Parrotの固定翼ドローン「DISCO」ってどうなの? ドローンに詳しい黒田潤一さんに話を聞いてみた
もう遥か昔になってしまいましたが、今年1月に開催された米展示会「CES 2016」では、VRと並んでドローンが大きな出展面積を占めていました。中でも注目度が高かったのが、仏パロット(Parrot)がお披露目していた固定翼ドローン「DISCO」。オフィシャルの「INNOVATION AWARDS」を受賞したこともあってか、多くの人が一目見ようとパロットブースに足を運んでいました。
CESのイノベーションアワードを受賞した翼タイプのドローン、DISCO。狭いから紐で繋がれて水族館の魚みたいになってるw https://t.co/vtCZO5cEaK
— Minoru Hirota (@kawauso3) January 9, 2016
360度カメラを搭載しての撮影や、VRゴーグルを装着してドローン視点で飛んでる気分を体験できるソリューションなど、VRとドローンの親和性は実は高いもの。
新しい固定翼タイプのドローンは、業界にどんなインパクトをもたらしたのか。その辺、ちょっと詳しい方にぜひインタビューしてみよう、ということで数々のドローンイベントをプロデュースしてきた、この分野の第一人者であるDroneGames 代表取締役、黒田潤一氏にお話を聞いてみました。
黒田氏は3月5日、デジタルハリウッド大学駿河台キャンパスにて開催するトークイベント「お父さんのための最新VR講座」にも出演されますので、ぜひチェックしてみてください。
ラジコンと違って自動制御で楽
——先生! そもそもの話を聞いていいでしょうか。ドローンとラジコンは何が違うんでしょうか?
黒田 ラジコン、ラジオ・コントロールは、電波で操縦するからものなんですよね。ドローンも今のところはラジコンとまったく同じ電波を使って操縦してるので、ラジコンの部類の中に入ってるといえば入っています。
ただ、ドローンの方がより細かい操作を手軽に実現してくれます。同じ航空機でも、一般的なラジコンはひとつの操作を指示したときにひとつの制御しか実行してくれませんが、ドローンでは本体が傾きすぎないように自分で計算したり、スピードを調節したりといった制御を入れてくれる。
——より賢く、自動で制御してくれるんですね。飛行機だとバランスをとるのだけでも大変そうなので、それは結構大きそう。ドローンにはどれくらい種類があるんでしょうか?
黒田 形状でいうと、大きく3つにわけられます。よく見かける複数のプロペラを備えたマルチローター型、固定翼型、プロペラと固定翼の両方を備えたハイブリッド型です。
——ハイブリッドって「オスプレイ」みたいな形でしょうか? そんなのもあるんだ!
黒田 あるんですよ。オスプレイのように羽が変形するわけではないですが、翼の中に仕込んであるプロペラで垂直離陸して、羽のところをスッと隠してそのまま飛ぶというハイブリッド型もあるんです。
2015年はマルチローター型がホビー用途に流行ると言われていましたが、2016年は固定翼型、もしかしたら後半にはハイブリッド型もけっこう普及してくるんじゃないかという予想も出ています。そんな話があったので、ドローン業界からすると、1月のCESでパロットが出してきたDiscoは、「このタイミングで出してきたか!」「ちょっと早いな」という感じでした。
——早いんですか。
黒田 もう少し先になるんじゃないかなと思ってたんですけど、展開が早いなという。
——かなり攻めてますね。ちなみにドローンメーカーで一番シェアが大きいのはどこでしょう?
黒田 中国のDJIが7、8割のシェアだと言われています。ただ、パロットもホビー層でユーザーを獲得していて、3大ドローンメーカーに含まれていますよ。
DJIの「Phantom 3」
——3大というと、もうひとつはどこでしょう?
黒田 米国の3Dロボティクスです。WIREDの元編集長で「MAKERS」という書籍を書いたクリス・アンダーソンさんがトップをやっている企業ですね。DJIもSDKを少しずつオープンにしてきていますが、まだまだソフトがブラックボックスの部分も多いです。一方で、3Dロボティクスはオープンソースとして飛行制御アプリの「Tower」を提供していて、いろいろカスタマイズしてみんなで便利な世界をつくりあげていこうよという姿勢を見せています。
——プロ向けのDJI、ホビー層のパロット、カスタマイズの3Dロボティクスとうまいことすみわけされているんですね。
黒田 そういう感じですね。ホビー層向けのパロットの製品は、当たっても危険が少ないというか、ちょっとは切れはしますが業務向けのものよりはかなり安全。なので、体験会を開催するときやちょっと小学校に持って行って飛ばすとなったときに持ってこいだったりします。
固定翼型の価格破壊になるか?
——話を「DISCO」に戻しますと、なぜ突然パロットは固定翼型のドローンを出してきたのでしょうか?
黒田 スイスのセンスフライ(SenseFly)という、2012年にパロットが買収プロ向けドローンメーカーがあります。同社は例えば、工事現場の橋でカメラをぐるっと上に向けてサビをチェックする「eXom」というドローンをつくってたりするのですが、もうひとつ「eBee」(イービー)という黄色い固定翼のドローンも手がけています。それが重量が630gで50分間飛べるといった風に、今回の「DISCO」と同じスペックや形状なんですよ。
——では、そのホビー版を出してきた的な?
黒田 そうだと思います。ただ、2014年からつくってると聞いてるので、センスフライのエッセンスを少し入れたという可能性もあります。
——見た目だけでいうと、今までのラジコン飛行機と同じようですが……。
黒田 その辺はちゃんと姿勢制御が入っていて、ラジコン飛行機で墜落してしまうような操作をしても持ちこたえてくれます。
持ってみたところ。かなり軽い。
本体正面。
推力を生み出すプロペラ。
——ドローン業界的には何が新しいのでしょうか?
黒田 あれが市販、かつホビー向けで出てくるとは思っていなかったインパクトですね。まだ価格は明らかになっていませんが、もともと数百万単位の製品だったので。
——数百万! まあ業務用ですからね。DISCOも30、40万円ぐらいするのでしょうか?
黒田 パロット製品は、今一番高いものでもコントローラーとセットで14、15万ぐらいなんです。なので同等の価格帯で出てくると結構衝撃的。逆に言うと、それぐらいまで落とさないと買わなかったりするかもしれません。そこまで価格を落とすと、ドローンを飛ばして3Dマップを作るような業務用途もDISCOのほうでカバーできそうなので、業者も取り入れていくようになると思います。
——CESのパロットブースでは、VRHMDを装着してドローンのカメラを中継するといった展示もありました。
こういうの。
黒田 ありますね。ホビー向けドローンの醍醐味のひとつに、FPSゲームみたいにドローンからの目線で飛ばすことができるというのがあります。ドローンレースも同様にドローン目線でコースを駆け巡りますが、それを楽にできるのがパロットです。
今、パロットが市販している「Bebop Drone」というドローンでも、HMDを装着してのライブビューに対応しています。鳥に近い動きの映像が見られますよ。
——雲に突っ込む瞬間が楽しいという話も聞きます。
黒田 ですね。雲間まで行くのはだいぶ高度を上げないといけませんが、霧が濃いときとか、うっすら掛かってる時っていうのは幻想的な感じで面白いですね。
——ヤバイ! 総括になりますが、パロットでいうと民生向けに固定翼型が加わることで、ドローンの世界がさらに広がっていくという感じでしょうか?
黒田 そうですね。ドローン業界も技術の進歩が早いので、もっと小型の物が出てきたりとか。高性能の物が出てくると思います。ぜひ2016年も注目してみてくださいね。
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