【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム MRで楽しくリハビリ「リハまる」 編
その日「リハまる」の記者発表会見が大阪で行なわれたとのことでボクの取材は夕方から設定された。それからすぐ大阪に帰られるとのことなのでわざわざボクたちのためにやってきてくれたのだと気づく。ありがたいことだ。
「リハまる」というのは、脳梗塞や認知症の認知機能を改善するためのソフトでVRやMRを使って行なうというちょっと未来的なリハビリ。MRやVRの3Dの立体的にみえる空間でリハビリを行なう。いままでだったら、作業療法士と一対一で紙と鉛筆で行なっていた「注意障害改善」のメニューを360度の映像の中で行なえる。
いまいる場所をリハまるが検知、そののち空中のアトランダムな位置に数字が浮かび上がる。それを「1」から順番にクイックしていく。後遺症で左にどうも注意がいきづらいという人はやはり左側に浮いている数字を見つけるのに時間がかかる。右に注意がいかない人はその場所が苦手だとデーター化され記録もされる。1人の療法士のもと複数人一緒に行なえるメリットもあるようだ。または自分が一人でおこなったトレーニングも記録され後から医師のアドバイスを受けることも可能になる。紙にテスト形式に訓練していたものにはできなかった独学でのかかった時間、にがてな方向などもすべてお見通し、ずいぶん画期的だ。
もちろん他にも色々な果物が浮かんでいて、たとえば「いちご」をのぞいて全てクリックしてくださいとか。両脇にお花が咲いている垣根が出現、「黄色の花」だけ摘み取りましょうなどというのもあった。道の距離などもその場の空間を読み取り設定できる。花の数も数字も果物の種類も設定できて難易度を調整できる。
この、HMDの「HoloLens」というのがとても近未来的で興味をそそる。
代表の杉山さんが設定をするのにこれをかぶり、なにもない宙で指をつまんだ仕草をしているとそれだけで、「おおアトムの時代だ」と遥かなただと思っていた未来がすぐ近くに来ていることを実感する。
単調なリハビリがボクのような新し物好きはそのグッズだけでも数倍刺激がでる。
最近おもうことは、こういう新しい技術は高齢者に意外にも受け入れやすいということだ。
あれこれ疑問も抱かず、苦手意識もあまりもたず素直に受け入れてくれる。ちょうどボクぐらいの世代(60歳前後)が一番難儀するのかもしれない。それよりもっと上の世代はけっこううまく使っている。
ちょっとこのソフトを使ってリハビリをしてみたいと思っている。
●著者紹介
撮影:石川正勝
神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。
●撮影協力
・秋葉原プログラミング教室
●関連リンク
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