「彼らは恐怖を聞いている」……音で世界を見る新感覚ホラー「Stifled」ゲームレビュー
「Stifled(窒息)」の名にふさわしい、息が詰まるような暗闇の世界
全ての設定が終わったら、いよいよゲーム本編をプレイしていこう。タイトルメニューから、「ニューゲーム」を選択する。
▲主人公が目覚まし時計の音で目を覚ますところから物語は始まる。
ゲームをスタートすると、意外にも最初は明るい部屋からのスタート。目覚まし時計の音が鳴っているので、指示の通り目覚まし時計を止めると、家の中を探索することとなる。
視界には白い靄が掛かっていて、音を出すことでこの靄が薄くなり、視界が開ける様になる。マイクを使っている場合は声を出して、使っていない場合はR2を押すことで音を出すことが可能だ。
視界の広がる範囲と持続時間は、発した音の大きさで変わる。マイクなら声量で、ボタン入力ならR2長押しで調整できる。
▲最初の部屋を出て下の階を見ると、ピアノを弾く女性の姿が。主人公はその女性を「ローズ」を呼ぶ。
▲家の中を探索していくと、時折見えるローズの後ろ姿。靄がかった視界のなか、彼女を追って家を探索していく。
▲時折見つかる女の子の人形を調べると、主人公とローズの会話が再生される。2人は夫婦で、近々子供が生まれるらしい?
▲しばらく探索していると、突如家のチャイムが鳴る。玄関のドアを開けると視界がおかしくなり、景色が暗転する……
●謎の事故現場で目覚め、ついに暗闇の世界へ
次に目が覚めたのは、明らかに先ほどの場所とは異なる森の中の事故現場。今までの光景は夢だったのだろうか? 何が起こったのか分からないまま、辺りを調べてみる。
▲目覚めたのは、謎の事故現場。車が完全にひっくり返っている。
▲車の横には、主人公の妻、ローズに向けた手紙。どうやら彼女の母親からのもののようだ。この手紙から察するに、主人公の名前はデイブというらしい。
▲その近くには彼女が母親に向けた返事と思しき手紙が。主人公が何か問題を抱えているような、意味深な書き方で締めくくられている。
▲またその近くには、これまた意味深な「抗うつ剤」が落ちている。
▲車内からは血痕が伸びている。主人公の他にも同乗者がいて、事故でけがを負ったようだ。
▲血痕は森の中へ。血の量からしてかなりのけがのはずだが、一体どこへ……?
●血痕を追って森の中へ
血痕は、森の中へと続いている。今がどういう状況にあるのか詳しく知ることは出来ないが、ともかくこれを追っていく他ない。ここからは、音を使わなければ周りの様子がわからない真っ暗な世界。いよいよゲームも本番という感じだ。
▲暗闇で妻の名を呼ぶ主人公。同乗者はローズだったらしい。
道を進んでいくと、下水道と思われる建築物が見えてくる。入り口の鉄格子の扉が開いており、血痕はその奥へと続いている。
▲多量の水を吐き出す下水道。常に大きな音を立てているので、目印といわんばかりに遠くからでも輪郭がはっきりと見える。
▲下水道の入り口。血痕もこの中へ続いている。
正直入りたくはないが、他に道もないので、意を決して中へと入る。中も真っ暗で、音を使って視界を確保しなければ先の様子はわからない。
道なりに進んでいくと、突然、人間のものとは思えない叫び声が奥から聞こえてくる。このゲームでは、敵の姿や、彼らの発する音が反響した範囲は赤い輪郭線で表示される。白と黒の世界の中で赤色が見えたら、それが危険の合図ということだ。
▲赤色は危険のサイン
非常に引き返したい気分だが、そうも言っていられないので慎重に前へと進む。しばらく進んでいくと、壁に空いた横穴から、なにやら赤ん坊のような声が聞こえてくる。どうやら壁一枚隔てた先に先ほどの叫び声の主がいるらしい。壁の穴を覗いてみると、ちらりとその姿が見える。
▲壁の横穴から赤ん坊のような声。そして危険を示す赤色。
▲穴の向こうに、その先にちらりと姿を見ることができる。
ちなみにここでヤツに聞こえるように音を立てると、凄まじい叫び声を上げるが、襲ってはこない。壁があるので一先ず大丈夫らしい。今はどうすることもできないので、とりあえず無視してまた道なりに進んでいく。
焦らすように少しずつ敵との距離を縮めさせ、プレイヤーに息が詰まるような緊張感を与え続ける辺り、なかなかに巧みな演出である。
●いよいよ敵と対面!
どこでヤツがでてくるかと身構えながら慎重に歩を進めていくと、突如足場が崩れて下へと落下。大きな音が鳴り、それをヤツが聞きつけたのが分かる。いよいよ本格的にゲームスタートというわけだ。
▲突如足場が崩れて下に落下。
▲その直後、下水道に響き渡るヤツの叫び声。間違いなくこちらに向かってくるだろう。一気に緊張感が増す。
▲案の定ヤツが姿を現す。ここでいよいよ敵とご対面だ。
敵の姿は輪郭線でしかわからないが、人型の様で、頭が大きく、ごつごつとしている。声が赤ん坊の様であることもあり、どこか赤子を連想させる。
そして静止画では伝わりにくいのだが、その動きの不自然さが非常に際立っている。なんというか、コマ落ちしているようにカクカクとした動きで、まるでバグのように「ブレる」のである。
その奇妙さが、不気味さに拍車をかけている。
▲敵の姿。静止画なので分からないだろうが、動き方がかなり不気味。
とはいえ、いつまでも止まっているわけにはいかないので進めていこう。後ろに道はないので、コイツの横を抜けて奥に向かうということらしい。
コイツは近くで音を立てなければ襲ってはこないようなので、L2を押し「しゃがみ」状態で移動する。しゃがみ歩きでは足音が出ないので、気づかれずに移動ができる。
ちなみにこの敵、ゲーム的には実はそれほど恐ろしい相手ではない。
もともとこのゲームの怖さは、「周囲がどうなっているか分からない」ことと、「周囲の状況を知るためにリスクが伴う」ということである。敵がどこに潜んでいるか分からない、下手に音を出せばすぐ近くにいた敵に気づかれるかもしれないという状況が、独特のスリルを生んでいる。
しかしコイツは、常に声を出しながら彷徨っているので、いつも居場所が分かる状態になっている。つまり、「不意に遭遇する」危険性がない。近くにいるときはそうと分かるので、音を出さずに離れればいい。
加えて、コイツは「一度攻撃を食らってもゲームオーバーにならない」。気づかれたときにはもちろん襲われるのだが、一回攻撃されただけではゲームオーバーにならず、ダメージを与えて何事もなかったかのように離れていく。
▲ダメージを受けると画面が赤くなる。
この状態でもう一度気づかれると襲われ、ゲームオーバーになる。しかしダメージは時間が経つと回復するので、回復するまで動かず音を出さなければいいだけの話である。
よほど雑にプレイしなければ(またはマイクオンで恐怖に叫びでもしなければ)、まずコイツにやられることはないだろう。