「彼らは恐怖を聞いている」……音で世界を見る新感覚ホラー「Stifled」ゲームレビュー
奥深い「音」の攻略と、深まる謎
……と、思っていたのだが、ここで意外な罠にはまってしまった。それは、「下水道の水」である。
下水道の中では、時折地面に水が溜まっている箇所がある。このゲームでは、ただ歩くだけでも足音が広がり、周りの近い範囲に音が反響するようになっているのだが、水の上を歩くとその音が大きくなり、より広い範囲に音が響くようになる。
さらに、本来L2を押したしゃがみ状態の歩きでは足音を消すことができるのだが、水の上ではしゃがみ歩きをしても足音がなってしまうのである。筆者はこれに見事に引っかかり、しゃがみ歩きで水場に入ってしまった。
▲もちろんヤツに気づかれ、攻撃を受けてしまうことになった。一回ではゲームオーバーにならないとはいえ、これにはしてやられた。
地面が水場になっている以上、そのまま普通に歩いていくのは厳しい。「攻撃されるまで歩いて食らったら回復まで待つ」というごり押しも可能かもしれないが、それは少し面倒だ。ここは少し知恵を使ってみよう。
このゲームでは、マップの所々に、石などのオブジェクトが落ちている。これらは照準を合わせて×ボタンで掴むことができ、持ち運びが可能だ。そしてもう一度×ボタンを押すと、照準の方向にオブジェクトを投げることができる。
▲オブジェクトを投げた様子。離れた位置に音を発生させることができる。
投げたオブジェクトは、地面や壁と衝突した時点で音を出し、その地点の周りの様子を明らかにしてくれる。さらに、敵をその地点におびき寄せることが可能だ。
これを使って、敵を離れた位置に誘導し、その間に水場を抜けてしまおうという作戦である。
▲自分から離れた位置に石を投げ、ヤツの注意を引く。
▲石は落下した場所で音を立て、敵は見事にそちらへ引き付けられてくれた。
▲その隙に、歩いて水場を抜ける。位置が離れているので、水場を歩いても気づかれずに抜けることができた。
投げれられるオブジェクトは、遠くの状況を確認できるうえ、自分の身を危険にさらす必要がないという、非常に頼もしいアイテムである。石などは様々な場所に落ちているので、出来れば常に持っておいていつでも使える状態にしておきたい。
そうして抜けた先の道を進んでいくと、いかにも「音が出ます!」と言わんばかりのハンドルを発見。その先にはゲートがあり、どうやらこれを回して開けなければ先へは進めなさそうだ。
▲ゲートの横にハンドルが。ホラーゲームでよくあるタイプの仕掛け。
このハンドルは×ボタンを押している間回し続けることができ、長押しで回し続けると大きな音が鳴るようになっている。
小刻みに回して止めてを繰り返すと大きな音は出にくいので、チマチマと慎重にやるか、一気に回して気づかれたら石を投げるなどで対処するか、そこら辺はプレイヤーの自由だ。
敵に気づかれるともちろん襲ってくるが、ヤツは結構離れた位置におり、回す時間はそれなりにある。仮に気づかれて攻撃されても、離れていくまで待ってまた回せば大丈夫だ。
ハンドルを回しきるとゲートが開き、奥へ進むことができる。
▲主人公がくぐるとゲートが閉じ、敵はこちら側に来れなくなる。
ゲートは主人公がくぐると閉じるので、敵はこちら側へ来れなくなる。一先ず危険は去ったようなので、再び道なりに進んでいく。
入り組んだ下水道のなか、進む道を探してひたすら探索を続けていると、暗闇の奥にわずかな緑の光が見えてくる。恐らくあれが進む道なのだろうが、その前には再びヤツの姿がある。
▲階下に見えるヤツの姿。いつの間に先回りしてきたのだろうか。
▲通路の先には、白と黒(あと赤)のこの世界では珍しい緑色の光が。恐らくあそこに向かえということだろう。
▲緑色の光を目印にまっすぐ道を進んでいくと、やがて扉にたどり着く。しかしすぐ近くをヤツがうろついておりこのままでは邪魔になる。
何とか石を投げてヤツを引き付けている間に扉を開けると、暗闇の先にまたしても緑の光が。ここは一本道で敵も居ないので、まっすぐに進んでいく。
▲通路の先にまた光が。しかも先ほどより明るい。
▲光に近づいていくと、何もしていないのに突然扉が開く。まるで「ここに入れ」と言っているようだ。上部には「EXIT(出口)」と書いてあるが、ここは一体……?
扉にたどり着いて中に入ると、内部は下水道にあるとは思えない書斎のような部屋。薄暗くはあるが、先ほどまでの完全な暗闇とは違い、光のあるこの部屋では、机の上に置かれたラジオが音を発している。
▲部屋の中の様子
いったいこの部屋が何なのか。何も分からないまま調べていると、机の上に書類が置かれているのが分かる。調べてみると、なにやら孤児院に関する資料の様だ。
▲机の上に書類が。調べると内容を読むことができる。
▲内容は、孤児院に関する資料のようだ。
「エデン孤児院」という施設名が記されたこの資料では、養子縁組の話や、寄付に関する話などが書かれている。とはいえこの資料がストーリーにどう関係するのかは今のところ分からない。
そうして文面に目を通していると、画面が地震のように揺れ出し、だんだんその揺れが大きくなっていく。かなり揺れが大きくなったところで、突如、視界が暗転した。
▲次に目が覚めた場所は、見慣れぬ建物の前。
そして目が覚めると、再び場面が大きく変わっていた。この場所は一体? さっきまでの場所は? そしてあの怪物は何なのか……?
謎は深まるばかりだが、今回のレビューはここまで。ここから先は是非皆さん自身で確かめてほしい。
このスリルは一見の価値あり! ゲーム実況とも相性良し
今回プレイしたStifledは、ぜひ一度体験してほしい革新的な作品だ。特にVRでプレイしてみると、音で世界を見るこのゲームと非常に良いシナジーを発揮する。
どこに敵が潜んでいるか分からない、視界いっぱいの押しつぶされるような暗闇の中、道を探すために危険を冒して音を出すスリルを味わえるのはこのゲームならではだ。
マイク機能については、本人よりも、そのプレイを周りで見ている人がより楽しめる機能ではないかという印象だ。
特に、ホラーゲームで驚いた際によく声を出してしまう人などにVR+マイクでプレイしてもらえば、なかなか面白いことになるのではないだろうか。
▲敵に気づかれたが、音を出さずに後退して事なきを得たシーン。しかしもしここで叫んでいたら……。
そういった意味では、「ゲーム実況」などとも相性はいいかもしれない。会話の声が入らないように、音声の入力レベルなどいくつか調節が必要かもしれないが、「人と一緒に楽しむ」という可能性も持ったゲームといえるだろう。
ちなみにこのゲーム、筆者の体感では、なかなか難易度は高めである。上で紹介した部分は、ゲームプレイ的には割とチュートリアルのような難易度になっているようで、これ以降は襲われれば一発ゲームオーバーの敵が出現してくる。
▲先には様々な敵が待ち受けている。真っ暗な世界で彼らを避けて進んでいくのはなかなか難しい。
また、ステルスゲームは、逃げる/隠れる技術よりも、マップの把握することと敵の位置を把握することが重要になる場合が多いが、このゲームではそもそもそれらを把握するのが難しい。
投げられるオブジェクトがあるならともかく、それがない状況で周囲を把握するためには、声で音を出す必要があり、最悪それがゲームオーバーに繋がるからだ。
それゆえ、このゲームはなかなか歯ごたえのある作品に仕上がっている。ホラー要素を抜きにして、挑戦しがいのあるステルスゲームを求めている人も楽しめそうだ。
そしてゲームシステムにばかり目が行きがちだが、特徴的なストーリー演出もこのゲームの魅力の一つである。
本作では、ゲームがスタートする時点で、ほとんど情報が与えられない。自分が何者なのか、どこにいるのか、目的は何なのか……ナレーターが事細かに説明してくれることもなく、ほとんど何も分からないままゲームが始まる。
それではどうやってストーリーを知るのかというと、様々な場所に配置された、書類などから得られる情報で考察していくしかない。パズルのピースのように断片的な情報を集め、物語の背景を知っていくのである。
▲マップの様々な部分に設置されている人形。見つけにくいところに隠されている場合もある。
例えば、マップの様々な場所に配置されている女の子の人形は、調べると主人公とその妻・ローズの会話が再生される。これを集めることで、夫婦の間に何があったのか、知ることができる。
ミステリー作品が好きな人などは、このようにストーリーを推察するのも楽しめるのではないだろうか。
冒頭でも述べたが、本作はPS4だけでなく、Steamで購入すればPCでも遊ぶことができる。またVR「専用」タイトルでなくVR「対応」タイトルなので、ヘッドマウントディスプレイを持っていない人も遊ぶことは可能だ。
開発の熱いこだわりが見られるこの「Stifled」。気になった人は、ぜひチェックしてみてはいかがだろうか。なお、PS4版は、早期購入キャンペーンとして8月5日(日)まで、20%OFFの割引価格1719円(税込)で販売中だ。
●製品概要
タイトル:Stifled
開発:Gattai Games
価格:
– PS Store 2149円(税込み、以下同)
– Steam 2050円
ジャンル:ステルス/スリラー/ホラー
CERO:B
プレイヤー:1人
対応プラットフォーム:PS4、Windows、Mac、
対応HMD:PS VR、HTC VIVE、Oculus Rift
(TEXT by 高橋佑司)
●関連リンク
・Stifled 公式サイト(英語)
・PS Store「Stifled」
・Steam「Stifled」
(c)2018 Gattai Games. Published by Sony Interactive Entertainment Inc.