Amazon Echoって何がスゴい? 英語版の先行利用で感じた「声で操作」が日常に溶け込む可能性
日本ではここ1ヵ月ほどLINEの「Clova WAVE」やGoogleの「Home」などのスマートスピーカーが話題だ。さらに8日にはアマゾンジャパンが「Amazo Echo」シリーズ3製品を発表するなど、このジャンルが過熱してきている(プレスリリース)。
スマートスピーカーについては、あまり詳しくない人にとっては「ふーん、ただの声で操作できるスピーカーでしょ?」と誤解されがちだが、コンピューターの新しい形として非常に大きな可能性を秘めている。英語版のAmazon Echoをゲットして米国出張時に使ってきた筆者が、その実感も含めてまとめていこう。
ヒット率の高さが気持ちいい
筆者がAmazon Echoを購入したのは今年1月、CES出張の際だ。取材の合間をぬって家電量販店のBest Buyにおもむき、棚に残っていたラスト1つをゲットできた。
それから何度か米国出張のときに持って使っているが、とにかく認識精度のよさに驚いている。Amazon Echoでは、「Alexa」と呼びかけると円筒上部の青いライトがくるりと反応して待機状態になる。そこかから例えば「What’s the weather in Tokyo」といった具合に特定の言葉を話しかけることで、クラウド上の音声サービス「Alexa」にアクセスして天気を教えてくれたりする。
この声で指示のヒット率がかなり高いのだ。
当たり前だが、英語版のEchoは英語しか受け付けてくれない。残念なことに筆者は英語がまったく得意ではなく、かなり「日本人英語」な感じなのだが、それでも失敗が割と少ない。そして音声入力デバイスにとっては、この失敗しにくいということがユーザー体験を大きく左右する。例えば日常生活でも、押してもたまに反応しないリモコンというのは非常にストレスだ。10分の1の確率でクリックが失敗するマウスがあったら、だいぶ使う気が萎えてしまうはず。
iPhoneユーザーなら「Siri」を試して、「よく聞き取れませんでした」と言われた経験も多いはず。VR関連で言えば「HoloLens」で採用している「Cortana」がかなりハードルが高く、日本人が声で操作しようとすると大抵失敗する。特に「Select」は高難度なので、ゴーグルをかぶって「セレクト!セレクト!セレクト!」と言い続けることになるが、はたからその姿を見るとかなり謎だ。
さらに「Far-Field voice recognition」技術、つまり少し離れた場所から呼びかけてもきちんと反応してくれる点も素晴らしい。今回、日本で発表されたモデルも7つのマイクが仕込まれており、特定方向の音を認識するビームフォーミング、ノイズキャンセレーション、遠隔音声認識などの技術が含まれている。
新ジャンルのデバイスというのは、目新しかったり提案してくれた用途が魅力的だったりしてユーザーが飛びついても、少しでも面倒なことがあると往往にして使わなくなるものだ。しかし、Echoでは「気持ちよく指示できる」という1点で、この最初のハードルを超えてくれた。
余談だが、英語版は「アルェクサ」と「レ」のところにアクセントを置かないと反応してくれなかったが、ネットのニュースを調べる限りで日本版は「アレクサ」とアクセントなしの日本人発音でも反応してくれそうだ。筆者は(今回の発表会の存在を知らなかったため)まだ実機に触れていないものの、日本語版もその精度に期待できそうだ。あと、「Alexa」と呼びかけてくるっと回るライトが可愛いですね。
コンピューターの未来がここにある
そうしたきちんと操作できるという上で、日常生活で便利なシチュエーションがいくつもあった。
筆者で言えば、まず音楽だ。
コアな音楽ファンでなくても、家に帰ってきて「なんか疲れたし、ちょっと音楽でも聴きたいなー」と考える人も多いはず。そうした際、スピーカーのそばまで行かずに、荷物を置いたり着替えたりしながら声で指示できるのはとても楽だ。
本来なら今回、日本でも発表されたAmazonの音楽聴き放題サービスに加入して、アーティスト名やジャンルなどを呼びかけて気分に合った曲をかけてもらえるというのがベストなのだが、筆者は米Amazon.comで契約していないため試せなかった。それでも「Alexa, Connect my Phone」の指示で、事前にBluetoothでベアリングしておいた手元のiPhoneにつないで、YouTubeやniconicoなどの動画をきれいな音で聴けるというのは非常に大きな価値だった。
声で操作できるキッチンタイマーとしても便利だ。
カップラーメンにお湯を入れて、「Alexa, Set a timer for 3 minutes」と声で指示することで、時間が来たら「ポポポピー」とアラートを鳴らしてくれる。アラートを止めるときも「Alexa, Stop」でOK。電子レンジの温めが終わったのに、別件で手が離せなくて延々と警告音が鳴っていて不快……ということもない。出張中のカップラーメンぐらいなら手でタイマーをセットできるが、これが料理していて手が濡れているときなどはかなり重宝する。
自分では試せていないが、HueのようにAlexaと連動できるスマートLED電球も便利そうだ。離れた場所にあるスイッチで電気をつけたいんだけど寒くて布団から出たくない……なんてシチュエーションではかなり役立ってくれる。
日常生活には、声で操作した方が便利なシチュエーションが確実に存在していて、そうしたときにきっちり仕事をしてくれるのがEchoなのだ。
声で操作するのが恥ずかしいという問題も、人間現金なもので、自分が楽できると分かれば意外と使ってしまうものだ。最近ではポケットにスマートフォンを入れながら、ヘッドホンのマイクを使ってハンズフリーで通話しながら歩く人も東京ではよく見るが、同じことを10年前にやったらだいぶ変な人扱いされるはずだ。
スマートスピーカーは、デスクトップ、ノート、タブレット、スマートフォンと今なお進化し続ける、コンピューターの最新形態と言えるだろう。実はVRゴーグルも3Dを3Dのまま見られるという出力側に秀でたコンピューターなのだが、スマートスピーカーは入力側で革新を起こしたといえる。
そしてコンピューターは、「ソフトがなければただの箱」だ。
Amazon Echoにもアプリのプラットフォームが用意されていて、機能をどんどん拡張していける。すでに米国では愛用者も多く、今後、周辺機器をからめて世界中の人々の生活をどこまで変えていけるのかという段階だ。そしてスピーカーとして売られるのでなく、家電自体が当たり前に「Alexa Ready」になっていくと、さらに状況が大きく変わっていくだろう。
アプリやハードの開発・ビジネスに携わる人は、ぜひこの上陸したタイミングで予約して触っておいて、「金脈」になるかどうかを判断しておくといいだろう。
(TEXT by Minoru Hirota)
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