VRChatの創作へのリスペクトをひしひしと実感 Tokyo Mood by BEAMS×カデシュ・プロジェクト、リアルイベントレポート【PR】

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VRChatに関わるリアルイベントは年々数を増やしつつある。巨大なオフ会でもありつつ、様々な創作物や催し物を持ち込み、訪れる人を楽しませるきっかけとして、着実に根付いている印象だ。

12月20日に実施した、セレクトショップのBEAMSによる「Tokyo Mood by BEAMS Real」と、VR映像制作スタジオのカデシュ・プロジェクトによる「カデシュフェス2025」もその一つ。全国からVRChatユーザーが東京に集まった「VketReal 2025 Winter」と同日に、両イベントは渋谷の同じ会場で開催を迎えた。

そこは、スペースは決して広くないものの、カデシュ・プロジェクトによるクリエイティブの数々と、「Tokyo Mood by BEAMS」のワールドを訪れるコミュニティーにリスペクトを込めて寄り添うBEAMSの想いが詰め込まれており、リアルイベントの理想形ともいえる世界が広がっていた。本記事にて、その様子をお伝えしよう。


BEAMSとカデシュの歩みを振り返る

はじめに、BEAMSとカデシュ・プロジェクトの関係性について触れておこう。

リアルのセレクトショップと、VRChat生まれのクリエイティブスタジオ。カラーの異なる両者の出会いはVRChatワールド「Tokyo Mood by BEAMS」の制作がきっかけだ。

「Tokyo Mood by BEAMS」(2025年12月撮影)

BEAMSのVRChat上の拠点として企画された「Tokyo Mood by BEAMS」は、カデシュ側の制作チームによって、さながらドラマや映画のセットのような、ハイクオリティな「リアルな東京の街」に仕上がった。2024年5月の公開後、本ワールドはBEAMSの新作3Dアイテム発表やイベント開催の場だけでなく、フォトスポットといった用途でもユーザーの支持を集めている。

BEAMSは、2020年からVRイベント「バーチャルマーケット」へ7回もの出展を重ね、さらにVR接客や3D衣装販売などの施策も展開しており、VRChatカルチャーへの理解度が高い企業といえる。特に、このVRChat方面の施策に長く関わる木下香奈さんは、自身もユーザーイベント「リアルクローズ集会」のスタッフをつとめており、その解像度はひときわ高い。こうした土壌をもとに、BEAMSの3D衣装のモデリングを2021年から数多く担当してきたCornetさん経由で「Tokyo Mood by BEAMS」にカデシュをアサインし、クリエイターと密接にコラボレーションしてきた。

「Tokyo Mood by BEAMS Real」と「カデシュフェス2025」の同時開催は、こうした両者の歩みが重なった結果と言える。加えて、近年増えつつあるリアル開催のVRChat関連イベントの波も後押ししているだろう。


許諾確認100件超!?
BEAMS制作のVRChatファッションスナップZINEにカルチャー愛を見る

「Tokyo Mood by BEAMS Real」&「カデシュフェス2025」の会場は、東京・渋谷区のLAIDOUT SHIBUYA。渋谷駅からほど近いレンタルスペースで、アクセス性は抜群だ。

「Tokyo Mood by BEAMS Real」&「カデシュフェス2025」 入口看板

会場内は、BEAMS側のコンテンツと、カデシュ側のコンテンツを半々で設置。BEAMS側は、「Tokyo Mood by BEAMS」にある町内会掲示板を模したメッセージボードと、VRChat向けに3Dモデル化したもののリアル版で構成したアパレル販売コーナー、そして富士フイルムのメタバース空間「House of Photography in Metaverse」とのコラボでVRフォトコーナーを展開していた。

BEAMSアパレル販売コーナー。3Dモデル化したシルバーアクセサリーの現物(数万円)も販売
フルカラーで印刷されたVRChatファッションスナップZINEには、29名のおしゃれさんが写る

とりわけ目を引いたのは、「FUJIFILMプリント&ギフト」を活用して制作されたZINE(非売品・展示用)。「Tokyo Mood by BEAMS」で撮影した、おしゃれなファッションに身を包んだ29名のファッションスナップを掲載したフルカラー写真集だ。写真の出来もあいまって、「バーチャルな街で撮ったファッション誌」として出色の出来である。

そのクオリティもさることながら、制作過程にも驚かされた。スナップページには使用アバターや衣装などがクレジット掲載されているが、なんとその全てに掲載許諾を取ったというのだ。100件をゆうに超える連絡の苦労は想像を絶する。

それでも「ぜひ作りたかった」と語るBEAMSチームの言葉からは、文化への愛と理解が感じられた。幸いにも、許諾連絡はほぼ即OKだったそうだ。そんなBEAMSの力作ともいえるZINEは、後々「Tokyo Mood by BEAMS」にデジタル版が設置予定だ。


こだわりてんこもり
アトラクションも展示物もガチなカデシュ提供コンテンツ

一方のカデシュ・プロジェクトは、自主製作の3DCGアニメーション映画とその世界観を体験できるVRイベントを中心に展開しているクリエイティブスタジオだ。この「カデシュフェス2025」はその世界観に基づいたファンミーティングで、内容は物販とアトラクションがメイン。アトラクションは、銃の組み立てからプレイできるシューティングゲームや、金魚ならぬ「サメ」すくい、そして特殊な器具を用いた空気砲の射的など、細部までこだわりを感じるものが並んでいた。

映画「プロジェクト:エメス」にも登場した拳銃「HMT-38」(モデルとなった3Dモデルは「電磁加速式 次世代型けん銃」。デザイン・3Dモデル製作:Hatoya、プロップ製作:Garito)

カデシュが製作した映画に登場する銃器のプロップガンも展示されていた。さすがに手に取ることはできなかったが、もともとは3Dアイテムだったものが、眼前に実体を得て現れるのはやはり感動する。

ちなみに、入場時には「ホテル・カデシュ ホンコンのカードキー(を模したカード)」が、アトラクションの参加賞には短編映画「HERO-埼馬県警未詳事件対策課-」の登場人物の名刺と、一風変わったアイテムが進呈された。これもまた作品世界から飛び出してきたもの。ファンほどうれしい粋なプレゼントだ。

入場プレゼント「 ホテル・カデシュ ホンコンのカードキー」

細かな作り込みはスタッフ側にも当てはまる。カデシュ作品のキャラクターや、自身のVRChat上での姿を徹底的に再現している人が多かったのだ。道行くスタッフからもカデシュの世界観がダイレクトに伝わり、そこからもイベントに込められた気合を感じさせられ、ワクワクさせられた。ちなみに、彼らの一部はツーショットチェキにも対応していた。

中田らりるれろさんが制作中の映画「NINE2」のキャラクター・XAXAも一足早く登場

VRChat内だけでなく、リアルでもクリエイティブにこだわり、その世界観をリアルにまで鮮やかに展開してみせるカデシュ──その極致とも言えるものが「裏・新光町からの脱出」だった。


臨場感MAX!
「裏・新光町からの脱出」 が本気すぎる

「裏・新光町からの脱出」は、本イベント最大の目玉ともいえる、リアル謎解きゲーム。カデシュ・プロジェクトとその協力スタジオであるナカダプロダクションが、2024年にTokyo Mood by BEAMS内で実施し大きな話題を呼んだホラーコンテンツ(VRお化け屋敷)の続編にあたり、まさにBEAMSとカデシュのリアルイベント同時開催の場に相応しい内容だ。今回、筆者はイベントオープン前にこの謎解きを特別に体験させてもらった。

目玉アトラクション 「裏・新光町からの脱出」

コーナーはLAIDOUT SHIBUYAの奥に鎮座。巨大なタイトルロゴと背景の存在感は圧巻。商業施設の一角にあっても不思議ではない区画だ。

「裏・新光町からの脱出」 イントロ映像。 カデシュ・プロジェクト人気キャラクターの小林光隆と二階堂ダニエルが邂逅を果たす

入場後、まず最初にゲームの背景シナリオを伝える特別映像を視聴した。この謎解きゲームは、随所に2024年のVRお化け屋敷の要素を匂わせる形でVRChatとワールドとリアルイベントのクロスオーバーを果たしている。同じく2024年のVRお化け屋敷のストーリーを原案とした映画「HERO-埼馬県警未生事件対策課-」のキャラクターが登場するのがその最たる例だろう。

そして、「HERO-埼馬県警未詳事件対策課-」の登場人物だけでなく、カデシュ・プロジェクトのメインシリーズ「ホテル・カデシュ」の人気キャラクターたちも出演。カデシュ関連作品のクロスオーバーが実現していた。これはカデシュファンにはたまらないでしょう……!

ブリーフィングが終わったら、いざ謎解き開始。目的は「超常物体『紅守石』の鎮静化」。その手がかりを探し、必要な儀式を実行する必要がある。制限時間は10分だ。

「裏・新光町からの脱出」 謎解きエリア。プロップの作り込みがすごい
「裏・新光町からの脱出」 謎解きエリア。異界の様子が常に映される

暗所に展開された謎解き現場は、ガレキや散らばったチラシなど、なにかの収録現場と思ってしまうほどの作り込み。極めつけは、異常地帯の様子と、そこへ突入したキャラクターの小林光隆、二階堂ダニエルの2名の姿が壁に映されていること。リアルタイムで流れる映像の存在が、リアルとバーチャルの垣根を強く揺るがしていた。

シチュエーションは臨場感たっぷり。そして謎解きも同様に臨場感にあふれ、そして難易度も割と高め。鎮静化の儀式の手順などがおさめられた書類を探し、会場内にある物品を実際に配置する必要がある。リアリティあるデザインのマニュアルを解読し、儀式を遂行する体験はとてもスリリングだ。

「裏・新光町からの脱出」謎解きヒント資料。さながら組織内ドキュメントのようなデザイン

筆者は今回、生粋のカデシュファンであるライター・東雲りん氏とともに挑戦。同氏の知識にも助けられたが、マニュアルを解読しきれず、逆に「紅守石」が活性化する儀式を仕掛けようとし、あえなくタイムアップとなった。渋谷の街が、我々の不手際で吹き飛ぶ――前に、P.R.O.の介入によってなんとか脱出した。ありがとう……。

謎解きには失敗したものの、ここまで世界観を作り込んだ場所で、特別に用意された映像も見ながら謎解きに挑めること自体、得難い体験だ。興行化されてもなんら不思議ではない、出色の出来のアトラクションだった。


“Create, Share, Play”が息づく空間

町内会掲示板を模したメッセージボードは、閉会時には満杯になっていたようだ

先日開催されたVRChat公式ビジネスカンファレンスでは、「日本のクリエイター総数は他のすべての国のクリエイター総数よりも多い」という驚くべき事実が明かされた。

多種多様なクリエイティブが飛び交う世界が、日本のVRChat文化圏だ。その担い手と企業が手を取り合って、大きなものを生み出すムーブメントが、ここ数年は続いている。

映像作品やロールプレイイベントなどで、こだわり抜いたクリエイティブを発揮し続けたカデシュと、そのクリエイティブに惚れ込んで、リアルとの架け橋を見出すBEAMS。双方ともにリスペクトしながら生み出した「Tokyo Mood by BEAMS」は、ついにリアルの渋谷に出現し、大勢の人でにぎわうイベントを生み出すに至った。クリエイター/コミュニティと企業のあり方として、理想形の一つを描いていると言えるだろう。

なお、イベント当日は、一時は整理券方式に移行するほど多くの人が訪れていたが、その中にはカデシュらしい装いの人も一定数見られた。コンテンツを発信する側も、それを楽しむ側もクリエイティブを発揮するのは、日本のVRChat文化圏ではしばしば見られる。VRChatがかつて掲げたキャッチコピー“Create, Share, Play”は、12月20日の渋谷でたしかに花開いていた。

会場では、VRChat向け3Dモデルでもお馴染みの「クラフトボス 世界のTEA」が配布されていた

(提供:BEAMS、TEXT by 浅田カズラ


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