【体験レポート】プラド美術館×東京タワー×VR! 上海・アルゼンチンで実施された「プラド美術館VR展」が日本上陸

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東京タワーで実施中のVRアート展「Art Masters:プラド美術館所蔵品 VR展」。期間は2025年12月23日から4月12日まで、東京タワーに入ってすぐのタワーホールAで楽しむことができる。この展示は、プラド美術館の作品をVRゴーグルを装着して歩いて回って楽しむロケーションベースVR展示となっている。ゴヤやベラスケス等、スペインを代表する作家の作品を含め5作品を題材に製作され、上海で10万人、アルゼンチン2万人を動員。そして今回、日本に初上陸した。

展望を語るティーケーピー担当者

プラド美術館VR展はティーケーピーとAquaVisionによる共同での実施となっており、ティーケーピーの担当者は「今後、このVRアート展を全国規模に展開することを目指している」と語った。

一報を聞いた時から、すでに海外で人気を博したプラド美術館のVR展の東京タワーでの実施、VR業界に初参入のティーケーピーなど、VR業界側から見ると、なにやら今までの流れと一味違う流れを感じていた中、年明けてから少し経った1月19日にメディア向け体験会が行われた。


プラド美術館VR展で体験できるもの

「Art Masters:プラド美術館所蔵品 VR展」という名称の通り、スペイン・マドリードにある、プラド美術館の所蔵品をVR作品として楽しめるコンテンツになっている。

※VR体験のイメージ

VRというと、VRChatに代表されるVR空間上でコミュニケーションを楽しむものだったり、敵と戦ったり障害物を避けたりするようなVRゲームを想像するかもしれない。本コンテンツを含め、「ロケーションベース型のVRコンテンツ」の体験は高価なPCを買ったりせずにその場所に行きさえすれば楽しめて、今回の展示は歩いて見て回る事がメインなので、コントローラーすら持たなくてよく、体験のハードルは低い。どちらかというと、美術展やアートに興味を持っている方におすすめできると思った。

観られる作品は全部で5つ。ブリューゲル&ルーベンス《視覚の寓意》、ベラスケス《ラス・メニーナス》、ヴェロネーゼ《ヴィーナスとアドーニス》、ゴヤ《魔女の安息日》、ボス《快楽の園》。

※VR体験のイメージ

スタート地点でゴーグルをかけたらすぐにコンテンツがはじまり、ストーリーに従って歩くとそれぞれの絵画作品を鑑賞できる流れになっていた。

ゴヤ《魔女の安息日》
《魔女の安息日》が壁に描かれている

中でも、ゴヤの「魔女の安息日」はVRならではの見どころがあると感じた。これは、「黒い絵」と呼ばれる、彼が住んでいた家の壁面に油彩で描かれた14の作品のひとつ。現在では14作品すべてがそれぞれ独立した絵としてプラド美術館に所蔵されているが、本体験では、実際に壁画として描かれた時の様子を体験することができる。

※《魔女の安息日》VR体験のイメージ

さらに、ゴヤがどのような気持ちで壁面に描いたのか追体験するような作りになっているのも興味深かった。ショッキングな絵面で有名な「我が子を食らうサトゥルヌス」も、黒い絵のうちのひとつ。ああ、あれね。と思い浮かぶ方も、初めてゴヤを観るという方も、美術館で作品のキャプションにたまに書かれている「絵が描かれた時の作家の状況」それ自体がコンテンツとして表現されているのを楽しめるはずだ。

《ラス・メニーナス》の鑑賞ポイントを解説してくれる

実際に作られた時の様子や心象風景を表す以外にも、作品の特徴や観るポイントを聞いて楽しめたり、絵画に入り込んで作品の世界観を味わったりできるのは、高尚な趣味と捉えられがちな「美術鑑賞」という要素を分解し、VRで楽しむ形での美術鑑賞の再解釈と考えると、なかなか意欲的なコンテンツだと感じた。

《快楽の園》VR体験のイメージ
《快楽の園》VR体験のイメージ

ストーリーに沿って鑑賞を続けた先にあるのが、ボス《快楽の園》。最後の作品にふさわしく、祝祭ムードただよう光景が広がる。

ボス《快楽の園》

実際の作品でも、「ウォーリーを探せ」や「曼荼羅図」のような、さまざまなモティーフが所せましと描かれるカオスなムードを感じた。この作品が持つ強いパワーや豊かな創造力を純粋に楽しんで欲しいという願いを込めたVR作品ではないだろうか。

5作品を鑑賞し、3~40分の没入体験。基本的にはストーリーに沿って歩いて鑑賞する形だが、一部、エレベーターが上昇や下降をする場面などもあり、VR酔いしやすい方はそういう場面では無理せず目をつぶるといいだろう。一緒に体験している人がいれば、都度コミュニケーションを取りながら進めるのは安心できる。

※なお、イメージ画像ではVR内で同行者がそのまま見えているようなイメージになっているが、実際にはほかの体験者は「石像」として表示されている。


注目が集まるロケーションベース型VR

実際に体験している様子

ロケーションベース型のVRコンテンツは、場所を基点に複数人が同時に体験できることが大きな特徴。美術鑑賞は一緒に行く方と感想を言い合ったりするのも楽しみのひとつなので、それぞれがゴーグルをかぶっていても、同じタイミングで同じコンテンツを体験できるのは、ユーザー側としては嬉しい。

2024年12月に横浜でオープンした「イマーシブジャーニー」が1年で来場者12万人に到達、名古屋での開業が1月23日に迫っているほか、中野ブロードウェイで2025年10月にオープンした「Zombie Storm」も、12月に福岡でのオープン、さらに熊本でのオープンも今年3月に予定しているなど、歩きまわれるロケーションを用意し、VRゴーグルをかぶって複数人で歩き回れる「フリーローム型のロケーションベースVR」の注目度はかなり高い。

約9m×23mのスペース

もともとスペインで制作されたという本コンテンツは約9m×23m四方の空間で、30分につき最大35人が同時に体験可能とのこと。横浜に常設施設を構えるイマーシブジャーニーと比べるとコンパクトだが、それでも、だいたいテニスコートと同じくらい。ローカライズを担当したAquaVisionによると、この広さが確保できる場所であればどこでも実施できるという。

貸し会議室事業などを手掛けるティーケーピーは今回でVR業界初参入。貸し会議室事業などを手掛ける同社は昨年AquaVisionへ出資し、関連会社化したうえで、VR業界に参入した経緯がある。これまで別の業態で手広く事業を行ってきた会社がロケーションベースVRの分野に参入したこと、そして、すでに箱は持っているというのは大きく、今後の展開も大いに気になる。

●Art Masters:プラド美術館所蔵品 VR展(価格はすべて税込)
・会期:2025年12月23日~2026年4月12日
・場所:東京タワー1階 タワーホールA
・【通常チケット】平日券:4000円、 休日券:4500円
・【特典付きチケット(デジタル記念写真プレゼント付き)】平日券:5000円、 休日券:5500円
・【U35 割(若者アート応援)】平日休日共通:2800円
・【U18 割(学生アート応援)】平日休日共通:1200円 ※大人1名の同伴必須


(TEXT by ササニシキ


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