【連載】神足裕司 車椅子からのVRコラム 「神足さんの推し! スタピライザー機能 」編
ここで以前取材させていた登嶋健太さんが行なっているVRのワークショップにお邪魔させて頂いている。この春から登嶋さんが東京大学の先端化学技術研究センター 身体分野情報学分野 稲見・檜山研究室の学術支援専門職員に着任。外出困難な高齢者にVRを活用した旅行体験サービスを提供して、心身にどう影響を及ぼすか研究しているのだそう。もう4回体験させて頂いている。4回目は「スタビライザー機能」について。
ボクが4回経験した感想を言えば最初は、VRで遠くの地に思いを馳せてそのリアリティーに感動さえ覚え映像を見入った。いままでどちらかといえばゲームやゲームセンターでの大型のアクティビティーや配信されている短編の映像を体験してきたがそれとは全く違っていた。画像的にはそうたいして性能がいいわけでもない。たまにガタガタ揺れたりもする。けれど心には響いた。「VR ZONE SHINJUKU」で釣りVRを体験したときはおなじような感動を覚えた。いまは行けないかもしれない大自然の中で釣りをしている。そのつかの間のリアリティーのある空間に心が動いた。それと同じような感覚がその素朴な映像に感じた。
2回目は東大の檜山先生のお部屋におじゃまして「アクティブシニア」といわれる方々のVRの撮影をする側の楽しみを知った。VRを撮影する方法を学んだ。これがなかなかたのしい。実際車椅子に座り、しかも左手もほとんど動かないのでiPhoneを片手になかなか難しかったのだが。
3回目はそのアクティブシニアのみなさんと街に出た。戸越銀座というわりとがやがやした商店街で登嶋さん考案の車椅子接続キットで一脚を取り付けて撮影。車椅子だってこんなに自由に楽しめるのがうれしいとおっしゃってくれた。なにかワクワクした。いいものをみつけた子どものようだった。
そして4回目。東大の赤門前で「insta360 」をつかって自分よりかなり上の位置から、横の位置から、下の位置からと、どう見え方が違うか研究した。車椅子で地面ギリギリの映像を取ってみたり。そこでかなり有能だったのが「スタビライザー機能」。ガタガタ道も車椅子の揺れも吸収してくれる。ますますVRの世界にのめりこんでいる。
●神足さん応援中の登嶋さんのクラウドファウンディング企画
「元気シニアと「ローカルVR旅行」アプリを作りたい!」
●著者紹介
撮影:石川正勝
神足裕司(こうたりゆうじ)
1957年、広島県出身。黒縁メガネ・蝶ネクタイがトレードマークのコラムニスト。「金魂巻(キンコンカン)」をはじめ、西原理恵子との共著「恨ミシュラン」などベストセラー多数。2011年にクモ膜下出血発症。1年の入院生活を送る。半身マヒと高次脳機能障害が残り、要介護5となったが退院後、執筆活動を再開。朝日新聞をはじめ連載も多数。最新刊は「一度、死んでみましたが」「父と息子の大闘病記」などがある。
●関連リンク
・登嶋健太「ittaki」
・insta360 ONE
・朝日新聞デジタル 連載 コータリンは要介護5
・神足裕司Twitter