VR Inside創刊編集長・渡邊氏が「STYLY」のPsychic VR Labに電撃移籍! 例の商標問題も含めてインタビューした

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2013年に「黒船」としてOculus Riftの「DK1」が日本に届き始めてから、2018年で5年目。当時から最新動向に注目してVR/AR/MR(まとめて「XR」)業界に関わってきた人の中には、自分のやりたいことを貫き通すために職場ごと変える方も少なくない。

 
渡邊遼平氏もその一人。かつてスパイシーソフトに所属し、VR系ウェブメディア「VR Inside」の創業編集長を務めた同氏は、この1月よりPsychic VR Lab(サイキックVRラボ)に移籍してChief Media Officer(CMO)を担当することになった。

 
VR Insideといえば2017年、同じVR系ウェブメディア「MoguraVR」との商標係争でも業界で話題になった存在だ(Mogura VRのプレスリリース)。「あの事件」はなぜ起こったのか。そして渡邊は何を求めてPsychic VR Labに移ったのか。Psychic VR LabのCEO、山口征浩氏にも同席してもらい、本人を直撃インタビューした。

 

 
STYLYは、ウェブブラウザーだけでVR空間の構築・配信ができるVRクリエイティブプラットフォーム。コードを一切書くことなく、ウェブベースの編集画面で簡単に空間を構築して、すぐに配信・インターネットにシェアできる。

 
 

未来を感じたからVRメディアにかけた

 
──まず一番気になるのはMogura VRとの商標係争です。そもそもどこまで話せるのかという問題もありますが……。

 
渡邊 前職との守秘義務契約もあって、お伝えできるのは自分が関わっていなかったという事実だけです。僕が編集長を勤めていたのは2016年3月の発足から8月までで、一旦別部署に移動したのち、2017年2月にまたVR Insideに戻って9月末まで在籍し、退職しました。商標の出願をしたのは僕が抜けていた時期で、辞める時期あたりに商標関連の書類が届いたことで「話には聞いていたけど、本当に取ったんだな」と気づきました。

 
──編集長が渡邊さんじゃない時期があったんですね。

 
渡邊 こうした言い方になると逃げている感じが出るので、中々難しいのですが……。

 
──守秘義務で出せない話だという。

 
渡邊 そうなんです……。

 
──そもそもVR Insideを発足させた経緯はなんだったのでしょうか?

 
渡邊 新規事業としてメディアを立ち上げるにあたって、社内でいくつかのテーマが挙げられて、どれに一番未来があると聞かれたときに僕はVRと答えたんです。「一番儲からないのは?」という質問にもVRだと答えましたが(笑)。そのときに会社でこの分野にかける意思が確認できたので、じゃあ自分も編集長として覚悟を決めて、まずはVRを調べるところからスタートしました。

 
──えっ、知識ゼロからのスタートだったんですか。

 
渡邊 はい。メディアという立場は幸いなことに、各所に頭を下げればみんな優しく色々紹介してくれるじゃないですか。失礼な話ですが、そこで色々体験しながら勉強させてもらったところ、自分でもハマる部分があった。そのあとに「この人達が表舞台に出ていかない限りは、メディアも上がっていけない」と感じたので、一緒に手を繋いでやっていきたいという思いが芽生えたんです。

 
山口 実は渡邊さんには、僕らが会社を設立する前から取材してもらっていたんです。

 
──なんと!

 
渡邊 そうですね。

 
山口 法人化前で、オフィスはもちろん、出資も受ける前でした。社名の通りラボから始まった組織で、当時は僕たちは思いだけで動いていて、どうあるべきかということを模索してる段階でした。VR Insideの立ち上げ当時は渡邊さんも含めてスタッフが2人で、僕らのところにも軽いフットワークで取材に来てくれて、挨拶ぐらいかと思っていたらきちんとした記事を書いてくれた。そこにすごい熱量を感じたんです。

 
──一方で、VR Insideは業界内で記事の間違いや誤訳が多いと言う話も出ております。

 
渡邊 VRメディアで後発だったこともあり、なんとかして発信力を持たなければいけないという焦りもあって、間違えた記事を出してしまうこともありました。どうしても僕らの知識が追いついていなかったというのが正直ありまして、元の体制のままをクオリティーを出し続けられなかった。それは100%僕の責任です。本当に申し訳ないと思っていますし、言い訳もするつもりもありません。

 
──なるほど。

 
渡邊 ただ気持ちとしては、どこよりも早く色々な情報を届けたいという思いが強く、自ずと投入本数が増えてくるとデスク側の人間のインプット時間が減って、知識が追いつかなくなる状況が何度かおきてしまった。

 
──メディアの人間として外から見ていると、きちんと取材したも記事もある中、「これは翻訳権を取ってるのかな?」というものも目立って、そのクオリティーの落差が激しいと感じていました。

 
渡邊 おっしゃる通りだと思います。そこのクオリティーも含め、僕がきちんとした生産体制を単純につくれてこなかったというシンプルな話です。

 
 

「クリエイター支援の仕事がしたい」

──次に選んだ職場が、なぜメディアではなく、Psychic VR Labだったのでしょうか? CEOの山口さんに誘われたとか?

 
渡邊 誘って頂いたのはもちろんありましたが、次に行くところは人とプロダクトで決めようと思っていました。人というとリーダーとチームの人間に分けられますが、そのリーダーは失敗しても「倒れるときは前のめり」な人がよかった。

そのくらいVR業界の将来にかけているリーダーなら、このタイミングで集まっているチームメンバーもVRの可能性をもちろん信じているし、事業自体がスケールするイメージも持てて、きちんと自走しないと潰れるのが早いと理解している。そうした自分の意思で動ける環境はすごい魅力的だなと思ったんです。

 
──同じPsychic VR Labで先にインタビューしたミールさんの話に少しつながりますね。

 
渡邊 あ、本当ですか?

 
──雇うときは「やるべきことや責任、権限などが明確に定義されている」うえ、自分の仕事に関してはCEOの山口さんも口を出せないぐらい任されているという。

 
渡邊 そうなんですよね。いちいち話し合ったりというのはビジネスのスピードを緩めることになりかねないので、より自由に動ける職場に来たというのがあります。

あとは元々、前職に新卒採用されたときも、クリエイター支援の仕事がしたいというのが根底にあったんです。VR Insideの前にも漫画の投稿プラットフォーム、スマホゲームのメディア担当と、なにかをつくる集団のフォローアップをやってきました。Psychic VR Labの「STYLY」も、まさにクリエイターの力を引き出すツールという部分でぴったりだなと思って、転職を決めています。

STYLYのプロダクト面でいうと、VRの色々ある魅力の中で、僕は体験自体をデリバリーできることが大きいと感じています。空間自体をつくれて投稿できるプラットフォームの普及をきちんと推し進めていけば、VRが当たり前になった時代にSTYLYがいいポジションを取れて、動画共有サービスでいうYouTubeみたいなメインストリームになれるんじゃないか。ウォークマンが音をまとって出歩く文化をつくったように、空間をまとうカルチャーもSTYLYから生まれて行くんじゃないか。

そう考えると、結構面白そうな仕事だと感じて、いったんはVRを離れようかと思ったのですが、結果的に戻って来てしまいました。

 
 

すべてのVR企業に情報発信の担当を

──Psychic VR Labでの役職は?

 
渡邊 CMOです。

 
──自社メディアで色々情報を発信して、PRしていくという?

 
渡邊 そうですね。自社イベントのレポートなどもそうなんですが、もっと攻めていきたい。やはりクリエイターのアウトプットありきの事業なんで、クライアントやメディアとも一緒に何かできる体制を整えていきたいです。前職から思っていたことですが、スタートアップの企業はプレスリリースを送って、「以上」みたいなことって結構多くて。

 
──わかります。

 
渡邊 IT業界はどうしても技術先行で、リソース不足なこともあって、なかなかプロモーションまで手が回らないことも多い。でもメディアと相性のいい発表に関しては、先に言っていただければ「一緒に企画をやりましょうか」みたいなことを仕掛けて相乗効果が生み出せるはずなので、そこを積極的にやって業界のロールモデルになっていきたいです。

 
──すごくわかります。開発者の方々の中には、いいプロダクトや面白いアイデアを持ってる方はすごく多いのに、PRにあまり関心がなくてあまり表に出てこない。そうした話はプレスリリースだけだと多くの人に共感してもらいにくい。

 
渡邊 STYLYもクリエイターがつくった作品があるので、その環境や制作過程を含めてインタビューして表に出していけば、単純なプレスリリースより身のあるものになるんじゃないかと。そうしたメディアにいるときに思っていた部分をぜひやっていきたいです。

 
──オウンドメディアを作るイメージでしょうか。

 
渡邊 色々なパターンがあると思います。もちろんコーポレートサイトでのPRもそうですし、今回のようにメディアにアプローチして記事を書いてもらう形もあるでしょう。僕の担当としては、STYLYクリエイターの育成もあるので、例えばTipsみたいなのも伝えていきたい。

先日、社内でハッカソンをやったのですが、空間と音の同期だったり、VR空間内にTHETAで撮影した360度映像をリアルタイムで流したりと、色々な表現手法があった。そういうのを記事にして、クリエイター向けに発信していきたいです。もちろんSNSを活用してエンドユーザーに届けるのも含めて、外向けの情報発信はすべてやっていきます。

 
──すごくいい話ですね。情報発信を通じて、コンテンツ開発ツールの「Unity」のようにプロもアマチュアも関係なくクリエイターを巻き込んでいければ、VRコンテンツももっと増えて行くと思います。

 
渡邊 まさに啓蒙というイメージです。例えば、3Dモデリングソフトの「SketchUp」がTipsの出し方がうまくて、同じ手法で盛り上げていきたいという山口の思いもあります。僕のKPI(重要業績評価指標)としては、空間数やクリエイター数をきちんと増やしていくところにしようと。

 
──それって2年前にVR Insideを立ち上げた頃とやってることはあまり変わってなさそうですね(笑)。

 
渡邊 そうですね(笑)。やってることは何かというのを紹介して、次に繋げてもらえればいいなという。繰り返しになりますが、メディア的な立ち位置の人間は、プロダクトをつくっている側にもいたほうが絶対いい。そうした視点がひとつあるだけで、新機能をつけた際にも、どんな人がどう使えばいいかを効果的にアピールしていける。メディアの目線がなければ、「これ大した新機能じゃないのかも」と広まるきっかけを失ってしまうかもしれない。VRを含めた新しい業界は、なおさらかなと思ってて。

 
──「つくって半分、届けて半分」という言葉のように、プロダクトの完成で満足しないで、使ってもらえる人にきちんと届けるというのも重要な仕事です。

 
渡邊 どっちがバランス悪くてもダメだと思うんです。プロダクトが悪ければ、それはそれでおしまいです。かといって届ける気がないのももったいない。昔みたいに「いいものをつくれば大丈夫」という時代ではないですし。そもそも今の時代、みんないいものをつくってますからね。日本企業も技量があっていいものをつくっているのに、海外企業の推進力の強さに押し切られている部分があると思います。

僕の正直な気持ちとしては、STYLYを国内に広めるのはもちろん、さっきの話にも出ていたスタートアップのロールモデルになって、VR企業のみなさんがCMOをつけるようになったらいいと思うんです。そうした外部への情報発信にもお金を使うようになってくれば、同じ志を持った人も採用しやすくなる。そうした業界全体に対する想いは結構強いです。ぜひ今後を期待していてください。

 
 
(TEXT by Minoru Hirota

 
*PANORAでもプレスリリース作成やオウンドメディアの記事執筆など、VR系企業のPRのお手伝いが可能です。info@panora.tokyoまでお気軽にお問い合わせください。

 
 
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