「ファンタジーの世界へ行ってみたい!」の夢をかなえる!? Skyrim VRゲームレビュー
「The Elder Scrolls V: Skyrim」といえば、RPG史上に残る大作ゲームだ。ゲーマーであれば、その名前を知っている人は多いことだろう。
「Fallout 4」などでも知られるベセスダ・ソフトワークスが開発した本作は、「The Elder Scrolls IV: オブリビオン」の続編として、2011年11月11日にXbox 360版、プレイステーション3版、Microsoft Windows版を世界で初めて発売。
日本語版は同年12月8日発売で、発売から2日間で約340万本を売り上げ、日本ゲーム大賞2012の年間作品部門優秀賞も受賞している。
自由度の高さが魅力
そんなSkyrimの魅力といえば、圧倒的な自由度の高さだろう。
重厚なファンタジー世界はオープンワールドになっており、プレイヤーがどこに向かおうと自由。各地のダンジョンを探索しても良いし、行く先々にある多様なクエストを進行してもいい。プレイヤーの行動次第では、犯罪者として懸賞金をかけられたり、人狼や吸血鬼になることもある。
キャラクター育成のシステムも独特だ。キャラクターには、18種類の「スキル」が存在し、プレイヤーが取った行動によってスキルのレベルが上昇する。
例えば片手剣で繰り返し戦っていると、片手武器の経験値が蓄積され、一定値に達すると、片手武器のスキルレベルが上昇する。これにより、片手武器で攻撃した際のダメージが上がるなどの効果がある。
スキルにはアイテム売買で上昇する話術や、弓の使用で上昇する弓術などもあり、プレイヤーの様々な行動がスキル上昇につながる。
この18種のスキルの合計値が一定に達すると、キャラクターの「レベル」があがる。このレベルは、一つのスキルを徹底して上げ続けても、全てのスキルを満遍なく上げても上昇する。
スキルレベルが「どの技術に精通しているか」の指標となるのに対し、レベルは、「キャラクターの総合的な強さ」を表すものということだ。
skyrimでは、フィールドやダンジョンの敵の強さがこのレベルによって調整される。つまり、話術などの戦闘で使えないスキルだけをあげてキャラクターレベルが上がってしまうと、戦闘能力が低いのに敵だけが強くなっていくという事態が発生してしまう。
キャラクターの行動は、どのスキルを上げるかを考えつつ行わなければならない。
また、スキルの中にはさらに専門的な能力がある。これはキャラクターレベルアップ時に得られるポイントを使って習得するもので、例えば片手武器スキル内の「二連疾風」という能力は、武器を二刀流装備した際の攻撃速度が上がるという能力だ。
こちらの方が他のゲームで言う「スキル」の概念に近いかもしれない。能力は普段の行動によって勝手に習得するということはないので、ある程度望んだものを取れる。
少々複雑ではあるが、このシステムによりキャラクターのロールプレイに多様性を持たせているのである。
また、Skyrimというゲームの特徴として忘れてはならないのが、豊富なMODの存在である。
MODとは、ゲームのグラフィックなど様々なデータを改変するプログラムやファイルの事。MODを導入すると、そのゲームの基本システムを利用しつつ、グラフィックの変更、アイテムの追加、新たなシナリオの追加など、様々なことができる。
このMODは、主に有志(そのゲームのユーザー)によって作成される。そのため、MOD製作が盛んなゲームでは、多種多様なコンセプトのMODが作られる。「Minecraft」などはその良い例だろう。
SkyrimもそうしたMOD製作が盛んなゲームであり、非常に多くの種類のMODが存在するのである。
もともとMOD文化は、海外のPCゲームを中心に広まったものであり、Skyrimも当初はPC版でしかMODの導入は行えなかった。しかし、2016年に発売した「The Elder Scrolls V: Skyrim Special Edition」では、コンシューマー版でもMODの導入が可能となっている。
こうした拡張性の高さも、自由度の一部といえる。
さて、そんなSkyrim、12月14日に「The Elder Scrolls V: Skyrim VR」として、Play Station VR版が発売する。
長々とゲームについて語っておきながら申し訳ないが、実は筆者は、今までSkyrimを自分でプレイしたことはない。他人のプレイを見たことはあるのだが、Skyrimの世界を自分で冒険したことはないのである。
そのため、このゲームにおける知識には少々偏りがある。世界観と大体のゲーム流れ、一部のクエストのシナリオ、あとは膝に矢を受けて冒険者を引退した衛兵がたくさんいる程度の事しか知らない。
前々からプレイしたいと思っていた本作だが、VR版がでる今こそプレイするべき!と思い、ついにSkyrimの世界へ足を踏み入れることとなった。
今回は、そんなVRでのSkyrim初体験の様子をレビューしていきたい。
360°見渡す限りSkyrimの世界!
PS VRを装着してゲームを起動するとタイトル画面へ。
では早速「ニューゲーム」でゲームをスタートしようと思ったところ、タイトル画面に「VR設定」の文字を発見。確認してみると、ワイヤレスコントローラーかモーションコントローラーか選択するメニューのようだ。今回はDUALSHOCK 4を使うので、ワイヤレスコントローラーを選択。
メニューから「ニューゲーム」を選択し、いざSkyrimの世界へ。
ゲームが始まると、まず目に飛び込んで切るのは霧の立ち込める森、金髪の男性と、馬を操る御者。自分が馬車に乗っていることが分かる。
視界いっぱいの異世界で、顔を動かせば目の前にいる同乗者たち。さすがVR。オープニングから臨場感たっぷりで、いやが上にも今後への期待が高まる。
とりあえず最初にゲームの設定。難易度を「VERY EASY」から「NOMAL」に、セリフなどの字幕の表示を「オン」にする。
設定画面には「VR」という専用の項目があり、開くと上の画面になる。この画面にあるモード変更というのは、右スティックで視点を操作する際のモードである。
「スナップ」は、スティックを倒した際に一定の角度ごとに動くモードで、角度の調整も可能。もう一つ「スムーズ」というモードがあり、こちらはスティックを倒してる間、視点をシームレスに動かし続けるというもので、従来のゲームでよくあるモードだ。
VRの設定は実際にプレイしながらでないと分からなそうなので、ここはデフォルト設定のままにしておいた。
それではチュートリアルを進めていこう。
現在この地では内乱が起こってており、帝国軍と反乱軍「ストームクローク」が戦っている。主人公は反乱軍の一員と間違われ、帝国軍に捕まっている状況だ。
現在、他の囚人たちと一緒に、馬車でどこかに運ばれている。馬車の中では動けないので、NPCたちの会話を聞きながら到着を待つことになる。
会話中の字幕はこんな感じで表示される。割と大きく表示されているように見えるが、VR視点では視野が広いため、視界全体に占める字幕の大きさはそれほど大きくはない。個人差はあるだろうが、筆者は邪魔には感じなかった。
ちなみにこの字幕は、視点のデフォルト位置、つまりPSカメラを真正面に見た状態での視点中央下部に表示される。そのため、首を動かしてキョロキョロすると字幕はついてこない。ただし、PSカメラを真正面に見た状態で、右スティックで視点を動かせば、字幕を視界内に捕らえながら周りを見渡せる。
しばらく馬車に揺られていくと、とある村に到着する。ここでキャラクタークリエイトの時間。
今回はこんなキャラクターを制作。ノルドという種族の男性キャラだ。
今作は常時FPS視点なので、自分のキャラクターを見る機会がほとんどないというのが、キャラクリにこだわる人には少し悲しいところである。
チュートリアルでも大迫力の演出!
キャラを作り終えると、主人公は処刑されるという話になる。主人公は反乱軍の一員ではないのだが、おかまいなしのようだ。
断頭台に座らせられると処刑人が目の前に。VRで見ると実際に目の前に立っている感じがしてなかなかの怖さ。せっかく作ったキャラクターなのにもうお別れか……。
処刑人の斧が振りかぶられる。するとその時、空に何かの影が。
ここでドラゴンが襲来。周囲は大混乱に陥り、主人公はそれに乗じて帝国軍から逃亡を図る。ここからは操作方法の説明を受けつつ、崩壊した村の中を駆け抜けていく。
視界全体に燃え盛る村の景色は、移動しながらでも自然と目に入ってくる。これにより、ドラゴンが目の前で暴れる演出も、より臨場感のあるものになっている。
ドラゴンの襲撃を掻い潜りながら進んでいくと、その先で2人のNPCのどちらかを選んで着いていくというシーンになる。帝国軍の兵士「ハドバル」と、反乱軍ストームクロークの「レイロフ」から選択する。
と、少しトラブルが発生。スクリーンショット撮影をきっかけになぜか左スティックでキャラクターの移動ができなくなってしまった。対処法を探し、意図せずゲームを放置していると……
なんとドラゴンが目の前に来た!
画像では伝わり辛いかもしれないが、VRだとこの迫力はかなりのもの。これは興奮せざるを得ない。
この後ドラゴンは飛び去ってしまうが、さらにしばらく待っていると、またしても目の前にドラゴンが飛来してきた。
今度は先ほどよりもさらに近く、手を伸ばせば触れそうな位置にいる。しかも、謎の言語で話しかけてくる。あまりの迫力に若干鼓動が早くなるくらいだった。
たまたま放置していただけだったのだが、これは良いものが見られた。普通にプレイしていると通り過ぎてしまうため、これからSkyrim VRをプレイする人は、ぜひともこのシーンで少し待機してみてほしい。
さて、なんとかキャラクターが動くようになったので、気を取り直してチュートリアルを進行していこう。今回はストームクロークのレイロフと行動することにする。
彼についていくと、武器(片手斧)と防具を拾うことができる。その後帝国軍の兵士が襲って来て、ここで初めての戦闘となる。
R2での攻撃、L2でのガードを使って敵と戦う。ロックオンなどはなく、攻撃方向は視界中央のクロスヘアを基準にしているが、近接武器の攻撃範囲が結構広く、移動しながら武器を振ることもできるので、攻撃が当てにくいということはなかった。
サクッと兵士を倒し終わると、なにやらかっこいい剣を持っていたので装備させてもらう。ついでに鎧も拝借して、先に進んでいく。
ちなみに、倒した敵の持ち物を調べるには、遺体をしっかりと視界中央に捉えないと調べるアイコンが表示されない。床に落ちているものや棚に置いてあるものも同様で、近づくだけでは取得することができないようになっている。
このように同じ棚にあるものでも、下の段と上の段、それぞれに視線を向けないと取得できない。この仕様によりアイテムを見逃しやすいので、注意深く周りを見渡していく必要がある。
敵を倒しつつ、先へ先へと進んでいく。人間だけでなく、道中には巨大な蜘蛛のモンスターも。
やはり人間よりも、モンスターの方がVR映えする。グロテスクな見た目が苦手な人もいるだろうが、こうしたファンタジーの怪物とVR視点で戦えるのもこのゲームの魅力だろう。
そのまましばらく進んでいき、ついに外へ脱出。帝国軍とドラゴンから何とか逃げ切れたようだ。
ここからはオープンワールドとなり、どこに行こうとも自由。いよいよ本当の冒険が始まる。というところで、今回のレビューはここまでとなる。次回はPS Moveを使いながら続きをレビューしていきたい。
モンスターの迫力、臨場感は抜群
さて、今回The Elder Scrolls V: Skyrim VRのチュートリアル部分をプレイしたが、VRによるイベント演出の迫力は特筆すべきものがある。巨大なモンスターなどと相対した時は、圧倒されること必至だろう。
戦闘時は、特に弓や魔法などで戦うプレイスタイルと相性が良さそうだ。近接戦闘では三人称視点の方がやりやすいと感じる人もいるかもしれないが、VR視点で目の前にいる敵と戦う臨場感を味わえるのはこの視点ならでは。
一つ気になったのは、小さな段差でも視点が上下するため、足場の悪いところや階段を走っていると、がくがくと視点が揺さぶられてしまう点だ。VRに弱い人は酔ってしまうかもしれない。
とはいえ、広大なファンタジー世界を、VR視点で体験できるこのゲームは非常に魅力的だ。
Skyrimは冒険や戦闘だけでなく、家を持ったり結婚したりと、この世界で「生活する」感覚を味わえるのが特徴のゲーム。VRはその生活にさらなる臨場感を持たせてくれる。
「『剣と魔法とドラゴン』の世界で暮らしてみたい!」と思ったことがある人は、ぜひこのゲームをプレイしてみてはいかがだろうか。
(TEXT by 高橋佑司)
●関連リンク
・The Elder Scrolls V: Skyrim
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