米DWANGO創業者のボブさんも出資 やわらかVRゴーグル「Merge VR」って何!?

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VRゴーグルの1ジャンルとして、スマートフォンを差し込んで使うモバイルタイプが存在する。Gear VRやGooge Cardboard、ハコスコといった製品で、昨年以前から商品として流通しており、PCやゲーム機につなぐ据え置きタイプ以上にライバルが多い市場だ。

 
米Merge Labsの「Merge VR」も、そんなモバイルVRゴーグルのひとつ。PANORAでは、このMerge Labsに、米DWANGOの創業者であるボブ・ハントレー氏が出資しているという話をキャッチした。1月30、31日に実施した「闘会議2016」の会場にて、そのボブ氏と、ドワンゴ会長の川上量生氏にインタビューする機会を得たので詳細をお届けしよう。

 
なお、「えっ、ドワンゴって外資系だったの!?」という話をご存じない方は、筆者が過去にASCIIl.jpにて執筆したこちらの記事を参照してほしい(以下、敬称略)。

 
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スマートフォンを使うVRHMD「Merge VR」。日本からも99ドルで購入可能だ。

 

DOOMで協業したカーマックとライバルに

—— ボブさん、お久し振りです! Merge Labsに出資しているという話を聞いたのですが……。

 
ボブ そうなんだよ。OculusやHTC Viveが出てきて、このジャンルにすごく興味を持っていたところ、VRゴーグルをつくってる人に会う機会があったので出資するようになったんだ。Merge VRは昨年の11月から米国で販売を始めていて、日本でも売りたいので、今回、代理店を探しにきた。

 
—— Merge VRはどんな特長を備えたVRゴーグルなんでしょうか?

 
ボブ 他の製品にはない大きな特長としては、柔らかい材質のボディーかな。付け心地がいいので、長時間装着していても快さが損なわれない。スマートフォンの画面を押すことでアプリを操作できる本体上部の2つの入力ボタン、IPD(瞳孔間距離)を調節できるカスタムレンズ、ARアプリ用にスマートフォンの背面カメラを露出できる機構などが特長です。

 
川上 サンプルが送られてきて初めて見たときに、ペコペコ凹む本体がおもちゃみたいだなと感じたんですが、実はそこがポイントだった。レンズのクオリティーにもこだわってると聞いてます。

 
—— なにはともあれ試させてください!!

 
ボブ もちろん!

 
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本体前面。左側の切れ込み部分を外し、スマートフォンの背面カメラを露出させてARアプリに使える。

 
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本体上部。発泡ゴムのように柔らかい素材でできており、確かにバンドで顔に固定してもダンボールやプラスチックのものよりは付け心地がいいと感じた。

 
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手前の切れ込みを指で開けて、スマートフォンを差し込むとがっちり固定される。

 
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上部にある左右のボタンを人差し指などで動かして、アプリを操作可能だ。見せてもらったデモはOculusのSDKでも有名な「Tuscany」で、視線を動かしてスティックを前後に動かすことでバーチャル世界を歩けた。

 
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レンズ部分。IPDの調整が可能というが、インタビュー時間が短かったため仕組みまではわからなかった。

 
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本体側面。有線ヘッドホン用の穴が空いている。

 
—— この2つのボタンで動けるのが不思議です。

 
ボブ ボタンを前後に動かしたときにアクションを起こすようにアプリ側で対応しているんだよ。

 
川上 単に画面を触っているだけなんだけど、実用的で驚いた。インターフェースとしては結構画期的だから、もっと広まってもいいんじゃないかと思ってます。

 
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Merge VRを体験する川上氏。

 
—— そもそもの話ですが、なぜボブさんはVRに興味を持ったのでしょうか?

 
ボブ その昔、とても没入感の高いFPS「DOOM」が私の人生を変えたんだけど、それと同じ感覚をVRにも感じたんだ。

 
—— DOOM! そのDOOMに関わっていた伝説的なプログラマーであるジョン・カーマックがOculus VRに所属してますよね。

 
ボブ 彼は今でももちろん友達だよ。Facebookでも繋がってるし(笑)。DWANGOは「Dial-up Wide Area Network Gaming Operation」の略で、電話回線を使ってDOOMをオンライン対戦できるようにしたのがすべての始まりだった。カーマックから連絡があって、DWANGOをDOOMにバンドルしたこともあった。

 
—— カーマックはOculus VRにてGear VRをつくっています。かつての盟友がライバルとなってしまったことについて、どう考えています?

 
ボブ 同じジャンルで多くのブランドや製品が出てるのは健全な証拠だし、競合として彼がいることもいいことだと思う。それにGear VRはGalaxyシリーズ専用なので市場も違うしね。

 
 

ドワンゴ成長の礎となった「釣りバカ気分」再び!?

—— アメリカにおけるVRの盛り上がりは日本以上ですが、現状を見てどう感じますか?

 
ボブ VRに興味を持って体験したことがある人が増えてきてはいるけど、コンテンツはまだまだ少ない。今年3月にOculus Riftが出荷されたら、市場を牽引するコンテンツが出てくると思うのでそこからだね。

 
—— 据え置き型のVRゴーグルでは、モーションコントローラーを使うことでVRの体験を深めています。そうしたコントローラーをMerge VRでつくる予定はありますか?

 
ボブ 9軸センサーを使ったコントローラーを開発してて、今プロトタイプが完成してます。切ったり、叩いたりといった操作をVR内で実現してくれる。例えば釣りのアプリとかが作れるかもね。

 
—— 釣り! 日本のドワンゴは、i-mode向けの釣りアプリ「釣りバカ気分」でブレイクしたという過去があるからいいかもしれませんね。いつ頃にリリースする予定でしょうか?

 
ボブ 時期の名言は難しい。十分ではない性能で発売して、「面白くないね」と思われたらユーザーがVRの世界から離れてしまうので、自分たちがOKと思ったときがリリースタイミングかな。

 
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こだわりを熱く語ってくれたボブさん。

 
—— 川上さんにもお話を聞いていいですか? 日本のドワンゴも創業当初からだいぶ事業が変わってきていますが、最近、ボブさんとの接点はあるのでしょうか?

 
川上 ありますよ。去年の超会議では、ニコラジに出演して「超おもてなしパスタ」をその場で振舞ってくれました。ボブさんは実は番組も持ってたぐらいの料理好きなんです。

 
ボブ 過去にiPhone向けの料理アプリをプロデュースしたこともある。VRでも料理アプリをつくりたいけど、まだ市場が小さいのでもう少し先かな。

 
川上 そういえば大学でも講義してるんでしたっけ?

 
ボブ テキサスのヒューストンにあるライス大学の大学院でコンピューターサイエンスを教えてます。生徒にグループを組んでもらい、学期の期間内でゲームをつくるという内容です。この芋虫になってVR空間を動けるというMerge VR用のアプリも、生徒がつくったものです。

 
川上 ボブさんで思い出すのは、一番最初に会ったときに、「お酒を飲まないヤツは信頼ならない」といってビールが出てきたこと。そこからすべてが始まった。ドワンゴを起業する前で、もう20年は経ってます

 
—— すごい(笑)。本当なんですか?

 
ボブ 多分ね(笑)

 
—— そういえばniconicoでもGear VR向けアプリをつくっていますが……。

 
川上 そう、昨日(闘会議の前日)知ったんだよ。

 
—— !?

 
川上 もちろん社内でつくってるのは知ってたんだけど、niconicoVRという名前でリリースしていたと知ったのは昨日だった。「ユーザーがつくったやつかな?」とか思ってたけど、公式だったという。

 
—— それは衝撃ですね(笑)。昨年9月の東京ゲームショウの時点で、開発担当である岩城さんが頑張ってつくっていたのに!(関連インタビュー

 
川上 岩城さん、すごく色々つくってるから分からなくなっちゃうよね。

 
—— 確かに。今後はMerge VRへの対応も?

 
川上 多分、そのまま動くと思いますよ。

 
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ニコニコテレビちゃんにMerge VRをかぶせるお茶目なボブさん。

 
—— ちなみにドワンゴさんがMerge VRを扱うことはないんでしょうか?

 
川上 うちはハードの会社じゃないので扱わないですから(笑)

 
—— 最後に日本のVRファンに対して一言お願いします。

 
ボブ 日本では4月末の「ニコニコ超会議」でローンチしたいと考えてます。ぜひ期待していてください。

 
 
●関連リンク
Merge VR
闘会議2016
ドワンゴ

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