【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム 「VR映像が新しいシナプスを繋げている」
登嶋さんのことは以前紹介した事があったと思う。高齢者施設で働いていた時からVR画像で日本や世界の思い出の地や、行ってみたい場所を撮っては皆さんにみてもらっていたというあの方だ。施設の方々は、故郷や元気だった頃に行った場所をVRで見て涙すら流したという。
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その登嶋さんからお誘いを受け、東京大学の本郷キャンパスに伺った。
工学部に研究室を持つ檜山博士と共に登嶋さんがワークショップを開いていた。研究室には登嶋さんの他、生徒さん数人に年配の男女が数人。その年配のグループは元々はカメラ同好会。そこから、故日野原先生を中心に出来たFacebookで繋がろうという意識高い系の方々。今日は登嶋さんから360度カメラ(insta360)の詳しい使用方法を学んでいる。
こう言っては失礼かもしれないが、ボクよりさらに10歳20歳以上は先輩とお見受けする(ちょっと見はわからない)方々が、その日は遠隔で撮った映像をFacebook等のSNSに同時配信する方法などをレクチャーされていた。何十秒くらいのタイムラグがありますね~など手慣れた感じだ。
登嶋さんが撮って来たVR画像を見ているだけではなく、自分たちも外に出て様々なものを撮る側に回る。元気な高齢者がドンドン外に出る機会にもなる。檜山博士の研究室を一歩外に出れば、東大の広大な敷地。VR画像を試し撮りするにはうってつけである。そこにいる20代からたぶん80代近い方々、VRの専門家の方から素人までが生き生きと意見を交換している。その雰囲気だけでもボクの動きの悪い脳もいつもの1.5倍は動いていただろう。楽しくて、自分がやりたいと思うことには脳も自然とついていきたいと頑張るのであろう。
あ、そうそう登嶋さんや檜山博士はそういう研究をされるらしい。懐かしい画像や心に響く画像などが脳にもたらす影響。脳の中はみれないけれど、ボクは脳がビクビク動くのを実感するのだ。VR映像が新しいシナプスを繋げている。間違いない。
●著者紹介
撮影:石川正勝
神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。
●関連リンク
・朝日新聞デジタル 連載 コータリンは要介護5
・神足裕司Twitter
・登嶋健太Twitter
・夢を叶える福祉機器ittaki