バーチャルハチ公もナデナデできる!? 1964年の渋谷を再現する「1964 SHIBUYA VR プロジェクト」進捗を発表
1964 TOKYO VRは21日、同社が進めている「1964 SHIBUYA VR プロジェクト」の進捗状況について発表会を実施した。1964年の渋谷の街並みをVR空間に再現する企画で、2017年の秋10月にスタート。今回の発表会には代表理事の齋藤精一氏と土屋敏男氏が登壇し、プロジェクトを始めたきっかけや現在の作業状況などを説明した。
代表理事の齋藤精一氏。
企画の発案者でもある代表理事の土屋敏男氏。
1964年の街並みを再現するため、まずは航空写真撮影などを手がけるPASCOから当時の渋谷の航空写真を提供してもらいデータ化している。当時の写真はヘリコプターで撮影しており、高度が一定ではなくある程度高低差のある写真となっている。この高低差があることで視差によるビルの高さを測定できるため、3Dマッピング化を可能にしている。
PASCOの航空写真データからビルの形状や高さを割り出して3Dマッピング化。ただしこれだけではビルの外観などはわからないため、真っ白のまま。ここに当時の写真データをもとにテクスチャーのように映しこむことで、当時の風景を再現していく。
興味深いポイントは、コンセプトを「みんなで作るタイムマシン」としており、当時の写真を一般の人から募集していること。渋谷区出張所や区民サービスなど10箇所にスキャナーを配置して、当時の写真を持っている人からデータを受け付けている。また公式サイトからも募集しており、自分でスキャンできる人はオンラインでも提供可能だ。
1964年の前後10年に撮影した写真を募集している。
代表理事の齋藤氏は「現在集まっている写真は1100枚くらい。そのうち現在データに反映されているのはまだ30枚程度。ただ写真はまだまだ足りないのでどんどん応募してほしい」とのこと。ちなみに写真は人物や自動車などは削除する処理を行っているので、人物が写っている記念写真のような構図でも問題ない。さらに斉藤氏は「このプロジェクトの根底にある考えは、『押し入れのIoT化』。押し入れに眠っている写真をデジタル化することで、写真をIoT化できる」とプロジェクトの狙いを話している。
発表会では、現時点で完成している渋谷の街をPlayStation VRやHTC ViveとバックパックPCを使って体験できるブースも用意していた。
PlayStation VRは座った状態で、コントローラーで移動を操作する方式。
HTC ViveとバックパックPCの組み合わせは、一定範囲動き回れる仕様
ハチ公像をなでているところ。
バックパックPCにはディスプレーも搭載しており、プレーヤーが見ている風景がわかる。
ゲストとして登壇した賛助会員第1号の萩本欽一氏や渋谷区長の長谷部健氏も体験。萩本氏は当時このあたりに住んでいたことがあり「土屋氏におもしろいことをやるからと、どんな内容かわからず賛助会員に誘われた。でも今日は見ようと思っても見られないものが見られた」と1964 SHIBUYA VR プロジェクトを絶賛。長谷部区長は「1964年はまだ生まれていませんが、渋谷駅周辺は今と同じところもある」と語っている。
賛助会員第1号の萩本欽一氏。
PlayStation VR装着して1964年の当時の渋谷を体験している萩本氏。
ゲストの渋谷区長、長谷部健氏。
筆者も実際に体験してみたが、かなりの部分がまだ白い立体物なものの、東急東横線が地上駅だったときのかまぼこ屋根や東急文化会館など懐かしさを感じるところや、当時のハチ公像は向いている方向が違っているなど発見もありおもしろい体験だった。
当時のハチ公は今と設置方向が違っている
プロジェクトは2020年のオリンピックにあわせて完成を目標としており、渋谷周辺や1964年の東京オリンピックで聖火ランナーが走った銀座から国立競技場までのルートを歩き回れるようなるという。さらに代表理事の土屋氏は「渋谷だけでなく、東京や日本全国にも広めたいプロジェクト」と話している。今後はVRの体験会を開き、多くの人に昔の渋谷を見てもらうとともに、さらなる写真の提供を募集したいとのこと。
1964年当時の渋谷から青山、銀座のルートを再現するのが当面の目標。
今後は各地で体験会を開催する予定だ。
(TEXT by 中山智)
●関連リンク
・1964 TOKYO VR