「BLAME! VR」をドスパラ店頭で体験 荒廃した都市の美しさと、霧亥の圧倒的強さを実感!
20日より、Netflixでの配信と全国ロードショーが始まったアニメ「BLAME!」(ブラム)。原作は、「シドニアの騎士」で知られる弐瓶勉氏が1997〜2003年に「アフタヌーン」に連載していたハードSF漫画で、20年の時を経て映画化されたことになる。
そして現在、この「BLAME!」の世界観をVRで体験できる「BLAME! VR」が、全国のHTC VIVE正規取扱店、および東京・渋谷のGALLERY X BY PARCOで開催している展覧会「『BLAME!』の世界展」にて6月15日まで期間限定で提供中だ(関連ニュース)。
PANORAでも、ドスパラ秋葉原本店を訪れて、実際にかぶって見たのでレポートしていこう。さらにアニメの監督をつとめた瀬下寛之氏、このコンテンツの制作を担当したカヤックの原真人氏にもインタビューした。
なお、VRコンテンツのネタバレががっつり含まれているので、知識ゼロで体験したい方はかぶってから読んでいただきたい。といっても、PCやスマホの画面で見るのと体験するのとではまったく異なるので、読んでから行ってもそんなに変わらないと思いますよ! ひとつだけ言っておきたいのは、ぜひNetflixでも劇場でもいいので作品を見ておくと、「ああー!あのシーン!」となること請け合いです。
ドスパラ秋葉原本店。右側にある入り口から5Fに上がるとVR体験フロアがある。
荒廃したBLAME!の世界を堪能!
BLAME! VRは、3分半ほどのコンテンツだ。プレイヤーはHTC VIVEをかぶり、主人公である「霧亥」(キリイ)の視点となって荒廃した都市を探索する。終盤、人間の「づる」が保安システム「セーフガード」から逃げてくるシーンに出くわすので、重力放射線射出装置で打ち抜くと……という内容になっている。
移動は全自動で前進していく仕組みなので、プレイヤーの操作はモーションコントローラーの人差し指のトリガーを引いて重力放射線射出装置を発射するだけ。VRに慣れてない人にとっても非常に簡単だ。
裏路地! パイプ! 階段! こういうのでいいんだよ、こういうので。右手には壁をカサカサと這っていくセーフガードが見えます。
コワァイ! この時点では重力放射線射出装置の充電ができておらず発射できません。
断崖絶壁まで歩いてきたら、階下に自動で飛び降ります。
都市のダークな感じがたまりません。こういうのでいいんだよ、こういうので(2回目)
……と、ふと周囲を見回すと、こちらに驚速で向かってくるセーフガードが! そして充電完了のマークも!
ファイア!
TUEEEEEEEEEE!
アニメでも見たあの火花が目の前に!
そして「づる」がおもむろに立ち上がって……。
かぶったヘルメットに手をかけて……。
顔を見せます。圧倒的にかわいい。ここは「目を見せろ」と霧亥になりきるのがポイントですね。
最後に作品の予告編が流れて体験終了となります。
実際に体験してみたその魅力は、なんといってもあの都市の中に入れるところだろう。薄暗い空間、放置されて汚れた床、壁を這うパイプ。BLAME! VRはどこを向いてもまさにあの荒廃した世界で、これは原作ファンなら感涙モノだろう。さらに重力放射線射出装置の人知を超えた圧倒的な強さを実感できるのもたまらない! ちなみに移動が自動での前進だったため「ちょっとVR酔いするかな?」と心配していたが大丈夫だった。
アニメを手がけたポリゴン・ピクチュアズの瀬下寛之監督にコメントを求めたところ、「急角度で狭い階段、危なげな手摺、圧倒的な存在感で迫りくるパイプや構造物。確かに自分たちが作ったはずの場面なのに、これほど驚かされるとは……。VR版『BLAME!』の世界は、まさに想像を絶する体験でした」と語ってくれた。
体験する場合は、ぜひ前述のように作品を見ておいて、頭の中でBLAME!の世界を想像しておいてほしい。というのも、BLAME! VRは3分半と短いため、いきなり心の準備なしにかぶっても気持ちが入り込む前に終わってしまう可能性が高いからだ。
霧亥はどんな思いで階層を登って来たのだろうか、づるはどんな思いでこの世界で暮らしてるのだろうか──。そんな想像のまま、ネットスフィアに接続する気持ちでVRゴーグルをかぶると、よりバーチャル世界を堪能できるはずだ。
劇場版の世界観や空気感をVRで再現
最後にBLAME! VRの制作を担当したカヤックVR部のリーダー、原氏へのインタビューだ。原氏といえば、「シドニアの騎士」のVRコンテンツである「継衛発進体験装置」を手がけた人物としても知られる。また、弊誌読者なら、アイカツ大好きマンとしてご記憶の方もいらっしゃるかもしれない。
──BLAME! VRのコンセプトは?
原 内容的にはアニメの冒頭1シーンを下敷きに、VRで体験しやすいようにある程度アレンジを加えたものになっています。VRの体験中、プレイヤーの視点の主である霧亥は高い建造物から下に飛び降り、直後に重力子放射線射出装置を発射することになりますが、劇中でもまったく同じシーンがあります。なので、アニメを見た上で体験される方は「あのシーンで霧亥はこんなふうに見えていたんだ!」という驚きを感じると思われます。
また、劇場版未見の方であったとしても「広大なスケール感の階層都市、無秩序に作られた建造物」「重力子放射線射出装置の迫力」という、BLAME!の世界でも特に魅力的なところは充分に堪能できるようにつくれたと思いますので、ぜひご体験いただきたいです。
──苦労した点は?
原 今回はVRで流用できるアセットがあまり多くなかったため、作り起こす必要のある素材が大量にあったということでしょうか。キャラクターも、VRで用いるにはパーツ数・メッシュ数が膨大だったこともあり、現実的な水準になるまで地道にメッシュ削減、結合、さらにセットアップ(スキニング)をしなおし、アニメーションも作り直しました。
しかし、作りものが多かったとは言え、ポリゴン・ピクチュアズさんにデータのみに限らず色々なご協力をいただき、アニメ版のルックや動きはかなり再現できたのではないかと思います。
特に人物モデルについては、もともとのモデルの造形クオリティが非常に高くて驚きました。しかも、3DCGの良さを活かしつつ、トゥーンレンダリングで表示したときには2Dアニメ的な可愛らしさが表現できる3Dモデルに仕上がっていると思います。通常の2Dアニメーションと比べて違和感を感じる方はほぼいないのではないでしょうか。
VR上で表示した際、劇場版のキャラクターと比べてあまり違和感のない形で再現できたのは、もとの造形が持っているポテンシャルによるところが大きいのではないかと考えています。
──制作ツールは?
原 Unityで、その表現力、性能があったからこそ、VRで近代的なアニメーションの画作りをすることにある程度成功したのではないかと思います。つまり、緻密に描きこまれた背景にセルのキャラクターを置き、色調が整理され、撮影効果によるエフェクトが加味されるということです。
これはエクシヴィのMuRoさんの解説に詳しいのですが、最近のアニメではほぼ当たり前であるこういった表現をVRである程度再現できたのは、最新のUnityに搭載された表現機能によるところが大きいです。2、3年前のUnityのバージョンではこの表現はできなかったと思います。
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— 伊藤周 (@warapuri) October 24, 2016
ただ、開発中にそこを頑張って目指したというよりは、劇場版の世界観や空気感をVRで再現しようと頑張った結果、最終的にスクリーンショットを撮ったら最近のアニメっぽい画にちゃんとなっていた、という偶発的なところも大きいです。ネットから時間指定で予約して無料で申し込めますので、Netflixや劇場でアニメを見られた方はぜひVRもあわせてご体験ください。
ドスパラではほかにもVRコンテンツが色々無料体験できるので、一緒に遊んでくるべし!
©弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局
(TEXT by Minoru Hirota)
●関連リンク
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