【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム 世界を旅する施設の高齢者 編

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世界中を360度カメラで撮影して高齢者のみなさんに楽しんでいただくというプロジェクトを行っている登嶋健太さんにお話伺いました!

 

いつも「こんなのがあったらいいなあ」と思っていたものが実際にあると知ったら「やっぱりなあ」と「自分の考えもそうまんざら間違えたものじゃなかった」そう思うだろう。実際、今回お話を伺った登嶋健太さんの取り組みはいままでPANORAでも数回書いていた夢物語がもう実際あるというワクワクする内容だった。

と、いうかVRの世界がこの1,2年ですごい進化を遂げて、一般のボクたちの前に現れているということかもしれない。
VRの可能性に数年前から目をつけていた人々が世の中にニョキニョキ出てきている。

 

まずはメディア連載やアワードを受賞した登嶋さんの活動について伺いました。

 

登嶋さんは施設で働いていた。そこの利用者さんたちが「故郷のあの場所に行きたい」とか「元気だった頃に行った外国のあの風景をまたみたい」そんな話を聞いて、360度カメラを手にその場所に行ってその風景を撮ってきたそうだ。それをハコスコでみてもらった。するとそこにいる数人がその風景を見て話し始める。そこを見たいといっていた本人は「ここの横には桜の木があって」そんな話をし始める。すると違う人までそれについてのいろいろな話で盛り上がる。普段そんなに話さない人同士でもコミュニケーションの輪ができる。
最初は「思い出の地を見せてあげたい」そう思ってはじめたが、それにはたくさんの副産物があるようなのだ。そこに参加している人たちが生き生きしている。そう見えたそうだ。

 

そして撮影機材やフローのレクチャー。「神足さんもカメラマンやりませんか?」の声にテンション上がる神足さん! 「うむ、俺もやる!」の図。

 

それから登嶋さんは、クラウドファンディングで資金を集め世界中のいろいろな地のVR映像を撮り、施設の方々に〝旅〟をしてもらったという。自己資金もちだしでも「こんなところに行きたい」という要望にこたえた。いまでは高齢者の皆さんにもカメラを持っていってもらって、いろいろな地のVR映像を撮ってきてもらっているという。この場合、高性能のVR映像はあまり必要ではなかったそうだ。日本中、世界中をその人が、もしくはみんなでみられればよいわけだから。

元気のある方々は映像を撮る側に回り、自由に行けなくなった方はまだ行ったことのない地球の裏側にも行くことができる。VRで覗く風景は自分がそこに立った気持ちになれる。何回も言っているが自分の意思で右をみれば右の風景を、上を見れば空が、見られるのだ。こんなうれしいことはない。もちろん「いずれ行こう」という目標にもなる。

 

 

車椅子の上から世界旅行中の神足さん。登嶋さんが撮影したイースター島やモン・サン・ミッシェルなどを堪能した。

 

登嶋さんはこの取り組みで総務省が開催した「異能 vation ジェネレションアワード」で特別賞、 Business Digging Festival 「VRを使った身近なアイデアコンテスト」でゴールド賞を受賞した。そして東京大学でも教鞭をとる予定らしい。VRや映像などによって高齢者に与えるいろいろな影響を研究することになったそうだ。きっと脳のどこかで昔の慣れ親しんだ風景をVRでみたらツンとつながったり活発に動いたりすることは間違えないだろう。ボクだったらそれが生きる気力になってなると思う。これからの活動も楽しみだ。ボクもカメラマンの一人に混ぜてほしい。

 

 

 

●著者紹介

撮影:石川正勝

神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。

 

●関連リンク

朝日新聞デジタル 連載 コータリンは要介護5
神足裕司Twitter
登嶋健太Twitter
夢を叶える福祉機器ittaki

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