
そのはじまりは誰かの夢の欠片。彼岸(あの世)で生まれ、此岸(現世)の遥か彼方まで、魂の込められた歌声を響き渡らせようとしているVSinger百瀬ヒバナさん。2020年3月から活動を開始すると、配信に限らず、様々なライブやイベントにも出演するなど積極的に活動。個人勢でありながら、大ヒット曲「紅蓮華」の作者である草野華余子さんが作詞作曲した「烈火」をはじめ、全8曲ものオリジナル曲を有している。
2025年4月26日(土)に開催されたPANORA主催イベント「VTuberのあそびば × おしゃべりフェス in 超会議2025」の「VTuberストリートライブ」でも、1stオリジナル曲「不死鳥」などを熱唱して、会場の観客と配信の視聴者を魅了。ニコニコ生放送ギフトランクで2位に入賞し、特典のPANORA特集記事掲載権をゲットした。
この記事では、音楽への熱い思いを中心に、7月に結成が発表されたオルタナティブバンド「FLANICA」での活動など最新情報も語ってもらった。なお、文章化にあたって、百瀬さんの特徴的な口調は、一般的な会話文へと調整している。
*本インタビューは、「VTuberのあそびば × おしゃべりフェス in 超会議2025」の「VTuberストリートライブ」ニコニコ生放送ギフトランク2位入賞者に贈られた記事です
自分が届けるものはリアルでありたい
──「ニコニコ超会議2025」内で開催された「VTuberストリートライブ」に出演しよう思った理由を教えてください。
百瀬(敬称略・以下同) 以前からニコニコ動画が大好きだったので「超会議」に出てみたかったし、路上ライブもいつかやってみたかったんです。その二つが合わさっていたので、絶対に出たいと思い応募しました。
──バーチャルな存在が個人で路上ライブをするのは、かなり大変ですよね。
百瀬 リアルの方でも大変なことはあると思うのですが、仰るとおり、バーチャルだと姿を見せるためのモニターなどを置く必要もあるし、すごく大変ですよね。でも、自分のファンの方だけではなく、通りすがりの方とか、色々な方もいらっしゃる中で自分の歌を届けてみたいとは思っていました。だから、今回、イベント参加という形で経験できたのは、非常に嬉しかったです。実際、私のファンの盛り上がりに引っ張られ、足を止めて聞いてくださる方もけっこういらっしゃって、すごく嬉しかったです。現地に友人が来てくれていたんですけど、私の出番も「ものすごく盛り上がっていたよ」と教えてくれました。
──ライブでは、アニメ「ジョジョの奇妙な冒険」の主題歌「ジョジョ~その血の運命~」と、アニメ「シャーマンキング」の主題歌「Over Soul」をカバー。最後は、オリジナル曲「不死鳥」を歌いました。やはり、「不死鳥」は、百瀬さんにとって特別な曲ですか?
百瀬 そうですね。「不死鳥」は、私の最初のオリジナル楽曲で、2020年に活動をはじめてから半年後くらいに出させていただいた曲なんです。原点であり最終点でもあるというか……。私の中でも本当に一番大事な曲といっても過言ではないかもしれません。
──ライブ当日、特に印象的だったことを教えてください。
百瀬 「不死鳥」の中に、みんなで叫ぶパートがあるんですけど、いつも応援してくださっているファンの方が、初めて聴くお客さんも一緒に叫んでもらえるように、叫ぶ言葉のカンペを作ってくれていたんです。私からは見えない位置に立って、カンペを見せて下さっていたので後から知ったのですが、そのことはすごく印象に残っています。ウチのリスナーさんは、自分たちで楽しむ術を本当によくご存知で、さらに、周りも盛り上げて一緒に楽しもうとしてくださるし、絶対に迷惑をかけたりもしないんです。すごい熱量を持って応援してくださる方が本当に多いし、いつもありがたいと思っています。
──素晴らしいファンの方々に応援されているのですね。百瀬さんは、2020年に活動を始めて以来、常に変わらず大切にしていることなどはありますか?
百瀬 変わらないのは、まずシンプルに、歌を届けたいということ。あと、私自身がバーチャルで、インターネットを介さないと皆さんには見えない存在だからこそ、自分が届けるものはリアルでありたいという思いがあって。生歌ということには、すごくこだわっています。
──逆に、この5年の間に大きく変化したことはありますか?
百瀬 実は当初から、いつかバーチャルの体を超越していきたいという気持ちもあって。今年、「FLANICA」というバンドを組んで活動を始めたことは、そこに繋がる一歩でもあり、5年間の活動の中でも一番大きな変化点なのかなと思っています。この5年間は、本当にいろいろなことがあって。2020年から2022年までは、たくさんのお客さんにも観ていただけて、自分としてはすごく順風満帆だったんです。
でも、2023年に1か月に1回配信できたら良い方だという状況になり、実質、活動休止せざるを得なくなってしまって。やっと2024年に「再燃」という形で活動を再開させていただき、今年は「飛び火」をテーマに、自分がどんどん色々なところに飛んで行って、火を付けているところ。バンドは、その一つでもあって、また新たに着火できている感じです。
いつか誰かの体を借りて此岸に飛んで行きたい
──「歌」や「バーチャル」とは、百瀬さんにとってどういう存在ですか?
百瀬 まず、歌は、私、百瀬ヒバナの存在理由そのもの。百瀬ヒバナは、彼岸(あの世)で生まれた執念の塊ですが、その執念の対象、どうにかして掴みたいものが歌なんです。でも、私は空っぽな虚で、ある意味、幽霊みたいな存在なので、そのままだと此岸(現世)のみんなには観てもらえないし、歌を届けることもできない。インターネットやバーチャルという特別な眼鏡のようなものを介することで、ようやく歌を届けることができるんです。
だから、バーチャルでの活動をほとんどできなかった2023年は、私にとっては、ずっと動けなくされていたのと同じ。歌を届けることができず、すごくフラストレーションを抱えた時間でした。その期間に離れてしまったファンの方もたくさんいらっしゃるので、すごく悔しかったです。
でも、私は、日本武道館やZeppや豊洲PITに立ちたいといった具体的に目指すものもあるし、YouTubeチャンネルの登録者さんも10万人、100万人と増やして、もっともっと大きな世界に百瀬ヒバナの歌を広げていきたい。それらのことを何が何でも叶えるんだという執着を持ちながらやっているのが、私にとっての音楽活動であり、バーチャルでの活動です。
──7月4日の配信でも詳しく語られていますが、先ほどのお話に少し名前が出たバンド「FLANICA」での活動についても教えてください。どのような経緯で結成されて、どのような活動を行っていくバンドなのでしょうか?
百瀬 このバンドプロジェクトが最初に動きだしたのは、去年の夏、mikiちゃんという人と再会したことがきっかけでした。その頃、百瀬ヒバナとして「再燃」をして、どういう風に活動していったらいいのか、すごく考えていた時期で。それまでもオリジナル曲を作って、ライブでは本当にいろいろな箱(会場)に立たせていただいたりはしていたんですけど、他のVSingerさんとの差別化や、自分が本当にやりたいことなどを考えた時、一人での活動に限界も感じていたんです。それで、何かないかなと探していた時に、ひょんな事からmikiちゃんと再会をして。mikiちゃんとの再会については、Xにイラストを上げているのですが、土砂降りの中、私に傘を差しかけてくれたような存在なんです。
──mikiさんは、「FLANICA」のリーダー兼バンマスの方ですね。
百瀬 はい。以前から興味のあったバンドができないかなと考えていたタイミングで、mikiちゃんと再会したら、「運命かよ!」ってくらいに、お互いの利害が一致しすぎていて(笑)。そこから、バンドプロジェクトが動き始めました。今、「FLANICA」は、私たちを含めて9人いるのですが、全員、お仕事や学校といった理由があり、本当にやりたい音楽活動ができないフラストレーションを感じていた人たちなんです。結成時に「それぞれが唯一の火花でありながら、集まり、一つに輝き、大きな花になる」というキャッチコピーを発表したのですが、まさにそんな感じ。みんなの仕事終わりや学校終わりに活動をしています。
──「FLANICA」としての目標があれば、教えてください。
百瀬 やっぱり、バンドでワンマンをやりたいです、それが直近……といっても1年後くらいまでの大きな目標です。そのためにも、まずは我々の音楽をもっともっと多くの人に知ってもらいたい。バーチャルな歌手がリアルの人たちとバンドをしているのって、たぶん、かなり珍しいと思いますし。今は、カバー中心ですが、ショート動画をどんどん上げている状況です。
──百瀬さんのファンや、この記事を読んでくれている人の中にはいないと思いますが、VTuberやVSingerに抵抗がある人も、バンドということをきっかけに「FLANICA」の音楽を聴いて、バーチャルな存在への意識を変えてくれるかもしれないですね。
百瀬 仰るとおり、百瀬ヒバナのファンの方々は、100%VTuberという存在を肯定している方しかいないんです。なぜなら、私がVTuberだから。でも、世の中には「なんで、この歌手、バーチャルなの?」って思う人も、まだまだいると思うんです。だから、いつか誰かの体を借りて彼岸から此岸に飛んで行き、借りた体でも活動していくのは、私にとって、この先の目標でもあります。
チャンネル登録者10万人は、目指していきたい
──この記事を読んで百瀬さんのことが気になった人に特にオススメしたいYouTubeチャンネルの動画やアーカイブを教えてください。
百瀬 まずは、「百瀬ヒバナの歌」という再生リストがあるので、そこで歌ってみたなり、オリジナル曲なりを聴いていただけれ嬉しいなと思います。MVは、私が「チームヒバナ」と呼んでいるお二人、私にとってのお母さんであるイラストレーターのあらへなすさんと、アニメーターのしゅうへいさんが作ってくださっていて、映像もすごいんです。どれも素晴らしいのですが、5月に公開した「落ちた星」のMVは、特にすごいアニメーションになっているので、ぜひ観て頂きたいと思っています。
──配信に関しては、基本、歌枠ですね。
百瀬 そうですね。毎週、日曜日に配信をしています。私、お客さんの名前や、どんなことを話してくださったかを覚えるのはけっこう得意なんです。初見の人も、ぜひ気軽に遊びに来て、コメントしていただけたりすると嬉しいです。
──では、最後に、改めて今後の目標を教えてください。
百瀬 長期的には、YouTubeのチャンネル登録者10万人は、目指していきたいと思っています。個人勢で、やれることや時間に限界がある中、これだけ愛してくださるファンの皆さんが世界中にいらっしゃるのは、本当にありがたいこと。そんなお客様の熱、火種をさらにホットにしつつ、さらに新しいお客様に伝播させて、一緒に百瀬ヒバナを作っていって頂きたいので、数的な目標として、まずは10万人と考えています。
先ほど、目標に挙げた武道館、Zepp、豊洲PITなども、その道に続いていると思いますし。すでに、そういった舞台に立ち、いろいろな世界を広げているVSingerの方々がいらっしゃいますけれど、私も負けずに、多くのファンの方々に追って頂ける存在になりたいというのが、長期的な目標です。
ここ1年くらいは、「再燃」からの「飛び火」で、こういった取材もそうなのですが、色々なところに飛んでいくって事が百瀬ヒバナとしての目標。そのためにも、毎週の配信だったり、自分のオリジナル曲だったりを大事に発信していき、応援してくださる方を増やしていきたいです。
(TEXT by Daisuke Marumoto)
●関連リンク
・百瀬ヒバナ(X)
・百瀬ヒバナ(YouTube)

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