「VRは現実の代替ではない」 ライブも、モデルも、ワールドも、バーチャルシンガー・yosumiが残す多彩なVRChatでの足跡

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今や著名な配信者やVTuberも訪れることが増えつつあるVRChat。様々な人との交流を楽しむ人はもちろん、自由なプラットフォームであることを活かし、コンスタントな作品発表や活動の場として活用する人も見られます。

バーチャルシンガー・yosumiさん

バーチャルシンガーのyosumiさんもその一人。これまで自身が題材となったVRChatワールドが3つも公開されているほか、ライブ出演や衣装モデルといったVRChat上での活動も始めています。

筆者はこれまで、その足取りをじっと見つめていたのですが、2025年からは特に精力的。というわけで本記事では、yosumiさんに関わるVRChatワールドや、2025年11月に実施されたyosumiさん出演のトークイベントの内容などをご紹介。

VRChatを舞台に、VTuber/バーチャルアーティストはどんな活動ができるのか。その一例にぴったりなyosumiさんの足跡をお伝えします。


ワールド紹介① 生誕記念ライブ会場を再現した「The Blue Alley

yosumiさんは2019年10月から活動を開始。クラブシーンを中心にバーチャルシンガーとして活動をしており、YouTubeでは歌動画をメインに投稿しています。

そして、2022年9月14日に開催された生誕記念ライブ「yosumi birthday live 2022」の舞台を再現したワールドが「The Blue Alley」。2023年1月に公開された、最初のyosumiさん関連ワールドです。

VRChatワールド「The Blue Alley」/筆者撮影
VRChatワールド「The Blue Alley」/筆者撮影

生誕ライブのダイジェスト映像再生以外にギミックは特にないですが、yosumiさんのモチーフである青薔薇が散りばめられた路地裏は、単純に見栄えがよいロケーションです。同時に「バーチャルライブ会場のアーカイブ」という側面もあり、自身の活動の足跡を、実際に訪問できる形で残しておくのは興味深いところです。


ワールド紹介② ワールドからあなたへ干渉する。歩くMV 「讐復を能える。for VRChat

続いて紹介するワールドは「讐復を能える。for VRChat」。yosumiさんが客演したアメリカ民謡研究会さんの楽曲「讐復を能える。」をVRChatワールド化したものです。

VRChatワールド「讐復を能える。for VRChat」/筆者撮影
VRChatワールド「讐復を能える。for VRChat」/筆者撮影

どこかの学校の放送室から降り立つこのワールドでは、楽曲MVに登場した様々なシーンを順番にめぐることができます。さながら「歩くMV」。

VRChatワールド「讐復を能える。for VRChat」/筆者撮影

そしておもしろいことに、一部の場面ではお手持ちのカメラに異変が起こります。空間からあなたへの干渉が行われるユニークな体験とともに、楽曲の世界観を味わえる唯一無二のワールドです。

VRChatワールド「讐復を能える。for VRChat」/筆者撮影


ワールド紹介③ 変形する空間に響く歌 「Undestined

そして、2025年11月に公開された、最も新しいyosumiさん関連ワールドが「Undestined – yosumi (Music Experience World)」。VRChatライブやVTuberライブなどを手がけてきたMIGIRIが、yosumiさんの楽曲「Undestined」を題材に制作した“音楽体験”ワールドです。

VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影
VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影
VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影

内容はいわゆる3DMVと呼び得るものですが、yosumiさん本人の3Dモデルが眼前に現れながら、楽曲に合わせて絶えず空間が変形していく、これもまたユニークな体験が仕込まれています。

VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影
VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影

全てのシーンが「空間の変形」を介してシームレスにつながりつつ、歌唱するyosumiさんを観る、非常にリッチな音楽体験。バーチャルアーティスト関連ワールドとしてはもちろん、VRChatに存在する音楽体験ワールドの中でもトップクラスのクオリティを誇ります。


アバター向け衣装のモデルや、ライブイベント出演も

ワールドだけでなく、yosumiさんのVRChat活動はこのほかにもいくつか見られます。

一つはモデル起用。アパレルECのアンドエスティが2026年1月に発表したアバター向け3D衣服「HARE 2025 AUTUMN/WINTER COLLECTION」で、yosumiさんはメインモデルとして起用。商品のメインビジュアルを飾っています。モード系のスタイルがマジで似合っています。

「Sanrio Virtual Festiva 2026」と「D.D.D.」コラボイベント yosumiさん出演の様子/筆者撮影

そして2026年3月には、サンリオの音楽フェス「Sanrio Virtual Festiva 2026」と、VRChatクラブイベント「D.D.D.」のコラボ営業回に出演。自らの楽曲をジョッキーしていくライブパートを展開しました。

「Sanrio Virtual Festiva 2026」と「D.D.D.」コラボイベント yosumiさん出演の様子/筆者撮影
「Sanrio Virtual Festiva 2026」と「D.D.D.」コラボイベント yosumiさん出演の様子/筆者撮影

様々なクラブイベントにブッキングされるだけあり、パフォーマンスは手慣れたもの。伸びやかな歌声が絶えず響き続けるステージは、DJパフォーマンスに並ぶ盛り上がりを見せていました。当日観覧した筆者の個人的な感想になっちゃいますが、マジでいい夜でした。


2024年のサンリオVfesから縁が? 「Undestined」ワールド制作秘話

さて、yosumiさんがVRChatに向ける視線とはどのようなものなのか。「Undestined – yosumi (Music Experience World)」公開直後に実施された、VRChat内トークイベント「MIGIRI SALON vol.01」から紐解いていきましょう。

トークイベント「MIGIRI SALON vol.01」 /筆者撮影

まず、yosumiさんがVRChatを始めたのは「ものづくりがしたい」と考えたことがきっかけだったのだそう。そして、2024年にプレイを開始し、その年の「Sanrio Virtual Festival」にも参加。このイベントと当時コラボしていたVRChatクラブイベント「青色クラブ」に訪れ、オーナーの藍上アオイさんと知り合いになったそう。

そこから、藍上アオイさんの知り合いであるMIGIRIのTakaomiさんともつながり、ここから「Undestined – yosumi (Music Experience World)」の制作打診へと発展したと振り返りました。ちなみに、yosumiさんはこの時、「全面的におまかせ」という形で制作OKを出したのだとか。

VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影

一方、MIGIRIがこのワールドを制作した理由は、イベントのような「一度見たらおしまい」なものではなく、常設ワールドを作ることで、MIGIRIのわかりやすいポートフォリオを生み出すためだったとのこと。

そして、数奇な縁で知り合ったyosumiさんの楽曲から、Takaomiさんが1stアルバム「MEMENTO」収録曲から「Undestined」をピックし、ワールド制作が始まりました。

「Undestined」を選んだ決め手は「アルバム収録曲で最もアーティストの内面を最もよく表現しているから」。

そこからMIGIRIチームは、「振り向かずに前に進んでいく」という歌詞に着想を得て、出口のない部屋に閉じ込められた状態から、yosumiさんが不思議な力で空間をねじ曲げ、廊下を作り出して前進していくという心象風景をコンセプトに定めました。

なお、 「Undestined」 はyosumiさん自身が作詞を担当。壮大なサウンドに対し、フィクションではなく「自分の中で完結したもの」として内省的な歌詞を書いた一曲だったらしく、Takaomiさんの感触は当たっていたとyosumiさんは指摘していました。

そして、「自分の中からは出てこないものを見てみたい」という想いから、ワールド制作時には細かなすり合わせ以外のディレクションなどは行っていなかったといいます。yosumiさんは、実際に最高の形で叶ったと振り返っていました。

VRChatワールド「Undestined – yosumi (Music Experience World)」/筆者撮影

なお、ワールド内には上述の通り、yosumiさん自身の3Dモデルが登場します。このyosumiさんはかなり近くまで接近できますが、ユーザーに貫通されるのを防ぐために、本体の手前には衝突判定が展開されています。

さらに、移動中もこの判定は維持されているため、眼前に立ちはだかってもちゃんと押しのけられる仕様となっています。タレント/アーティストの存在を守る重要な制御です。

そして筆者が気になったのが、「自分のアバターがワールド内に存在すること」を、yosumiさん本人はどう見ているのかということ。

ご本人に尋ねてみたところ、「Undestined」の作詞テーマには「yosumi(アバター)」と「私自身」の分離、いわば「魂と体」の分離がイメージとしてあったらしく、yosumiさん自身がこのワールドを観賞する体験は、歌詞のイメージがそのまま形になったものだったのだそう。その意味でも、「Undestined」はベストな選曲と言えそうです。


「VRは現実の代替ではない」──yosumiがVRChatで生み出したいもの

かくして、MIGIRIという優れたチームとともに、圧巻のワールドをVRChatへ送り出したyosumiさんですが、この時に語った将来の目標は、VRChatを訪れるきっかけとなった「Sanrio Virtual Festival」への出演。奇しくも翌年には「Sanrio Virtual Festiva 2026」の「D.D.D.」のコラボ営業出演を果たしていたので、ライブ側への出演はそう遠くはないかもしれません。

そして、筆者はyosumiさんに「VRChatで今後どのようなモノを作り上げていきたいですか?」と聞いてみました。するとyosumiさんは「実は、未公開の企画書が3つあるんです」と切り出し、こんな回答を寄せてくれました。

「自分はシンガー/アーティストよりも、本質的にはディレクターの側面が強いと感じています。そして、自分のVRChatにおける創作活動のテーマは『VRは現実の代替ではない』です。現実の代わりになるものではなく、VRChatだからこそできることを追求していきたいですね」

未公開の企画書……はたして、いつ、どのような形で花開くでしょうか。VRChatという舞台でも記憶に残る活動を続けるyosumiさんの活動を、今後も追い続けてみたいところです。


(TEXT by 浅田カズラ


●関連リンク
・yosumi(YouTubeXlit.link
The Blue Alley(VRChat)
讐復を能える。for VRChat(VRChat)
Undestined – yosumi (Music Experience World)(VRChat)