にじさんじに所属する葛葉が、2026年10月12日にワンマンライブ「Bloody Alexandrite」を開催した(配信アーカイブ)。
葛葉がソロで開催するのは、2021年11月にZepp Hanedaで開催されたバースデイイベント「Scarlet Invitation」、2023年12月に「にじさんじフェス2023」のなかで開催されたソロイベント「Kaleidoscope」に続いて3度目となる。ROF-MAOと叶とのライブイベントなども間に挟まるが、葛葉は数年おきにソロイベントを行ない、そのたびにファンの渇きを潤すような素晴らしいアクトを生み出してきた。
今回、彼にとって最大規模であり、国内でも最大級のライブアリーナとなるKアリーナ横浜での公演は、一体どんな景色となるのか。筆者だけでなく多くのファンが期待に胸を膨らませていただろう。会場の様子をレポートしていこう。

赤く染まった開演、生バンドで駆け抜けた序盤4曲
ライブ開始直前、葛葉の執事と名乗る人物がライブの諸注意をアナウンス。終わると、静かな拍手が会場に広がっていった。
会場が暗転し、ムービーが流れ始める。勇壮なBGMとともにステージセンターの大型モニターには宝石がきらめく。赤のペンライトが会場をすべて埋めつくす中、多面体のきらめきが照明とともにあざやかに輝く。

生バンドの演奏がBGMに加わると、センターの大型モニターが左右に割れるように開き、そこには葛葉の姿が。そのまま前へと進んで入場した。

勇ましいBGMからそのまま続くように、1曲目「ギミモ」がスタート。マイクスタンドとともに歌う葛葉は、ステージから一段上で歌唱していたところから、いったん歌い終えるとマイクスタンドを持って下へと移動していく……その所作だけで漏れるような感嘆が聞こえてくる。


「さぁ!これから始まりだぁ!!」と会場に向けて気合を入れる葛葉。歓声とともに2曲目は「debauchery」だ。生バンドのギターサウンドとドラムスの圧に、彼のざらついた声がバッチリとハマる。マイクスタンドを持ち歩いて、ステージ左右から観客を煽っていく。葛葉流のパーティへの誘いを告げる楽曲であり、序盤に披露するのにピッタリなセレクトだ。

3曲目にはEveの「ファイトソング」、4曲目には「Bad Bitter」を続けて歌っていく。鋭いカッティングギターに、葛葉のボーカルも早くもエンジン全開。赤と緑の照明が会場を染める中、カメラに向かってキメポーズをする余裕も見せていた。

「葛葉です! ライブ始まりました! 全員盛り上がってるか!?」
「いきなり4曲やるなんてびっくりしたんじゃない? 休み休みやるんじゃないかって思ってただろうけど、なんと今日は休むタイミングがあまりありませーん!」
挨拶も兼ねつつ本日の流れを簡単に伝えてくれるのは、ファンにとってもありがたいだろう。3D化したペンライトを持ってコール&レスポンス。そしておそらくこの日のライブに足を運んできているであろうあの人物に向かって、「オレの爪の垢を煎じて飲め」と観客とともにコール&レスポンス。約2万人が「煎じて飲めー!」とレスポンスする流れに、葛葉も観客も思わず笑っていた。

剣持刀也、せめ4が登場 好対照なパフォーマンスに会場も揺れる
次はゲスト歌唱ということで、早々に剣持刀也を呼び込む。
剣持が「昨日体力を削りきったのに! なんで開催できるんだ!」と冗談を飛ばし、お互いがお互いの公演にゲスト出演したことをいじりつつ、前日に剣持が葛葉を褒めたことを受け、この日は葛葉が剣持を褒めたりと、2人は普段の配信では見せないような言葉を交わす。


そんな2人が披露したのは、なんとRADWIMPSの「おしゃかしゃま」。人間や動物の在り方にひっかけて倫理観を問いかける楽曲で、葛葉は吸血鬼であり人ならざるもの、剣持は虚空教の教祖として人に教えを説くもの、人とはどこか違った立ち位置をアピールする2人だからこそ、この選曲はとても似合う。
原曲でボーカルの野田洋次郎が歌ったような無感情でノッペリとした歌い方から感情を込めていく、あのテンション感を2人が意識して歌っていたところに、リスペクトが伝わってくる。

そんな剣持とのデュエットを終えると、今度はイブラヒム、不破湊、ローレン・イロアスがギターとベースを持って登場。なんだかキラキラしたイントロに会場も不思議そうにしていると、歌い始めた瞬間に「あの曲か!」と気づく。フリーBGMとして非常に有名な「シャイニングスター」だ。

葛葉はキーを少しだけ下げて歌い、イブラヒム、不破、ローレンは渡会雲雀をボーカルにしたバンド「二時だとか」でバンドを組んでおり、この日もさすがのアンサンブルを聴かせた。

「せめ4(せめよん)の名言」と題したShorts動画風のムービーが流れはじめ、お次は「さまざまな経験を4人で味わってきた」というイメージで制作されたであろう「存在しない記憶」を描いたムービーが流れるなど、おふざけし放題な状況に。

4人が揃ったことで生まれた喜びの歓声が、いつの間にかギャグやおふざけに笑う歓声へ。葛葉、いやせめ4のメンバーらしいパフォーマンスであった。



原曲メドレーからの「コントレイル」、表現の振れ幅を見せた中盤
「緊張がほぐれてきたんで頑張っていきます」
「今回アルバムもそうだけど、いままでリリースしてきた楽曲たちも歌いたいよね……ということでいまからノンストップで今まで出したオリ曲たち歌っていくんで、おまえら声出してついて来いよ!」
このようにMCすると、衣装を「Kaleidoscope」衣装へとチェンジして、メドレーへと突入していった。

「Black Crack」ではい!はい!と盛り上げながら歌っていくと、「Dummy Break」では髪を下ろしたドレッシーな「Sweet Bite」衣装へチェンジして歌っていく。甘いメロディとアッパーなロックサウンドの「甘噛み」から、ミドルテンポでメロウな「Owl Night」、4つ打ちのビート感とメタリックなギターサウンドで刻まれる「エンドゲーム」と「Wonder Wanderers」、最後の「Liberty & Freedom」ではメロディを多少無視して煽るように言葉を観客へぶつけていくようだ。

ミドルテンポからアップテンポ、柔らかなシンセサウンドから歪んだギターサウンドと、リズム感もまったく異なる曲がメドレーとして代わる代わる披露されていたが、どんなサウンドや歌詞を歌っていたとしても、クールでカッコいい葛葉像が崩れない。

彼の楽曲が一貫性を持って制作され続けてきたからこそ、加えて彼自身の声や本人性が大きく変化しなかったからこその、ブレない幹のようなものを感じられる。
メドレーを歌い終えて一呼吸をおき、白いピンスポットライトを上からもらいながら「コントレイル」を披露した。鍵盤の音色がキラリと効いたバンドアンサンブルに、それまで力強いボーカルを見せていたところから一転し、力をほどよく抜いて滑らかに歌っていく。

楽曲は以前にリリースされたアレンジにはストリングスが施されていたが、この日のライブではストリングスよりもバンドの強いアタック感が葛葉の歌声とともに、聴く者の心に強い跡を残してくれた。歌い終えた直後、「見つけてくれてありがとう」と葛葉は儚げに一言添えたのだが、筆者はあまりにも強く心を撃ち抜かれてしまった。

執事の案内で「魔界」へ、貴族衣装で歌った宴の時間
葛葉がステージを去り、いったんの休息の時間が流れる。ステージのスクリーンには赤い宝石が輝き、ドクンと鼓動を打っている。徐々に早まる鼓動、不気味に軋む音がだんだんと大きくなっていくと、黒いタキシードを着た謎の人物がステージに登場した。

曰く、葛葉ことアレクサンドル・ラグーザの執事を務める者だといい、”サーシャお坊ちゃまの勇姿”に心震わされていたようだ。すると執事から、スマートフォンを取り出してチケットにあるQRコードを読み込んでほしいとのお願いが。
約2万人の観客が一斉に手持ちのスマートフォンを取り出し、画面を進めていく。すると会場から悲鳴のような歓声がチラホラと起こる。チケットを確認すると、なんと葛葉ことラグーザ本人からの招待状が届いている。

「そう!ここは魔界!今宵皆様が真にご招待された場所。サーシャお坊ちゃまがお招きしたかった場所にございます」
なんとここから、魔界にあるアレクサンドル・ラグーザの自宅へと観客は招待されることとなった。
そうしてステージは、ステンドグラスとシャンデリアで彩られた洋館へと早変わり。そこには赤と黒を基調とした大きなアンティークチェアーに腰を据えた葛葉、ではなくアレクサンドル・ラグーザの姿が。

椅子の後方からバッと大きな羽が広がり、ラグーザの衣装はアルバムジャケットにも使われた高貴な貴族衣装。見るからに高圧的なムードを漂わせ、キタニタツヤの「悪魔の踊り方」を歌い出した。ステージには小さな炎がメラメラと燃え、赤黒が映えるこのステージにソリッドなギターサウンドはバッチリだ。

歌い終えてゆったりとステージを降りていくラグーザ。その所作も、先程までの葛葉とは少し違って、ゆったりとして優雅に見える。配信では足元、胸元、指先まで細かくカットにわけて捉えており、そのイメージ付けもバッチリ。普段とは違った丁寧な言葉遣いで観客へと言葉をかけるのを見ると、この瞬間彼が”アレクサンドル・ラグーザ”なのだと感じさせてくれる。


つづく楽曲は「ビターチョコデコレーション」。洋館の中にテーブルが置かれ、その上には生フルーツの盛り合わせ、ステーキ、ケーキ、ワインと豪華な食事が並ぶ。まるで晩餐を食すようなワンシーンで、葛葉は使用人2人とともに踊りながら歌っていく。


手元に火をともしながら歌い始めた「ロウワー」では、全体的に物憂げな声色で歌っていく。シャッフル~横ノリ気味なグルーヴにあわせて、クラシックバレエのように手を取って2人1組で踊る。

だがその手を取る相手は、招かれた我々には見えない、完全にいない相手。途中では赤いスポットライトが葛葉にあたり、ピンクのスポットライトもステージに差すが、ライトが差す場所に肝心の相手がいないのだ。
僕らが離れるなら 僕らが迷うなら
その度に何回も繋がれる様に
ここに居てくれるなら 離さずいられたら
まだ誰も知らない感覚で救われていく


そう歌い、自身の心臓と”いるはずの相手”の胸元に、火を灯す。
ラグーザが抱える愛への渇きや飢え、なによりこの相手に対する信頼が混ざった、不確かな愛情が歌われる。心に巣食う不安定さは、次の楽曲「ずうっといっしょ!」へとつづき、どこかニヒルめいた愛情表現となって歌われることになる。
まっすぐなラブソングではなく、こういった楽曲をチョイスして披露するのは、なんとも彼らしいと言えばいいだろうか。アップテンポな演奏と、貴族衣装をまとった姿の艶めかしさにうっとりさせられてしまう。

そんな魔界での宴に、ひとりの迷い人が現れる。なんと乾伸一郎がここでサプライズゲストとして登場したのだ。

カメラアピールをし続ける乾の後ろから、ガツンとどつくラグーザ。両者笑い声を上げながら、言葉を交わす。
ラグーザが「今日のライブは乾殿を呼びたかった」と言えば、乾も「拙者も昨年のライブに呼びたかった!」と告白。両者ともお互いの記念すべきライブに呼びたかったことがわかり、その絆の深さ・強さを感じさせてくれる。この瞬間、振る舞いや言葉遣いが普段と同じになり、”ラグーザ”ではなく”葛葉”の口調に戻ったことに胸が熱くなったファンもいたはずだ。


そんな2人が歌うのは、米津玄師と菅田将暉の「灰色と青」のカバーだ。伸びやかな乾の歌声、センチメンタルな感触が滲む葛葉の歌声、そのコントラストがKアリーナ横浜に滲む。歌いきった2人はステージを後にした。退場を終えて姿が見えなくなった瞬間に、「乾殿、これからも仲良くしてくださいね」と葛葉はつぶやいたのだった。

ここから魔界での宴も一気に盛り上がっていく。ホラー感ある魔界に合わせて、学園アイドルマスター「仮装狂騒曲」を歌ったかと思えば、自身の楽曲「ビバ」「Close 2 U」と歌っていく。エレクトロスウィング、スムースなR&B、エレクトロポップ&ブレイクビーツとさまざまな楽曲を歌っていく。
ラップや押韻を活かした歌詞、ブラックミュージックっぽさを活かしたサウンドなどは、どれも葛葉が配信内で好みだと話していたものばかり。加えてこのタイミングでスクリーンにはヘーベル石田、うさじ、ねごといった葛葉の元に集まった魔物たちが登場。ユニークな魔物たちといっしょに、この日の宴を楽しむ。



「Close 2 U」は日々の生活から葛葉自身の配信へとシームレスに繋がっていく楽曲ということで、ムービーの最後には葛葉のサムネイルが浮かぶ。すると先程までの貴族衣装から普段の衣装へと変わり、「スリッパでKアリーナはまずいよな?」ととぼけて、べつの衣装へと着替えてステージへと戻ってきた。

終盤からアンコール、「王道」「KING」で見せた葛葉の現在地
ここからライブも終盤へ。「わかんないです!」「モニタリング」「テキトーリョク」「ヴァンパイア」と、自身の楽曲とカバー歌唱を織り交ぜながら歌っていく。ファンが歌ってほしいと感じていたさまざまな楽曲をピンポイントで突きつつ、自身の楽曲も織り交ぜ、観客をアップテンポに楽しませる。

「モニタリング」ではカメラに超接近して自身の眼球を見せてチャームをかけ、「テキトーリョク」では観客とのコール&レスポンスで大いに盛り上がり、「ヴァンパイア」では正装でバチッとキメてみせる。「ありがとう!葛葉でした!!」と言って去る背中を見送って、すぐにアンコールの声がいたるところから起こったのは無理もない。





アンコールが始まると、「ウォーオーオー!」というコーラスが会場中に響く。観客たちもいっしょにコーラスを合唱すると、ドラムスのビートが加わり、ストリートファッションなダンサー陣とともに葛葉が現れる。「Scarlet Invitation」衣装を着た葛葉から「お前らまだまだ元気そうじゃねえか!」と煽られ、応える大歓声。そのまま「Wake up now」へと力強く歌っていった。

続く「スターライト」では、これまでのライブのワンシーンやMVのサムネイルなど葛葉が歩んできた活動の歩みが大スクリーンに流れていく。センチメンタルなメロディとともにアグレッシヴなバンドサウンド、葛葉の声も切なさを増して会場を突っ切っていく。


「皆さんのアンコールの声、すっごく聞こえてました!」
「なんでこんなにみんなのためにやるのかって、オレのことを肯定してくれるから。肯定した責任を取ってください」
「ただ盲目な肯定はダメだよ? ちゃんとオレのことを見て肯定してくれますか?(会場から大きな返事)いい子だぁ!」

アンコールを迎えて発せられる飾り気ない真っ直ぐな声は、本心からの言葉だと伝えるには十二分。「アルバムから1曲だけやってない曲がある、みんなタイトル言ってくれ!!」と会場へ求めると、「王道!」と約2万人の観客からレスポンスが返ってきた。
満を持して披露された「王道」では、冒頭から葛葉も「おい! おい! おい!」と会場を煽り、大きくリズムを取った前半ではラップを、途中で8ビートになってロックサウンドへ変化するとガナり気味にシャウトしていく。自らの歩みに自信をにじませながら未来へと邁進していこうとする、そんな力強さや葛葉の孤高さを体現したパワフルな楽曲は、そのテーマ性やサウンドも含めてまさに”葛葉の代表曲”になるであろう。



「全力出しきったぞ!」
「(会場をみながら)あぁ~……綺麗な真っ赤だぁ。改めてありがとうみんな!こんなオレをこれからもよろしく!」
ライブの終幕でこうも大きなスケール感を持った楽曲で締め、男らしく挨拶まで決められると何も言うことはないな……と思いきや、スクリーンには「Call My Name」の文字が。
会場全員で葛葉コールを送ると、なんとダブルアンコールでKanaria「KING」が披露されたのだった。
三つ首の猟犬であるケルベロスを背後に従え、赤黒の大きなアンティークチェアに腰掛けて歌うその姿。まさに葛葉が歌う「KING」のビジュアルそのものだ。

実は葛葉がこの曲を歌うのは、2021年に開催されたKuzuha Birthday Event「Scarlet Invitation」から数えて2度目になる。その時は活動をスタートして約3年半が経過したころ、葛葉が歌う「KING」に期待していたファンが多かったと思う。だがそこから5年近くが経過し、本編でもなく、アンコールでもなく、最後の最後のダブルアンコールで歌ったというところに、彼の変化がハッキリと見える。
かつて自身を有名にした楽曲を、メインディッシュのように歌うのではなく、最後の最後に送るサプライズの贈り物のように歌う。その変化は決して月日の経過だけで生まれるものではない。これまで発表してきたミニアルバムとそこに宿るメッセージとオーラ、そして葛葉自身が活動を通じてより大きな存在へと進化したからこそ、このような変化が自然と生まれたのだ。

Kアリーナ横浜を我が物にしてしまった葛葉。もしも次の宴が開催されるなら、今度はもっと大きな舞台でないといけないのではないか、この日集まった観客は誰しもそう思ったに違いない。葛葉の王の道は、どこへ向かって伸びていくのか。その歩みを見守りたい。

●セットリスト
- ギミモ
- debauchery
- ファイトソング
- Bad Bitter
- おしゃかしゃま(With 剣持刀也)
- シャイニングスター(With 不破湊、イブラヒム、ローレン・イロアス)
- Black Crack(メドレー)
- Dummy Break(メドレー)
- 甘噛み(メドレー)
- Owl Night(メドレー)
- エンドゲーム(メドレー)
- Wonder Wanderers(メドレー)
- Liberty & Freedom(メドレー)
- コントレイル
- 悪魔の踊り方
- ビターチョコデコレーション
- ロウワー
- ずうっといっしょ!
- 灰色と青(With 乾伸一郎)
- 仮装狂騒曲
- ビバ
- Close 2 U
- わかんないです!
- モニタリング
- テキトーリョク
- ヴァンパイア
- Wake up now
- スターライト
- ストレイシープ
- 王道
- KING
(TEXT by 草野虹)

