PlayStation VRの在庫不足は解消される?──SIE吉田氏に聞く2017年の展望

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ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の「PlayStation VR」といえば、昨年10月13日に発売されたプレイステーション 4で利用するVRシステムだ。日本でも非常に人気が高く、たびたび追加販売が行われているが、一方で発売から4ヵ月以上経過した今でも、ネットでは「入手できない」という声も多く聞かれる。

 
SIEはこの状況についてどう捉えているのか。ゲーム開発者向けイベント「GDC 2017」が開かれている米国サンフランシスコにて、同社ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏にインタビューした。

 
 

着実に普及台数は伸びていってる

 
──最初にみんなが言っていることだと思いますが、PlayStation VRについて全世界で91万5000台の実売ということでおめでとうございます。

 
吉田氏 ありがとうございます。正直なところ、やっと数字が言えて嬉しいという感じです。数値的には中途半端に見えるかもしれませんが、去年の盛り上がりにも関わらず「売れていないんじゃないか」と一部の方の予測に対して、ちゃんと伸ばしてますよと、着実に普及台数が増えてますよという情報をこのゲーム開発者が多く集まるGDCのタイミングで出したかったんです。

 
──一方で、日本でPS VRの供給がまだ不足しているという状況もあります。それに対する解決策はどう考えていますか?

 
吉田氏 いや、それは本当に申し訳なく思っています。先週末の追加発売で大手量販店で行われていた抽選の当選番号を見ると、結構数字が離れているんですよね。だからまだまだ多くの人に並んでいただいて、外れている人も多いということを改めて認識しました。

 
──そう、抽選から漏れている人も結構多いですよね。ネットで話題になってすごく面白そうだということで買いに行ったら、抽選に外れて手に入れられなかった。以前、12月17日の販売でもたまたま量販店を通りかかったら、早朝に行列ができて驚きました。

 
吉田氏 それで何度も買えなかった方には、本当に申し訳ないと思っています。生産を徐々に増やし、4月までには今よりは解消していきたいと考えています。

 
──特に日本でのPS VR熱が冷めてしまわないか、すごく機会損失だなと思っています。筆者の周囲のVR開発者の中には、国内が難しいので海外通販で手に入れたという話も聞きます。海外の方が比較的入手しやすいのでしょうか?

 
吉田氏 どの国、地域でも市場在庫は非常に少ないですが、まだ海外のほうが比較的買いやすいという話は聞きます。

 
──生産が追いつかないことのボトルネックになっているのは何なんでしょうか?

 
吉田氏 今までにない新しい製品ですので、われわれの生産計画が慎重だったというのが理由のひとつです。

 
 

100本以上のVRタイトルは本当に年内に出る!?

 
──「VR元年」と呼ばれた2016年を吉田さんとして振り返ると、どう総括されますか?

 
吉田氏 私が期待していた以上の元年だったかなと思います。それはSIEだけに限らない話で、ValveさんとHTCさん、OculusさんもTouchも含めて製品をリリースできましたし、ソフトも素晴らしいソフトが出てきました。想定以上の成果だったんじゃないかなと。

 
あと大きかったのはバンダイナムコエンターテインメント(バンナム)さんやグリーさんなどが、店舗などで遊べる「ロケーションVR」を展開されましたよね。それで多くの人が手軽にVRに触れられるようになって、今も「ドラえもんVR」とかが展開されている。ハイエンドVRが想像していた以上に認知が高まって、体験者からの評判もすごくいい。

 
我が家でも私が帰宅すると、PS VRを使った形跡があって、子供がクラスの友達を連れてきて遊んでいるんですよ。周りでも我が家しか持っていないようで、毎回違う子が来て、複数人に対応した「THE PLAYROOM VR」などで楽しんでいる。同様の話をほかでも聞きますので、家庭にハイエンドVRが入っていって、体験できる人の数がどんどん増えているのが現状だと思います。

 
──その成功を引き継いだ2017年ですが、先日の発表の中でVRタイトルを100本を出していくという話もありました。これについて国内の割合はどれくらいになるのでしょうか?

 
吉田氏 その100本出すというのはSIEがすべて制作しているわけではないので、われわれが知っている範囲で「PS VRで今年出しますよ」と言われたところの数になります。把握していないところでPC向けからの移植も出てくるため、個人的にはもっと増えると思っています。海外のVRタイトルを日本で出そうという努力も日本のインディーパブリッシャーと進めているので、それはすごくいい流れかなと思っています。

 
──国内と海外のVRコンテンツで傾向の違いは出てきていますか?

 
吉田氏 それはローンチのタイミングが一番違っていたかなと思います。どの地域で売るかはもちろんパブリッシャーさんの選択ですが、例えば私としては「サマーレッスン」は海外でも行けると思うのですが、そこは慎重に進められている。初音ミクは欧米でも出てますよね。

 
日本独自で続くタイトルもあるかもしれませんが、私の期待としては海外のインディーゲームでも面白いものが多いので、できるだけ早いタイミングで日本でも遊べるようにしていきたい。今後、「エースコンバット」とか大作も出てきます。全世界で受けいれられるタイトルもたくさんあるので、日本のパブリッシャーさんにも頑張っていただきたい。

 
──「サマーレッスン」は先日の台湾で、アジアでもリリースされることが明らかになってましたよね。結構意外と広がっていってる印象です。

 
吉田氏 サマーレッスンのよさというのはVRならではのものですから、世界中の人に体験してほしいなと思います。

 
 

参入が増えるのはいいこと

 
──大きな流れでいうと、VRは視覚や聴覚だけでなく、触覚や嗅覚も併用するようになって来ていると思います。

 
吉田氏 VAQSOさんとかね。

 
──そう! 前に「ホリエモン祭」の展示のときにいらして、VAQSOさんのデモを体験されてましたよね。「太めの男性デバイス」付きで。

 
吉田氏 あれはスゴかったので、バンナムの原田さんにぜひ体験してほしい。やはりそうした拡張のしやすさはPC系VRのよさですよね。1月のCESでも、今回のGDCでもそうだと思いますが、いろいろな企業でいろいろな取り組みを行っていて、それがお互いに刺激となっているいい状況だと思います。

 
今、VRに参加されている企業の方も増えて来ていますので、その流れは今後加速するでしょう。ひとつの企業だとやれることは限られていますが、いろいろな会社が参入することで他社がやっていないことを先にやろうといった広がりも出てきます。われわれとOculusさん、HTCさんも、誰かが先に3Dオーディオを入れたりとか、ヘッドストラップをつけたりとかでお互いに長所を伸ばして来たので、参加者が増えるのはすごくいいことだと思います。

 
個人的にはアップルがいつ来られるのか。ARかもしれませんが。あとはマイクロソフトさんのWindows Holographicも気になるところです。

 
──嗅覚や触覚というと、最近ではコーエーテクモさんのVR体験システム「VR SENSE」がPS VR搭載で話題になっていました。あの採用経緯は?

 
吉田氏 あれはもうコーエーテクモさん主導で、われわれが協力させていただいているプロジェクトです。「やるわよ!! みんなついて来なさい!!」みたいな感じで。

 
──(笑)。他者のVRゴーグルを採用するという手もあったと思いますが、なぜPS VRだったのでしょうか。

 
吉田氏 VR SENSEは、単体で動作して、そこまで大掛かりじゃなくていろいろな施設に置きやすいというところを目指しているものだと思います。コーエーテクモさん自身がプレイステーションで多くのゲームをつくっていただいているので、やりやすいということもあったのかもしれませんが、そこまで詳しい話はわかりません。

 
──ロケーションVRではHTC VIVE採用が目立っていて、PS VR採用は初めてだったのでちょっと驚きました。

 
吉田氏 それは「PS VRが初のロケーションVR進出」という感じではなく、あくまで家庭用の延長としてVR SENSEを位置付けています。ただ、われわれもロケーションVRはあまり力を入れてなかったのですが、徐々にやれる範囲でやっていこうということで、色々と検討を進めています。皆さんの期待に沿えるよう努力していきます。

 
──期待しています! 最後に「VR2年」と言っていいかわかりませんが、2017年、PS VRのここに注目してほしいというところを教えてください。

 
吉田氏 VRの技術は日進月歩で、われわれも研究開発レベルでいろいろ触っていますが、家庭用のゲーム機をベースにしてやるからには、ユーザーにとっては買いやすくて使いやすい、デベロッパーさんもつくりやすいという環境を整備していこうと考えています。

 
ハードにおいて一番大事なのはたくさんつくって、日本でも世界でもたくさん売っていくということですので、ここは引き続き努力していきます。コンテンツの新機軸も仕込んでいるのでそこに注目してほしいです。バンナムさんの「エースコンバット」など、期待できるタイトルも増えてきているので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
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