「メタバースはまだ元年。オープンな共創が大事」 METAVERSE EXPO JAPAN 2022、オープニングレポート

LINEで送る
Pocket

Meta Japanは27、28日、メタバースをテーマにしたイベント「METAVERSE EXPO JAPAN 2022」をグランドハイアット東京にて開催中だ。一部関係者と報道機関を招待し、20を超えるセッションを用意したり、エキスポコーナーで17のブースを展開している。

27日のセッションでは冒頭、Facebook Japan 代表取締役・味澤将宏氏が登壇して、開会の挨拶を行った。

プレゼンによれば、イベントの趣旨は「共創」。メタバースは決して1社でつくるものはなく、企業や団体、官公庁と連携して発展させていくものとして、その共創をうむきっかけの場として今回の場を用意したという。


ビデオメッセージの紹介では、Metaの最高技術責任者であるAndrew ‘Boz’ Bosworth氏が登場。

「テクノロジーの進化について考えてみると、日本はその未来を形作り、具現化してきました。それは私が子供の頃、初めて任天堂のゲームボーイや日本でしか手に入れることができなかったMDプレーヤーをお小遣いを貯めて手にした時から明白でした。モバイルインターネットの時代も、VRが急進したここ数年も同様です。弊社のQuest 2ヘッドセットが世界的なヒットとなった時、日本のゲーム開発者やデジタルクリエイターの方々が、世界に先駆けてその可能性を広げてくださいました」と、日本の開発者に感謝を伝える。

そして「また日本でVRがエンターテインメント以外の領域でも広く活用されていることにインスピレーションを受けています。例えば、N高等学校・S高等学校では、4000人以上の学生がVRやQuest 2ヘッドセットを使って学んでいます。常に未来を切り拓いてきた日本は、私たちが次世代のインターネットと考えるメタバースのアーリーアダプターになると考えています」と市場への期待を語った。


続けて、デジタル大臣の牧島かれんさんのビデオメッセージも紹介。

「これから想定されるユースケースをしっかりと把握し、整備をしていきます。例えば、総務省では先日、メタバースなど、様々なユースケースを念頭に置きつつ、情報通信行政にかかる課題を整理することを目的として、Web3時代に向けたメタバースなどの利活用に関する研究会の設置に入りました。デジタル庁としても当然、連携を率いています。さらに今後、複数のメタバースサービス間の相互運用性が高まるということでメタバースの可能性が広がるきっかけになるでしょう。その実現のためには、メタバース周辺に存在するデジタル資産などの仕組みについて全体的な課題を把握する必要もありますし、その上で具体的な検討を進めることが必要とも考えています」と、政府の具体的な取り組みを語った。

 
後半は、味澤氏がMetaが考えるメタバースと現状の取り組みを解説した。

Metaのミッションは、「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」。2017年の旧Facebook時代に開催した「コミュニティサミット」にて発表したものだ。

「メタバースは、物理的な距離を超えて、属性を超えて人と人とが新たな方法でつながっていき、新しいコミュニティーに参加できる。そういった進化であるとわれわれは捉えている。メタバースによってソーシャルの在り方、人と人とのつながりが進化していく。そのためのテクノロジーだと我々は考えている」(味澤氏)

メタバースの特徴は、「没入感」(Immersiveness)、「実際にその場にいるかのような感覚」(Presence)、「相互運用性」 (Interoperability)の3点。

昨年10月の「Connect」で披露した新しいソーシャル体験の動画も紹介。その中でも、仕事、教育、コマースが活発化していくと考えている。

「あるリサーチによると今後の10年間メタバースが生み出す経済効果は、GDPの約2.8%程度と言われている。約3兆ドルの新しい経済が生まれてくる」(味澤氏)

「今まで培ってきた実績をもとに、ソフトウェア、ハードウェアを提供していく。また基幹となるテクノロジーを提供してくことがわれわれのはたす役割」(味澤氏)

VRの領域ではハードとソフトの両方で投資を続けている。

ARはInstagramやFacebook上では日常的に使われている。ARを使ったショッピング体験もテストしている。

MRはメタバースの実現において重要なステップとなると捉えている。開発者向けのSDK「Presence Platform」をリリースしており、これを使うことでバーチャルの世界に現実のオブジェクトを実際に置いたり、手のジェスチャーや声で操作を可能にする。

「今後メタバースが発展していくにあたってクリエイターが重要と考えている。クリエイターがメタバースの中であらゆるものをつくっていくことへの支援、そしてクリエイターがその中で収益を作っていくエコシステムをサポートするファンドも行なっている」(味澤氏)

「メタバースが発展していくために、4つの原則を発表した。ひとつは経済的機会。メタバースにおいても1社が独占するのではなくて、オープンなデジタル経済をつくっていく。2つ目がプライバシー。利用者のプライバシーを保護し、どのようにデータが使われているか透明性を持ってユーザーに伝える。(中略)3つ目が安心安全に使っていただく。これはわれわれの『Horizon Worlds』でもセーフゾーンを設けたりとか、アバター同士の距離を設定できるという機能を実装している。最後に公平性と包括性。われわれ基幹となるテクノロジーを提供してまいりますけど、そういったものが包括的に、またオープンにみなさんがアクセスできるようにしていきたい」(味澤氏)

責任あるメタバースを作っていくために、XRプログラム・研究基金を設立した。日本の研究基幹もふくめてサポートしている。

味澤氏は、最後に「メタバースは『メタバース元年』と呼ばれていて、始まったばかりです。やはりオープンに色々なプレイヤー、これは産官学共に集まって、みんなで作っていくのが非常に大事なことだと思っています。今回のMETAVERSE EXPOがそのきっかけになればいいなと考えています」とまとめて、挨拶を締めくくった。

 
(TEXT by Minoru Hirota

 
 
●関連リンク
METAVERSE EXPO JAPAN 2022(公式サイト)
Meta