元DeNA、グリーの海外担当・ミール氏に聞く「ここが変だよ、日本コンテンツの海外進出」

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日本のVR開発者の中には、SteamやOculus Storeを通じて自分のコンテンツを海外に向けて売りたいと考えいてる方も多いはず。一方で、言葉を英語などに置き換えて、オンラインストアに出しておけば売れてくれる……というほど話はカンタンではない。

海外のキーマンやメディアに連絡を取って、自分の作品をアピールするためにはどうすればいいのか。展示会でより効率的に多くのお客を集めるためにはどんな手法があるのか。「STYLY」(スタイリー)を手がけるスタートアップ企業、Psychic VR Lab(サイキックVRラボ)にてCAO(Chief Alliance Officer)を務めるMir Nausharwan(ミール・ノシェルワン)氏にインタビューした。

 
●ミール氏略歴
東京生まれ。インドのパンジャブ大学にてビジネス・コマースを専攻。6つの言語を話せるスキルを活かし、DeNAやグリーなどで6年ほど海外交渉を担当してきた。今年8月にPsychic Labに合流してCAOに就任。その後、Unite Austin、Oculus Connect 4、SVVR、Kelidscopeといった海外イベントなどで講演するなど、精力的に活動する。

 
 

海外でも日本のIPへの関心は高い

──そもそも海外から見て、日本のコンテンツは興味を持たれているのでしょうか?

 
ミール氏 興味はあると思います。今回、Oculus Connect 4にて「Building Global Communities」というパネルディスカッションに参加した際、ドイツのベルリンでVRBASEという会社で社長をやっているSara Lisa Voglさんと話したのですが、ヨーロッパだと日本のコンテンツの存在感がないと。

 
──まったくない?

 
ミール氏 同じIP(知的財産)でも、日本向けのものと、世界に向いているものに分けられて、メイドカフェやアイドルゲームなどは日本の文化ですよね。でもマリオやソニック、ポケモン、進撃の巨人とかは世界中に売れるポテンシャルがあるIPなのに、どうしてもっと海外で広まってないのか。それは言語や文化の壁があって、欲しいけどアプローチしづらいという話が出ていました。

例えば、「VR ZONE SHINJYUKU」の「マリオカート アーケードグランプリ VR」には全員が興味を持っていて、同じものをヨーロッパにつくりたいと考えたときに、コンタクトを取る先が難しい。任天堂に直で行っても、そう簡単に渡してもらえないでしょう。パネルディスカッション後にもメールで何度かやりとりしましたが、特に日本のIPを持っている企業は海外からの関心が高いんだと感じました。ただ、そこで日本企業が自社で展開していくのは間違いだと思います。

 
──といわれると?

 
ミール氏 以前、アメリカにある日本企業のアミューズメント施設に行ったのですが、AKBのゾンビゲーム(「セーラーゾンビ」)とか置いてあるんですよね。これは絶対に現地の人はわからない。

 
──うーん、アメリカの人だとAKBは知らなそうですね。

 
ミール氏 そこそこ大きいホールでも10人前後しかお客がいなくて、「鉄拳」や「ストリートファイター」とかの2Dゲームばかり遊んでいました。そこに「VR ZONE」と名付けられたコーナーがあって、これは新宿にあるVR ZONEのゲームが置いてあるのかなと思ったら、VIVEでSteamのゲームが遊べるだけでした。しかも15分で20ドル。

 
──それは割高に感じるかも。

 
ミール氏 普通にベースステーションが2つ立ってて、これはびっくりしたなと。事前に見ていたウェブサイトでは大体的に宣伝していたので、いろいろなゲームが置いてあるのかと思ったらそうではなかった。

それは現地の感覚をわかってないので、多分パートナーを見つけた方がいい。特に新しい市場のVRはパートナーを見つけるのが重要です。昔の知名度のあるゲームなら、ある程度コアなユーザーがわかりそうですが、VRは本当にどこに当たるかすらまったくわからないので、自分たちで海外展開したらそりゃ失敗するよなって。新しい市場を海外で開拓するときは、最初は現地のプレイヤーが知ってるノウハウを取った方がいい。そこで市場発展したら自分でチャレンジするのもアリかもしれませんが。

 
 

臆することなく交渉し続けるべし

──逆に言うと日本の開発者は、どうやって海外のパートナーを見つければいいのでしょうか?

 
ミール氏 そこはひとつキーポイントで、日本人も海外展開は非常に難しいと思っていますよね。

 
──はい。

 
ミール氏 例えば、海外メディアにコンタクトを取るにはどうすればいいのか。VRだと「UploadVR」というウェブメディアがあって、一緒にセミナーをやって自分のプロダクトを紹介したいと考えたときにどうしますか?

 
──えーっと、とりあえずUploadさんのイベントに参加して、中の人を捕まえて仲良くなるとか?

 
ミール氏 でも海外はそんなに難しくない。Uploadさんの場合、オンラインから彼らのシェアオフィス見学を予約できるので、それで予約して現地に行って、こういうものがあるからセミナーやりませんかと持ちかけるだけ。向こうが「OK、やりましょう」といったら開催できるぐらいに簡単です。日本のVR開発者でも有名なOculus創業者のパルマー・ラッキーさんっていますよね。

 
──はい。

 
ミール氏 彼ぐらいに有名になると、日本人は「直接コンタクトを取ると嫌がられるんじゃないか」と思ってしまうかもしれませんが、私は普通に友達申請を送って、承認をもらって話し始められる。

 
──自ら動いてアプローチすれば意外と受けてくれる感じでしょうか?

 
ミール氏 意外と受けてくれますよ。例えば、Unityの本社の人と仲良くなりたいとします。Unityには1500人ほどの社員がいるので、1人にメッセージを送って「ごめん、今は対応できない、忙しい」と返されても残り1499人いて、コンタクトを取り続ければ誰かは絶対に相手をしてくれる。

日本人の問題は「相手に申し訳ない」や「他人だから知らない」と思ってしまうところにあります。日本だと大手企業の人にイベントでいきなり挨拶して「すいません、私Psychic VR Labの人です。御社のIPを使わせてもらえませんか」といっても相手にしないですよね。だって知らない人だし、誰かの紹介じゃないし。そもそも日本だと病院も紹介だったりしますよね。なんで病院が病院を紹介するの。直接診てくれ!

 
──確かに「ここで治してくれよ」って感じですね(笑)

 
ミール氏 日本って段階を踏んでいきますよね。あいさつ回りから始まって、担当者と仲良くなって、ちょっと飲み会に誘って、そこから本当に思ってることを言う。

でもアメリカではいきなり本当のことを言っちゃうんです。イベントでも普通に「Hello」「How are you?」「What’s doing」みたいに話を始めて、自分と製品を紹介して「これどういうことか教えて」「いいよ」みたいになって本社行くことも普通にあります。だから全然問題ない。相手がInterestingと思っていたら、じゃあ今から始めよう。Interestingじゃなかったら、それぞれ前に進みましょうって。

 
──それはスゴくわかりやすいですね。そして確かにIPを交渉するために日本の大手企業にいきなり本音をいうと、ちょっと引いてしまうかもしれません。

 
ミール氏 引いちゃいますね。

 

 
 

展示会の説明員は、人種や年齢がカギ

 
ミール氏 海外の展示会でも日本企業は自分たちでやろうとしすぎていると思います。過去に出展したイベントでも、別の企業が自分たちより多い人員と4倍のスペースのブースを出していましたが、あまり人を集められていなかった。なぜだと思いますか?

 
──えっ、なぜですか? 展示に魅力がなかったとか?

 
ミール氏 それは説明する人が全員日本人だったからです。うちのブースでは、インド人の私、日本人、韓国人という3人です。

 
──ああ……。逆に日本のイベントで説明員が全員海外の人だったときに感じる心の壁みたいなものですね。

 
ミール氏 そう。アメリカやインド、シンガポールとかはいろいろな民族、いろいろな宗教、いろいろな言語が集まっている国なんです。そうした場で同じ民族の人たちだけいたら、それだけで壁ができてしまう。日本でも全員インド人のブースがあったら入りにくいですよね。

 
──確かに日本人が1人いてくれると話かけやすいですね。

 
ミール氏 できれば白人、黒人、黄色人といると、グローバル感あるので壁を感じにくいです。あとは全員が浴衣を着てたりするのも壁をつくってしまう原因です。

 
──それは目立つし、フォトジェニックだから写真は撮られて広まるんじゃないでしょうか。

 
ミール氏 撮ろうと思うかもしれませんが、営業的に言ったら壁になってしまう。そしてスタッフ全員が30、40代だったというのもあまりよくないなと思いました。GoogleやMicrosoftもそうですが、展示会では30歳以下とかどこも若いスタッフを雇うんです。やっぱり多くの人は若い人と話したいし、その方が楽しい。もちろん服装や、そもそも言葉がしゃべれるかどうかも重要です。

あとは営業の進め方ですね。日本では「何やってるんですか?」と聞くと、まず自分の製品を説明しますよね?「弊社はこうしたセキュリティーサービスをつくっていて御社のこれを守ります」みたいな。海外では最初、挨拶から始まって、そこから「君はUnityを使ったことありますか?」って逆に質問を投げます。そこで向こうが「あ、使ったことありますよ」って言うと、「That’s perfect! I have a good solution for you」とか。

 
──なるほど。

 
ミール氏 だから「Hello, How are you」って挨拶したら、いきなり自分の会社のことだけ言われて、友達としてもつながれないし、この人はなんだろうみたいな。説明員も全員30代以上の日本人で、服装も日本。英語も日本人英語で、営業スタイルも資料も日本人向け。それで効果的にアピールするのは、ちょっと難しいですね。

 
──手厳しいですが、確かにその通りですね。

 
ミール氏 あともうひとつプラスで、できればアメリカにシェアオフィスでもいいので住所を持つことだと思います。海外の人はTokyoぐらいはギリギリわかるかもしれませんが、資料に日本の住所を書かれてもピンとこない。日本企業でも、「うちらはスリランカの会社で日本支社がないけど、一緒に仕事しませんか?」と持ちかけられたら、ちょっと不安を感じませんか? そこの信頼性も大きい。

ロサンゼルスやサンフランシスコでは、シェアオフィスが月5、6万円で簡単に借りられて、経費とかも含めても月額10万円とかで運用できます。それはあった方が一番信用が増すと思います。あとは現地の人材が必要になってくるのですが、また機会がありましたら「海外の人をどう採用して使うべきか」という話もさせてください。

今、自分は様々な会社の海外展開、海外の会社とのパートナーシップ、ブーツ手伝い、講演会の手伝い、海外のローコライズをしていますので、なにか相談あれば直接FacebookやLinkedinに連絡してください。外国人だからといって、気をつかわないでくださいね。軽めな相談もなにかあればSNSに連絡をお願いします。どんどん日本の企業が海外展開していってほしいです。

 
 
(Reported by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
ミール・ノシェルワン氏(Linkedin)
ミール・ノシェルワン氏(Facebook)
Psychic VR Lab

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