり、VRゴーグル用にサイドバイサイド(二眼)表示にすることも可能です。
スマホアプリ。HRDやセルフシャッターなどの機能も用意する。
サクっと撮影してくれた。
ジャイロセンサーによって本体の方向を検知しており、逆さまに持つとLEDの表示もきちんと切り替わる。
オリエ さらに360camでは、任意のストリーミングサーバーを指定しておくことで、無線LANを経由して、直接カメラからインターネットに映像を送ることができます。
——なんとPCなしでストリーミング配信まで!! でも連続稼働させると本体がアツくなりそうですが。
オリエ そんなことないですよ。砂漠とかに持っていくと、どうなるかわからないけどね(笑)
——屋外というと、6台のGoProを組み合わせた360度撮影システムでは、片方に太陽があると露出やホワイトバランスが合わずにスティッチング後の映像に違和感が出ることも多いです。その点は360camではどう処理していますか?
オリエ 3つのデータをスティッチングしたあとに、イメージ全体をチェックして露出やホワイトバランスを調節する感じです。360camはレンズが3つしかないので、多くの場合は1つのレンズに太陽が収まります。そのレンズでホワイトバランスを固定します。
——GoProでは白飛びも起こりがちですが、360camのダイナミックレンジ(明るさの範囲)はGoProに比べて広いのでしょうか?
オリエ ビデオのダイナミックレンジは難しい。360camは499ドルの製品で、そんなにサイズが大きくないスマートフォンなどと同じセンサーが3つ入っています。画質にこだわるプロ向けというよりは、価格を下げて一般の人に楽しんでほしい意図です。
とはいえ必要十分な機能は備えています。先ほどの無線LANに加えて、GPSも付いてますし、ジャイロスコープも入ってて360camの向きも取れる。ストリーミング配信の際は、アダプターをEthernetのものに切り替えれば、PoEでLANケーブルから電源供給できます。
——監視カメラにも向いてそうですね。
オリエ 無線LANが使える環境なら、Lightbulb Adaptorに付け替えて吊るせますし。あとは水中の映像をきちんとスティッチングできるように、専用カバーも用意しました。
底部の3箇所をはずして……。
カポッと付け替えられる。
水中キャップ。
こんな感じでピントを補正してくれる。
——ドローン向けアダプターを作る予定はありますか?
オリエ 1/4インチの三脚穴があるので、互換性があるドローンに付けられます。フランスのドローン企業がつくった「HEXO+」向けには特別なマウントをつくりました。
*後編は明日掲載予定。
(聞き手/広田稔)
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