これはいいものだ……! 愛した向こう側の人に会えるPS VR「超歌舞伎 花街詞合鏡」を先行体験
ドワンゴは13日、昨年の「ニコニコ超会議 2017」にて上演した「超歌舞伎 花街詞合鏡」の世界観を体験できるVRアプリ「超歌舞伎VR 花街詞合鏡」をPlayStation VR(PS VR)向けに4月に配信すると発表した。価格は無料。
無料というインパクト。
Blu-rayも発売予定とのこと。
その発表会の会場にて、プレス向けに用意していたPS VRで体験できたので簡単にレポートしていこう。昨年の超歌舞伎については、こちらのレポートを参照。
「初音太夫のモデルをどうしても残したかった」
超歌舞伎VRでできるのは、初音ミク扮する「初音太夫」のモデルを含む「花街詞合鏡」の世界を歩き回って、好きな方向から眺められるという体験だ。シーンは、花魁道中や吉原の一室だったりと4つから選択可能。
かぶったことがない人にVRを言葉だけで伝えるのは難しいが、前も後ろも右も左も上も下も360度「花街詞合鏡」の世界に自分が包まれているという体験になる。映像がゴーグル内の視界いっぱいに覆われていて、どの方向に首を動かしても映像が途切れないので、別世界に来ていると錯覚してしまうのが新感覚だ。
操作には、DUALSHOCK 4コントローラーか、PlayStation Move モーションコントローラーを使う。DUALSHOCKの場合は木目調のコントーラーが、PS Moveではプレイヤーの手がそれぞれバーチャル空間に出現。十字キーを使って空間を移動したり、行灯に持ち替えたりといったアクションが可能だ。
初音ミクファンにとって嬉しいのは、写真を撮影してシェアできる機能だろう。舞など、さまざまなアクションを見せる初音太夫の周囲に回り込んで、カメラマンのように好きな角度でワンシーンを切り取れる。さらにPS4のシェア機能を経由して、TwitterやFacebookへの投稿が可能だ。
コントローラーを向けてカシャっと撮影。
フレームに収めた画像は……。
スクリーンショットとして保存されて。
シェアできる。
実際に体験してみたところ、3Dモデルとこの世界に込められたパワーがびんびん伝わって来た。
まず3Dモデルだが、人物はもちろん服や髪飾りなど細部におけるこだわりが異常だ。もともとが「花街詞合鏡」の舞台用で、遠距離で見るのが前提という3Dモデルのはずなのに、VRで近づいて見てもため息が出るほど細かいところが作り込まれている。よく見るとかんざしや遊郭の暖簾に、初音ミクの象徴としてファンが属性を与えたネギの花があしらわれていたりと、遊び心もたっぷりだ。
残念ながら、こちらが手を出してミクさんの服や髪を動かすことはできず(お触り禁止なのだろう)、顔を近づけ過ぎると「プレイエリアの外です」の表示が現れて警告されてしまうものの、それでも美麗な3Dモデルを目の前にできるのは、鑑賞環境が整えられた美術館で彫刻をみているような感覚に近い。写真を撮影できることもあって、同じシーンを何度も見たいという衝動に駆られる。ちなみにこの3Dモデルは、PANORAでも過去にトークイベントを開催したLATEENSAIL & LIVEGRAPHICSによるものだ。
さらにこの美麗なグラフィックを、PCに比べてどうしても処理性能が限られるPlayStation 4(しかもPS4 Proではない)で実現したところにもパワーを感じる。
VRアプリ化については、ドワンゴが担当。超歌舞伎をはじめ、小林幸子VRライブ、niconicoVR、ボカロ・UTAUキャラのARライブ、N高等学校のVR入学式・MR入学式など、数々の先端表現を実現して来た岩城氏が中心となって進めた。
その岩城氏によれば、年末年始に池袋西武「歌舞伎の世界展」にてHoloLensで展示した超歌舞伎アプリの開発ノウハウが役立っているという。元々、初音大夫の3Dモデルは、布を綺麗に動かすために17万ポリゴン(!)、4000個のボーン(!!)というごっつい作り込みとなっている。そこからモーションを事前に焼き込んだり、ファイルを最適化するなどして、なんとか3D表示性能が限られたHoloLensでの動作を可能にした(より詳細は岩城氏が書いたブログを参照)。そのHoloLensに比べれば、PS4のほうがより3D処理能力に余裕があるというわけだ。
そもそもこの超歌舞伎VRも、岩城氏が3Dモデルに感激して、「舞台だけで使ってお蔵入りにするのはもったいない。これは世の中に残さなければ」と使命感を持って生まれたアプリになる。「花街詞合鏡」には、「愛したのは、向こう側の人でした。」というキャッチコピーがついているが、まさにVRで次元を超えて会いに行けるわけだ。超歌舞伎VRは超会議の会場でも展示予定なので、ぜひミクさんファンは体験してほしい。きっとPlayStation VRが欲しくなると思います。
●関連リンク
・超歌舞伎VR 公式サイト
・超歌舞伎 花街詞合鏡
・製品情報