【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム 「360度カメラにチャレンジ」編
東京は、絶好の花見日和である。ボクたちも新宿御苑で花見をした。総勢20数名の色んな業種の人たちが集まっていろんな話をした。最近ボクがVRにかなり興味があるといったら古くからの仕事の先輩がいった。「あ~~~、いつものあれだな…….」
その先輩いわく、パソコンが流行り始めたとき、それまで全く興味が無かったような顔をしていたくせにある日突然『パソコン雑誌に連載することになった』そういってかなり高価なパソコンを買っていた。しかもそれから数ヶ月で“ボクは専門家”みたいな顔して膨大な知識を仕入れてきてレクチャーしはじめた。はなしはそれじゃ終わらなくて次の正月には『ジョブズにあいにいってくる』そういってアメリカにまで行っていた。
それからこんなこともあったそうだ。『結婚して子どもが生まれるにあたり車を買うことになった』そういっているので「免許も取りたてで大丈夫か?」そう思っていたらどんな車がいいかNAVI(車雑誌)の編集部に聞きにいってきたという。「で? なんだって?」と聞いたら『新しくなったアウディーがすごくいいらしい』そういってあっという間にアウディー買った。しかも『VAVIに連載することになった』と言っていつのまにか車が趣味という人間になってた。「あ~~それだな、今回のVRも。のめりこんだらとことんだからなあ」そういわれた。
ボクは多趣味なほうではある。パソコンも車も“よくわからないもの”が前にあらわれるととことん調べたくなる。悪い癖である。膨大な本を読み、人にも聞きにいく。あけてもくれても自分の頭の中で理解できるまで近くにいたいのだ。
いまのVRもそう。この花見では初めてカメラを一脚にとりつけてもらってとってみた。20人あまりの記念撮影もボクを中心に360度囲んでもらって撮った。一瞬で「はい」と撮り終わっていたので「え~~もう撮り終わったの? 360度ぐるぐるまわすんじゃないんだ」とみんな興味津々。撮り終えてiPhoneに取り込んでもらうとまたその画像を見て歓声が上がる。公園を歩きながら撮ったものも「すごいなあ」とあたらしいものが一般の人たちに広がっていくそのときをまた見ているような気がして嬉しくてならなかった。
●著者紹介
撮影:石川正勝
神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。
●関連リンク
・朝日新聞デジタル 連載 コータリンは要介護5
・神足裕司Twitter